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End Of Edo ~幕末~  作者: 吉藻
第一章 江戸時代
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  異国船打払令

 文政7年(1824年)に水戸藩の大津浜にイギリス人水兵が武装したまま上陸するという事件が起きた。

 この数年前から沖合いに異国船が良く見られたとされ、密貿易もされていたという話もある。


 ここで当時のイギリスの状況をおさらいしておく。

 18世紀後半から産業革命により生産力が飛躍的に上昇したイギリスは海外貿易に力を入れていく。

 同時期にアメリカが独立して新大陸での権益が無くなった事からアジアでの貿易を拡大していく。

 1801年にアイルランドを併合して連合王国を成立。1807年に蒸気船が発明され1819年には大西洋を従来の半分の日数で往復する。蒸気船の進化により人と物の移動が活発になり世界が狭くなっていく。

 17世紀に極東の日本が遠すぎることで貿易から撤退したイギリスが再び日本に興味を持って接触して来ることになるのだ。


 水戸藩大津浜に上陸した船員らは水戸藩士により捕らえられた。

 水戸藩では過激な藩士が船員を殺すように声を上げる。

 イギリスが世界に植民地を広げていることを知識人は知っており、日本征服の尖兵だという意見があがった。フェートン号事件の記憶も新しくイギリスに対する不信感も大きい。

 幕府は穏便にすませるために補給品を無料で贈呈して解放した。

 この対応に水戸藩は元より全国の武士の間で不満が蓄積する。




 大津浜事件と同年にトカラ列島の宝島がイギリス船により襲われるという事件が起きた。

 先ほど説明したようにイギリスは日本近海に進出していた。

 そして補給を求めて日本へ上陸するということがあったのだ。幕府の役人と交渉するのならばまだよい。

 宝島の場合は言葉が通じなかったこともあり略奪に走った。紛れもない海賊行為である。


 そんなイギリス海賊に攻め込まれた宝島には薩摩の兵が駐屯していた。

 彼らは少ない人数で防衛線を張り果敢に戦った。島の住民を守り銃撃戦となった。

 そしてイギリス海賊の首領を討ち果たしのである。

 海賊は慌てて逃げて行った。双方に少なくない犠牲者を残して。



 この事件は英雄譚として賞賛されることとなる。

 フェートン号事件や大津浜事件で煮え湯を飲まされていた幕府や武士らの溜飲を下げたのだ。

 イギリス側とすると単なる海賊なので抗議もするはずはない。

 異国船の往来に頭を悩ませていた幕府はこの事件に味をしめる。

 そして日本近海を通過する異国船を全て海賊船か不審船として扱い威嚇砲撃をして追い払うという『異国船打払令いこくせんうちはらいれい』を発布することにした。


 オランダ以外の西洋船が日本近海を航行していれば問答無用で砲撃して追い返すという法律だ。

 現在の常識からすると野蛮だと思うかもしれない。

 しかし、フェートン号事件、大津浜事件、宝島事件などにより日本近海を航行する西洋の船は密輸か海賊のどちらかの不審船であるという考えが幕府あった。

 通商を許していない日本に西洋船が無闇に近づくはずがないという考えである。


 現在でも国籍不明の不審船が領海内に入ると攻撃して追い返して良いということになっている。

 この時代においてオランダ以外の西洋船は全てが国籍不明の不審船ということになるのだ。

 そういう考えで言えば『異国船打払令』は利に適っていて正当な法案である。

 しかし日本と国交を持っていない西洋諸国において問答無用で砲撃されるというのはたまったものではない。

 国交がないから不審船として砲撃される。そうであれば国交を持てばよい。

 そういう思考になり日本に対して開国を求めていくということになるのだ。


 『異国船打払令』はその目的とは逆に諸外国が日本に開国を迫るきっかけを与えることになる。


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