1日目①
『誕生おめでとうございます。』
気がつくと僕の耳にはそのような言葉が聞こえていた。
ゆっくりとまぶたを開け、あたりを見回す。
誰もいない。この真っ白な部屋で僕一人だ。
ということは、
この言葉は僕に向けられたものなのだろう。
『まあ、ひとまずここでは、
おめでとうございますっと言っておきましょう。』
さらに、誰かの言葉は続いた。
『ここは、あなたの母親の胎内の世界。
あなたは、この世に生命として誕生したのです。喜ばしいことですよね?』
当然投げかけられた言葉に僕は頷いた。
『そうなのです。喜ばしいことのはずが
人は皆その気持ちを忘れていってしまうのです。悲しいことです。
...........それはさて置き!
あなたは後7日後に母親のお腹の中から
産まれる予定です。
それまでにここで世の中に産まれる前に
幾つもの経験及び選択をして頂きます。』
「経験?選択?」
『はい。そうです。心配されなくても大丈夫です。
この7日間しっかりと過ごして
皆誰しも、世の中にこの胎内から巣立っていくのです。あなたも頑張って下さいね。』
「わかりました。
まず僕は何をすればいいんですか。」
『後ろを振り返って下さい。』
後ろを振り返ると先程まではなかったはずの
扉があった。
ここを開けろというかのように
堂々とたたずんでいる。
ゆっくりと腰を上げ扉へと向かった。
扉の前に立つと
また、どこから来てるかわからない声が
頭の中で響いた。
『あなたに幸運を』