第8話「ノースベルグ2」
誤字修正しました
〈ユキカゲ視点〉
拙者、ユキカゲでゴザル!先程の修行発言の後、アマトウ殿は再びギルドに入って行ったでゴザル。
どうやら拙者の修行に使えそうなクエストを持ってくるとの事、いやはやどんな採取クエストで御座ろう。もしくは配達クエストで御座ろうか?
しかし、拙者のスピードと探知スキルならお茶の子再再、アマトウ殿に目にものーーー
「ユキカゲ、ゴブリン狩りに行くぞ」
ーーーー目にもの見せられたでゴザル。やはりアマトウ殿は血も涙もない悪魔のような御仁でゴザルよ。見た目も相俟って差し詰め赤い悪魔のような出で立ちでゴザル。
ーーーーーーーーーーーーー
眼前に広がるは草花の海原
背負いしは遥か澄んだ蒼の楽園
拙者は、今正に天へ浮かぶ朧月。故にだれも触れぬ。誰にも止められぬ。
ーーーそれ故に、この一刃は防ぐことができない。
「秘技、【兜割り】」
キィン
「うわーん!アマトウ殿~また【パリィ】されたでゴザル~ 」
「ばっきゃろう!お前が【パリィ】した後に攻撃だ!!」
なんでも今の拙者には守る力が無いので【パリィ】をマスターしろとのことでゴザル。最初は無理かと思ったでゴザルが、幾度もゴブリンに殴られ、少しずつタイミングが解ってきたでゴザル。
きっとアマトウ殿が「ノルマ達成できなかったら罰ゲーム」、と脅したのが精神的に効いたのかもでゴザル。それにあのときのアマトウ殿の手の動きは、何やら背筋に冷えるものを感じたでゴザルよ。
「ギギ!ギッ!ギィ!ゲグ!」
ゴブリンは相手を葬らんと棍棒を振り回す。しかしユキカゲは、その一振り一振りを確実に【パリィ】していく。
「ふっ、ゴブリンよ。お主が居たからこそ、拙者は強くなれたでゴザル」
ここまでのユキカゲとの攻防により、もはやゴブリンのHPゲージは尽きる寸前にある。死が近いことを悟ったゴブリンは最後の特攻を仕掛ける。
「ギギィー!!(死なばもろともよ!!)」
間違いなくその一撃は、彼のゴブリン生の中でも渾身の一撃であろう。この辺りの冒険者なら、喰らえば先ず生き残れまい。しかし、ユキカゲはその一撃を弾いた。
「ゲガッ!?(何!?)」
ドッ
呆気に捕られた次の瞬間、身体に衝撃が加わった。ゴブリンが視線を下へ向けると、己の体にダガーが刺さっていた。
ーー成る程、負けたのか、俺は。
ドサッ
ゴブリンは言葉を発することもなく、地に伏せ、光となった。
「ゴブリンよ、お主もまた強敵だったでゴザル」
ユキカゲは静かに刃を納めた。
ーーーーーーーーーーーーー
〈アマトウ視点〉
「強敵だったでゴザルーーじゃ、ねぇ!」
スパァン!
辺りに気持ちのいい音が響いた。
「い、痛いでゴザル!何が気に食わないでゴザルか?普通そこは、ゴブリン初討伐おめでとうでゴザろう!」
確かにその通りだ。脅しをかけたとは言え、予想を上回るスピードでユキカゲは【パリィ】のコツを掴んだ。しかし、ーー
「一体倒すのに時間が掛かりすぎだ!それに武器を見ろ、あと少しで【破損】になってるところだぞ」
武器を見た途端、急に青ざめるユキカゲ。
「せっ、拙者の【ショートダガー】が~」
どうやらお気に入りの武器らしい。なんでもイシュテスで唯一、片刃の【ショートダガー】として売られていたレア物らしい。
何でもまだ東洋系の武器はレシピが見つかっていないらしく、何らかのクエストで手に入る可能性が高い。それで鍛冶士は血眼で探しているとか。
「予備は無いのか?今日中に後4匹倒さないと罰ゲームだぞ」
ワキワキ
「うひぁ!だ、だだだ大丈夫でゴザル!一応、予備としてクリスナイフを持ってるでゴザルよ!ししししからば、次のゴブリンを倒してくるでゴザルー!」
物凄い速度で走り去るユキカゲ。少し脅し過ぎたでゴザろうか。ーーうわ、語尾が移った。
とりあえず追いかけるか。危なくなったらサポートしないと行けねぇしな。
ーーーーーーーーーーーーー
「では素材の検査をするのでお待ち下さい」
ユキカゲがゴブリン討伐を終えたのでギルドに報告しているところだ。検査とは討伐証明の素材の中に、同一個体からドロップした素材が混じっていないか、討伐したものと一致するかを判別することらしい。どうやら、討伐した情報はギルドカードに記載されるらしく、それと照らし合わせるとか。
確認が終わり、報酬が支払われる。因みに俺もユキカゲとは別で、ゴブリンの討伐クエストを受けていた。そして達成したクエストのランクにより、ギルドカードにポイントがその分加算される。
「わーい!とうとうEランクでゴザル~。ほらほら~アマトウ殿、Eランクでゴザルよ!」
「そ、そうか。よかったなユキカゲ」
俺は最初からDだったが。もしかするとあの水晶には、その人のレベルによってランクを選定する機能があるのかもしれない。
・・・俺がD ってのは黙っとこう。ユキカゲが知ったら凹むかも知れないからな。
次のクエストを探すため掲示板へ向かい、貼り出されている羊皮紙に目を通す。しかし近場の討伐クエストは殆ど無い。
「何々、【ソードホッパー】と【レッドゴブリン】か。あー、一番近いのはレッドゴブリンだしこいつで良いか」
早速レッドゴブリンの事をユキカゲに伝える。
「レッドゴブリンでゴザルか。拙者の知らないモンスターでゴザルな」
ユキカゲインフォメーションにも載っていないモンスターだそうだ。仕方ない、受付嬢に聞いてみるか。
受付嬢に赤ゴブのクエストを持っていくと、驚いた様子で此方を見る。
「レッドゴブリンで宜しいんですか?」
ゴブリンの派生種なら十分対応できるだろう。恐らくのモーションも共通だろうし 。
「問題無いでゴザル!」
うわ、先に言われた。ユキカゲめゴブリン討伐で調子に乗ってるな。
「レッドゴブリンの特徴を教えて貰えるかな?」
「わかりました。レッドゴブリンは名前通り赤いので一目で分かります。最大の特徴は頭の角で、少し湾曲しているのがポイントです。以上が主な特徴となります。詳細も説明しましょうか?」
成る程、分かりやすい特徴で助かったな。これなら直ぐに見つかりそうだ。
「いや、外見的特徴さえ分かればいいよ」
さて、今から討伐しに行くとなると帰りが遅くなるな・・・。とりあえず、アイテムの補充が済み次第出発するか。
ユキカゲに3時半頃に門前集合と伝え、それまでは休憩だ。
ーーーーーーーーーーーーー
〈ユキカゲ視点〉
どうやら3時半までは自由行動らしいでゴザル。流石はアマトウ殿、拙者のスイーツタイムを尊重してくれたでゴザルな。しからばその心遣い、有り難くエンジョイさせてもらうでゴザル。
「うわー店主殿、これは何でゴザろう?」
拙者の興味を惹くのは、まるで雪のように白くふわふわした謎のお菓子。綿菓子等とも違う、そのもこもこしたお菓子はつつくと少し、弾力があるでゴザル。
「そいつはツェネペッタって菓子だ。どうだ、1つ買ってみないか?」
「もちろん買うでゴザル!」
ツェネペッタを1つ買い、歩きながら食べる。
「これは美味いでゴザルな~。これ程美味いのならば後ーー」
言葉が詰まる。【危機察知】が発動したからだ。このスキルは敵意を持った者が周りに居ることを知らせるスキル。しかも相手との距離は1m もない、つまりこの距離まで敵意はなかったはず。一体ーーー
「ユキカゲ、久し振りだねー」
ーートーカ殿だ、では敵意はトーカ殿が?何故、わからないでゴザル。
「と、トーカ殿。どうして怒ってるのでゴザろう?」
「いやー、ユキカゲが良い匂いを漂わせるからね?ついつい」
「あぁそれはこのお菓子のーー「違うよ」ーーうぇ?」
な、何だか嫌な予感がするでゴザル。
「逃げるでゴザル!」
ざざっ
「逃げちゃダメですよ、ユキカゲ」
残念!回り込まれてしまった!
「さて、どうしてユキカゲの体から、先輩の匂いがするのでしょう?どうしてかなー」
うわーん!助けてアマトウ殿!濡れ衣で殺されそうでゴザル!
「はぁはぁ、さぁその服をぬぎぬぎしましょうか~♪」
アマトウ殿ー!助けてー!鼻息の荒い、目を血走らせた娘に辱しめられるでゴザルー!
「ふひひ、ユキカゲったら抵抗しちゃって~。獣人の力に抗おうなんて無駄だよ?ほらほら」
「うわーん!やめてー!これ拙者の一張羅でゴザルー!」
「さぁ、おべべをぬぎぬg ーー「スパァン!」ーーあいたっ!」
「なにやってんだ」
きゅ、救世主でゴザル。拙者の窮地を救って下さった、アマトウ殿は正に救世主。拙者はアマトウ殿に飛びつきーー
「うぐ、ひぐっ、こ、怖かったでゴザル、ずびっ、皆の、ぇぐ、前で剥かれて、ずるっ、は、辱しめを!、ぐずっ、」
「うわ!ユキカゲ、マジ泣きじゃねぇか!おぉよしよし、怖くないぞー。ユキカゲは強い子だからなー、ほら、ユキカゲは寡黙で硬派な忍者だぞー。だから、元気出してなーユキカゲー、よーしよし」
うわーい、何だかおばあちゃんを思い出すでゴザル。このまま寝てしまいたいでゴザルよ。トーカ殿の殺気さえなければでゴザルが。
ーーーーーーーーーーーーー
〈アマトウ視点〉
「で?なんでトーカはユキカゲを襲ってたんだ?」
「い、いぎなりっ、ずび、良い匂いだって、んぐ」
うわ、やっぱり匂い関係か。あれ、俺にだけじゃないんだな。
「ち、違います!久し振りの先輩の匂いに興奮しただけです!」
ええぃ、この変態は自覚がないのか。しかし、いまは説教をしている時間はない。さっさと赤ゴブに向かわなければ。
あ、そうだ。トーカも赤ゴブ退治に誘おう。魔法使いだし、火力も十分だろう。
「勿論です!さあ行きましょう先輩!たっぷり汗を流しましょうね!」
「トーカ殿は怖いでゴザル・・・」
ユキカゲには悪いが我慢してもらおう
「さて、赤ゴブ退治に行きますか。」
次回、赤VS 赤