第6話「いざ北へ」
ここはイシュテスの職人区。
生産系のプレイヤーやNPCが、店や工房を構える場所だ。 因みにエレナの工房もここら辺に在るらしい。露店の方は宣伝みたいなもので、工房は弟子のプレイヤーに任せているようだ。
そんな職人区の中で一際目立つ店を見つけた。その名も『エレナの夢工房』。
うん、エレナの店だろう。どうやらエレナは厨二病ではなく、単にネーミングセンスの問題らしい。
さて、偶然にもエレナの店に来てしまったわけだ。エレナの邪魔も悪いし、御弟子さんにでも相手をしてもらおう。
「こんにちは、エレナに鎧を頼んでるんだけど後どれくらいで終わりそう?」
「こんにちわ!さっき見たときは大体完成してました!あと少しだと思います!」
うおお、この子めっちゃ元気だな。良いことだ。直ぐに完成するみたいだし、その間に武器でも選ぼう。ここは御弟子さんのお薦めを聞いとくか。
「これは僕が作った槍、【神穿チ星ヲ抉ル者】です。あ、命名は師匠がしました。最大の特徴は内蔵した火の魔力結晶が先端部を射出ーーまあ要するにパイルバンカーです」
お、良いじゃん。重装備にパイルバンカーってのもロマンだよな。
「但し一回の使用で耐久値がレッドゾーンになります」
「ほぼ使い捨てかよ!」
「ロマンに犠牲はつきものです!それにNPCが卸してくれる素材だとこれが限界なんですよ。普通に槍として使う分には何ら問題はありません、どうでしょう?」
ぐぐ、どうする?あの槍は確かに魅力的だが、今の話を聞くに使われている素材は多分現状最高の物だろう。1500Gしか出せないぞ。
「値段を言えば1万5千ですがーーー条件付きで無料でお譲りします」
無料なら一応話だけでも聞いてみるかな。
「まあ簡単に説明しますと、使ってみた感想とか強化に使えそうな素材等の提供。これくらいですね」
「安い条件だが良いのか?」
「どうせ買う人も居ませんし」
ま、貰えるなら貰っとくか。
しばらくして、御弟子さんとロマン武器について話し込んでいるとエレナが工房から出てきた。どうやら完成したらしい。
「じゃーん!これがゴブリンキングの素材を使用したその名も【赫炎ノ王鎧】よ!」
ま、また厨二臭いネーミングを…。でもここまで頑張ってくれたエレナに言うのは可哀想だし、黙っておこう。てか赫炎ってまさか火属性シリーズ物なのか?
とりあえず武器と鎧を確認しよう。
【赫炎ノ王鎧】:DEF + 47、装備制限全身鎧、火属性耐性
【神穿チ星ヲ抉ル者】:ATK + 26、追加スキル【ロ ストパイル】
んーパイルランサーのATK が値段の割に低すぎるな…。ATK + 20のアイアンブレイドが15 本買えるぞ、まあ特殊武器だし素材の値段も考えれば妥当なのか。
「良い出来だ、ありがとうエレナ」
「お代だけど、北のモンスターの素材で良いわよ。いつでも良いわ 」
「アマトウさん、是非北の素材は持って来て下さいね」
「任せといてくれ」
俺は店を後にした。
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さてといろいろ準備したし、そろそろ行くか。
どこに行くか。勿論ノエルのあれだ、流石にこれを持っとくのは気分が落ち着かない。さっさと返しに行こう。
とりあえずマップを開いて北へ歩く。
道中ゴブリンに遭遇したが【ガード】の後【シールドバッシュ】とランスで突くコンボで楽に狩れた。やっぱ武器は大事だ、でも先にランスで攻撃すると棍棒で弾かれた。【ガード】や 【シールドバッシュ】で怯んだ隙に攻撃しないと駄目なようだ。
「てか槍重いわ、盾だけでいい気がしてきた」
でも御弟子さんとの約束だからな、使わないとな。
ひたすら歩くが街は一向に見えない、日も暮れ辺りも薄暗くなってきたのでランタンをつける。
そういえば夜にトロールと出くわして潰されたな。思い出したら背筋に寒気が、ありゃトラウマもんだよ。
ま、待てよ。よく考えたら野宿できなくね?安全エリアとか無いのだろうか、どうしよう?とりあえず考えながら歩くか。
30分程歩くと前方に明かりを発見。近づいてみると誰かが焚き火をして休んでいるようだ。一緒にいれてもらえないか頼んでみるか。
「いいでゴザルよ」
「ありがとう、いやー助かったよ。このまま一人野宿ならどうしようかと」
それにしてもゴザルって。ロールプレイか、いやー懐かしいな。俺も昔「俺が通った後は皆潰れたトマトみたいなっちまう。だから人はーー「アマトウ殿っ!」っていまいいとこなのに・・・
「なんだ?」
「拙者は所謂、斥候職でゴザル。より早くクリアするためには情報、地形や街、モンスターの種類など様々な情報が必要なのでゴザルよ。ここは一つご協力を」
「いいぞ、プレイヤー同志協力しねぇとな。まあ教えられるような情報は北にノースベルグって街があるくらいだけど、こんなんで大丈夫か?」
「おぉ十分でゴザル。これならそのノースベルグを拠点にして情報が集められるでゴザルな」
どうやらゴザルさんもノースベルグに興味を持ったらしい。旅は道連れ、誘ってみるのも一興かな。
「え、一緒にでゴザルか?拙者、弱いでゴザル。それでも大丈夫でゴザルか?」
「男に二言はない!大丈夫だ、問題ない」
ゴザル がなかまになった。
「拙者ゴザルでは御座らん。名をユキカゲと申すでゴザル」
ゴザルさんはユキカゲと言うらしい。なるほど忍者っぽい名前だな。しかし眠いな、とりあえず今日は寝よう。
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翌朝起きるとユキカゲはまだ寝ていた。
すぴー ぷすー すぴー ぷすー
「すげーマスク越しに花提灯できてら。しかし、この場合マスクが凄いのかユキカゲが凄いのか」
取り敢えず起こすか。
「おいユキカゲ起きろ!」
ユサユサ
起きねぇ。頬っぺた叩いても起きねぇ。仕方がないから乳首を摘まむことにした、あまりの痛みに飛び起きることだろう。
ぎゅっ グリッ
「っぎあいがぎぁあぁっ!!」
めちゃくちゃ痛そうだ。流石に気まずいのでフォローしておこう。
「だ、大丈夫かユキカゲ!!」
「い、いきなり胸が痛くなったでゴザルよ!」
俺だと気づいてない、これなら誤魔化しきれる!
「そ、そうかそいつは災難だったな。寝過ぎて胸がつったんじゃないか?」
「そ、そうなのでゴザルか?拙者初めて胸がつったでゴザルよ」
ふ、ユキカゲがアホの子で助かったぜ。なんだかんだで出発の準備を終えて街道を歩きだす。
途中何度もゴブリンに遭遇し、俺が片付ける一方でユキカゲは、ーー
「喰らうでゴザル!秘技【兜割り】!」
キィン!
「うわーん!また【パリィ】されたでゴザル~!」
「拙者の逃げ足には着いてこれまい!でゴザル」
ーー全く役に立たなかった。
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さてノースベルグに着いたがもう夜だ。途中で野生の馬に無理矢理しがみついて来たのだがそれでも夜になってしまった。それにしてもユキカゲの奴やけに馬慣れしてたな。
「まて身分を証明できるものを出せ」
おぉお約束の衛兵さんだ。お仕事お疲れ様です。さて、早速ノエルのペンダントを使うか。
「この方の知り合い…では駄目ですかね?」
ジャラッと懐から取り出し衛兵へ渡す。
「こ、これは!し、失礼しました!どうぞ中へ!!」
そんなにテンパるってことは、ノエルはもしかすると騎士団長かもしれんな。ついでに宿屋の場所も聞いておく。
「流石アマトウ殿、NPCにも知られているでゴザル
な」
「まぁな、おっとここだ」
門から割りと近い位置にある宿屋【不死鳥の止まり木】へ足を踏み入れる。中に入れば年季の籠った内観ながら、新築のような清潔さを醸し出す空間が広がっていた。成る程いい宿屋だ、軽く見ただけで掃除が行き届いているとすぐにわかる。
「二人部屋で一応3日泊まります」
俺は何やら煩いユキカゲを引き摺り、部屋に入った。今日は疲れた、早く寝よう。
「あー股がヒリヒリする…」
さぁ明日はノエルにペンダントを返しに行こう
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「せ、先輩が帰って来ない…」
目を血走らせた彼女は寝室から北を眺めていた
だらだらとした話は飽きるかと思い、脈絡の無い急展開な話に急遽変更したのですが、やはり急造の話が面白い訳がなく。ご指摘をいただきました。
こちらが当初考えていた話になります。閑話に出てくるプレイヤーはこれからもちょくちょく出して行きたいと思っています。
これからも何かアドバイス等ありましたら是非お願い申し上げます。