第4話『VS ゴブリンキング2』
さて、どう攻める。あのデカイ図体に【シールドバッシュ】は効くだろうか? いや、やらないよりましだろう、それに今回は1人じゃないんだ。あのハルバードを持った女性、ノエルがいるしダメージには期待ができる。
ならば戦法はーーー
「アマトウ、奴の攻撃を防いで欲しい。その隙に私が奴を攻撃する」
ーーどうやら考えていることは同じのようだ。まぁ普通に考えりゃそうだ、だって今動ける盾は俺しか居ないからな。
「あぁ任せろ。一撃足りとて逃さず防いでみせるさ」
「っ! 来るぞ!」
奴が土煙を撒き散らしながら此方へ向かってくる。
デカイ図体の割に足が早い、瞬く間に距離を詰められる。俺達を間合いに入れると、奴は剣を振り上げた。
「【ガード】!」
モーションはゴブリンと共通みたいだ。これなら防ぐことは容易いな、ただしポーションが持てばの話だが。
剣を弾かれ隙ができた奴をノエルが追撃する。
「【横凪ぎ】!」
ヘッドスピードの乗った一撃をデカゴブリンの右足へ放つ。
しかしーー
「っ硬い!?」
僅かに切り裂くことはできたが、ダメージは確認出来ない。いや、奴のHPは僅かに減っている。
……不味いな。時間を掛ければデカゴブリンは倒せる、だが時間を掛ければ掛ける程に不確定要素は大きくなる。例えばそう、ゴブリンが集まるとかな。
「くっ! 【ガード】! ノエル、頼みがある!」
「せいっ! 何だアマトウ!」
「このままだとゴブリンが群がってくる可能性が高い! っ【ガード】! 他の騎士達に周りのゴブリンを任せたいんだが!」
「【横凪ぎ】! わかった、任せてくれ!」
直ぐ様、騎士達へ指示を出す。その中には倒れていた騎士も居た、どうやら治療が間に合ったようだ。
「ありがとう。これでっ【ガード】! デカゴブリンに集中できる」
「はあっ! ーーアマトウ、あれはデカゴブリンではなくゴブリンキングだ」
「そ、そうか」
デカゴブリンはゴブリンキングと言う名前らしい。
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あれから、恐らく40分近く経っただろう。ようやく、ゴブリンキングのHPを6割程削ることに成功。ただのゲームならこのまま問題なく倒せるだろう、だが思い出して欲しい。これはVRMMOなのだーー
「ぜぇっ……はぁ……はぁ……うぐ!=……ぜはぁ、はぁ……」
40分も闘い続けりゃな、そりゃバテるわ。てか限界だ、勝てる気がしない。現在は距離を取りスタミナの回復を待っている。
見ればノエルもかなり疲れている様子だ。このままだとヤバイな、最悪全滅コースまっしぐらだ。俺は死に戻りがあるがこいつらはどうなる? 恐らくそのまま死ぬだろう、いくらNPCだからって死なれるのは気分が悪い。何か手はないだろうか、何か打開策はーー
あった、でも成功するか? 一か八かだぞ、失敗できないんだ。どうする、やるか? いや、やるしかない。
「ノエル! 溜め技の類いを持ってないか!?」
「あるが、隙だらけになるぞ。そうそう扱えん、何をするつもりだ」
「簡単さ俺が奴の体勢を崩し、そこをノエルの溜め技で首を狙う」
そうだ、切れば血が出るし、怪我もすれば、グロい死に方だってある。このゲームならば、首を殺れば即死かどうかは分からんが大ダメージを見込めるはずだ。
「成る程。だがどうやって体勢を崩す?お前の【シールドバッシュ】では厳しいだろう」
「実は使ってないスキルがあるのさ、そいつを使う」
「ほう、何故今まで使わなかった?」
「別段強い技じゃないし、しかもMPを使う技だからな。使いどころがなかったんだよ……。それじゃ、次にあいつが突っ込んで来たら作戦開始だ」
ゴブリンキングはこちらの動きを感じ取ったのか、既に剣を構え突き進んでくる。
「行くぞ!)【ガード】ッ!」
ダメージは軽微だがその衝撃で足が痺れる。だが動きを止めている場合じゃない。
【ステップ】を発動する。狙いは一つ、ノエルの攻撃を受け最も損傷の酷い部位。生物である以上弱点であろう関節部分、左膝をーーー
「喰らえっ! 我が最強奥義を! 必殺【バッシュラッシュ】っ!」
ひたすら殴りまくる。
【バッシュラッシュ】は文字通り殴りまくる技だ。一発の威力は【シールドバッシュ】よりも高く、また攻撃の感覚も短いため実質的に上位技だろう。ただデメリットもある、俺の所有するスキルの中で唯一MPを消費する、しかも一発毎に。因みに正面からの攻撃をある程度防いでくれる。
「喰らえオラッ! 俺はMPが尽きるまで殴るのを止めねぇぞ!!」
唯ひたすら膝を殴り続ける、トゲでな。
でもヤバイ。HPが風前の灯火だ、頼むーー
「頼む倒れてくれっ! 今ここでやられる訳にはいかねぇんだよ!」
その時、ゴブリンキングの巨体が前に傾いた。
ここがチャンスだ、逃がすまいと俺は跳躍しーーー
「【ジャンプ】ッ! 墜ちやがれ、【シールドバッシュ】ッ!」
ゴブリンキングの上体へ追撃の【シールドバッシュ】を放った。
そしてーーー
「アマトウ、良い仕事だ」
全身より赤い燐光を放ちハルバードを構え、ノエルはゴブリンキングの頭へ跳躍した。そして、空中でハルバードを上段へ振り上げーー
「実戦で限界まで溜めたのは初めてだ 、心して受けるが良いゴブリンの王よ」
その首、うなじ目掛けて降り下ろした。
「【首断ち】」
限界まで力を圧縮された一撃は圧倒的だった。故にそれを阻むものは存在しない、金属の繊維と見紛う程強靭な筋肉も、ミスリル銀が含まれているのではないかと想わせる程、強固堅牢な骼もその一振りを前にすれば紙も同然であった。
圧倒的、その一言に尽きるだろう。
全てが終われば、後に残ったのは2つになった骸。やがてそれは光に包まれ散って行った。
「ありがとう、アマト」
「礼はいらんよ、助けたいから助けたんだしな。それに俺はアマトじゃないぞ、アマトウだ」
「何、愛称みたいなものと考えてくれ。それに互いに死地を乗り越えたのだ、いわば戦友ではないか。……そ、その、何だ……駄目、か?」
成る程、戦友か。もしかしてノエルは戦友が欲しかったのか? 確かに他の騎士は部下っぽいし、きっと対等に話せる人が欲しいんだろうな。わかるわかる、俺もFPSやってたときは互いに認め会える戦友が欲しかったからな。
「全然大丈夫だ、戦友だしな」
「そ、そうか! そうだな、何せ戦友だからな! ……うむ、良い響きじゃないか戦友」
嬉しそうだなノエル。そんなに戦友が欲しかったのか。
「そうだアマト、此度の礼がしたい。私の家に是非とも来てくれないか?」
「っちょ、ひーー「ミリア、黙っていろ」ーーはい……」
礼か。本音を言えば礼には興味がある。だが俺の中の japanese soul が其れを許さん。
「すまないノエル、礼はいらない。それにイシュテスの街で知り合いとの約束がある、離れる訳にはいかない」
悪いな、でも仕方無いんだ。俺の大和魂が遠慮してしまうんだよノエル。それに約束の話は嘘じゃないんだよ、今思い出したけど。
「そ、そうか。約束があるなら仕方ないな……。ーーそうだ、なら代わりにこいつをやろう。」
手渡されたのは銀装飾のペンダントだった。嵌め込まれた水色の宝石はなんだろうか。
「ってこんな高そうな物は貰えねぇよ! 返す!」
「ふふっ、なら私の家まで返しに来い。それをノースベルグ騎士団の受付に見せれば案内してくれるだろう。」
「くっ今だ! 今返す!」
「おや、ミリア見るがいい。私のペンダントを盗んだ奴がいるぞ」
「ちょっ!理不尽だろ」
おのれノエル、どう足掻いても家に招待するつもりだな。ほら騎士の人、笑ってるし。確かミリアだっけ、笑われてるよノエル。
「ほら、捕まりたくないなら逃げろ。そして私に会いに来い、ノースベルグで私は待っているぞ。」
そう言い残し、ノエル達は去っていく。何人かの騎士から鋭い目で睨まれたけど何かしたか俺? ってノースベルグ? 然り気無く新しい街の情報を手に入れたぞ。
とりあえずゴブリンキングのアイテムを回収、ゴブリンの剛角×2、ゴブリンの剛骼×3、を手に入れた。ついでにさっきのメッセージログを確認した。
「お、派生職業が出てる」
『職業【盾使い】がアンロックされました』
おお、正に俺向けの職業じゃないか。んで他にはーー
『〈ワールドメッセージ〉アマトウさんがユニーク称号【不退転の盾】を獲得しました』
『〈ワールドメッセージ〉アマトウさんが守護者ゴブリンキングを討伐しました。これよりイシュテス北のダンジョンへのプレイヤー侵入不可を解除します』
うわぁぁぁ! ワールドメッセージで晒されるとかどんな罰ゲームだよ! 今日は目立たないように帰ろう、そうしよう。
「早く宿屋に帰って寝よう…」
いつの間にか辺りもかなり暗い。アイテムポーチからランタンを取りだし点灯する。ついでに早速ジョブチェンジし、【盾使い】になった。【盾使い】になると【重量軽減:盾】がデフォで発動するみたいだ。
「うっし、マップで最短ルート確認したしさっさと帰るか」
森を全力疾走で突っ走る、不思議と息は上がらない。
ーー怖い、元々俺は暗闇が苦手だ。怖くなるとついつい歌を口ずさむ癖がある。今は耳に入る音が全てモンスターの声に聞こえる。
「ーー♪ーー「ドスッ」ーーうげっ!」
一心不乱に走っていたら何かにぶつかり転ぶ。一体何にーー
「ゴガッ」
ーー茶色の毛深い巨人、いやこれは。
「ト、トローー「グシャッ」ーゥッ!」
いい終える前に俺は潰された、あれ?なんかデジャヴ。消える前に見たのはひしゃげた鎧と盾だった。
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「最悪だ」
トロールに潰された俺はポータルへ飛ばされた。そう、街のど真ん中だ。つまりこうだーーー
「おい、あいつもしかして【不退転の盾】じゃ」
「すげぇ、あれがゴブリンスレイヤーかよ」
「見ろ、装備が大破してる。一体どんな闘いをすりゃあんな壊れ方に……」
「すごいなぁ、僕もあんな風になりたい!」
ーーー観衆の視線に晒されている。
俺は広場から即脱出し、宿屋へ駆け込んだ。指定された部屋に入り、鎧を外しベッドへ潜り込んだ。
ーーーあぁ、眠い。嫌なことは寝れば忘れるだろう。
やがて部屋には寝息と鼻息だけが聞こえるようになった。
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現在のステータス
アマトウ:ヒューマン (レベル19)
職業:盾使い(レベル1)
性別:男
ステータス
HP=220
MP=220
STR=23
DEF= 41+2=43
AGI=23
INT=23
DEX=23
スキル
【盾:レベル24】:【シールドバッシュ】【スローイングシールド】【ラッシュバッシュ】
【体術:レベル10】:【体当たり】
【基本技能:レベル27】:【ガード】【ステップ】【ジャンプ】
取得職業:【戦士:レベル14】【盾使い:レベル1
】
装備
武器:なし
頭:なし
胸:ボロシャツ(DEF +1)
腕:なし
腰:ボロデニム(DEF +1)
脚:なし
装飾品:ノエルのペンダント(状態異常無効、スタミナ回復UP )
統一装備:なし
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簡易キャラ紹介
ノエル:ヒューマン
職業:重騎士
性別:女
一応姫、でも姫らしいことは妹に全て押し付けている。見た目に反して恐ろしい程の力持ちでプレイヤーのSTR極振りに匹敵する。
ミリア:ヒューマン
職業:騎士
性別:女
姫様命な人。理想の姫様にすべくあれこれ頑張るが実を結んだことは一度もない。ノエルに振り回される苦労人。
次回、「去らば初級鎧」