第25話「ドキッ不安だらけの野外授業そのさん」
どうもお久しぶりです。
更新すると言いつつすっかり遅れてしまいました。
本話は当初シリアスでしたが、ネーヨと思ったので全修正したりしてました。シリアスいくない。
余談ですが、最近あの予測変換がアイエエエになったりニンジャめいています。なにこれこわい。
野外実習二日目。
ブルボアの討伐も順調に進み、太陽も真上へ昇っていた。
その時、ふとユキカゲが呟くのが俺の耳に届いた。
珍しく締まった顔つきだ。どちら様ですか?
「風がよくないものを運んできたようでゴザルな……」
「なに言ってんだ、ユキカゲ」
ユキカゲが痛い台詞を呟いた。
あれか、邪気眼に覚醒したってやつか。
かく言う俺もかつては目覚めていたクチだ。右手に紋章描いたり、教室の窓際後ろから二番目の席でたそがれてみたり、ふいに空を見上げるとか読書とかな。
他にも様々な黒歴史があるが……まあそれは置いとこう。
そのユキカゲは、俺の邪気眼発言を受け顔を朱色に染め、手を顔の前で揺らしながら慌て訂正をした。
「ち、違うもん! 邪気眼ではゴザらん! 探知スキルに反応があったでゴザルよ。真っ直ぐ此方へ向かってくるようでゴザルな」
マスクから僅かに覗く表情が、アホ面から急にキリッと引き締まった面構えに変わった。
成る程、新手か?
疲れている生徒達に接触させるのは、ちょっと危険だ。
ここは俺達でなんとかするか。
「トーカ、ユキカゲ。様子見に行くぞ」
ユキカゲに案内されるがまま、俺達は森を突き進んだ。
確かにこの先からは凄まじい怒気を感じる。まさかブルボアを狩りまくったせいで、ボス的な奴を引き寄せちまったか?
「110……80……50……来るでゴザルよ! 構え!」
ユキカゲの合図に従い、速やかに戦闘態勢をとる。
「ブグィィィッ!!」
それは土を巻き上げながら現れた。
猪だが、どことなく牛を想わせる風貌。ブルボアだ。
だが普通のブルボアと違い、かなりデカイ。
なにこれ、岩竜に比べれば小さいが、ぶっちゃけ怖い。
「【ガード】!!」
咄嗟にガードを発動し防ぐ、がーーー
「と、止まらねぇっ!!」
その巨体は勢いを衰えさせず、俺の体を後ろへと押し続ける。
そして、踏ん張る俺を牙ですくい上げた。
受身をとり、立ち上がる。
「ユキカゲ! あいつらにフィールドボスが出たから先に帰投するように伝えてくれ!」
「承知! 直ぐに戻る故、後免!!」
流石は斥候職、本気だしたらクソ速いな。一瞬で消えた。
「トーカ」
「はいはい、夫婦の共同作業と行きましょう」
駆け出すと同時にトーカがサンダーバインドで動きを止めた。すかさず俺は追撃をかける。
「誰が夫婦か。【シールドチャージ】、【シールドバッシュ】!」
巨体にはバインドが効きづらいらしく、バインドが直ぐに解けてしまった。
「えー、つれないですねぇ。【サンダーレイン】!」
バックステップで下がると同時に、デカブルボアに雷の雨が降り注いだ。
もともとトーカとはゲーム仲間だ。呼吸を合わせるのは造作もない。
ブルボアと動きに大差はないので、比較的楽に立ち回ることが出来る。
「待たせたゴザル!」
「ハルバードブーメラン!」
「行きます!」
そうこうしている内にユキカゲ達が到着した。
五人揃えば怖いもんなしだ、正直ブルボアに同情せざる負えない。暴力的な連携の前に、デカブルボアはみるみる体力を減らしていった。
正直チョロいぜ。
「ケリをつけるでゴザル! 土遁【クイックサンド】」
動きが鈍る。
すかさずシロさんと俺は詰め寄りーー
「【ソードラッシュ】!」
「【ラッシュバッシュ】!」
ーー殴りまくる。
更にブルボアが術から抜けた瞬間に、トーカがふたたびサンダーバインドをかける。
追撃にとそれぞれが技を叩きこみ、最大まで溜めたノエルが跳躍した。
「【首断ち】」
大地を揺るがすほどの剛撃がその首を跳ね、同時にその巨体は地に倒れこんだ。
怖い。
すっかり慣れてしまったが、ノエルは見た目からは想像できないがとんでもない力持ちだ。
そりゃハルバードをその辺の枝くらいの感覚でブンブン振るう時点でおかしいのだが……。そういや前に酒場でデカゴリマッチョな牛型獣人のオッサンと腕相撲したら、ギャグ漫画みたいに回転しながら宙を舞ったんだよな、オッサンが。
ノエルの旦那さんになるやつは大変だな、尻に敷かれるぜ間違いなく……物理的にな。
「いえーい!先輩、ハイタッチ!」
「拙者もハイタッチでゴザル!」
「よ、よくわからんがはいたっち!」
「はいたーっち!」
テンションが荒ぶっているトーカがハイタッチをすると、それが引き金となったのか全員がハイタッチを始めた。
「おう、ハイタッチ」
戦いの後に似つかわしくない雰囲気かもしれないが、俺はこの感じ嫌いではないな。
「うっし、帰るか」
俺達は街へ向け歩きだした。
◆
街へ着いた俺達は、生徒達と共にギルドへと向かいブルボアの討伐報酬を受け取っていた。
その報酬を分配していると、いつの間にか孤児院が経営している食堂に行く流れになった。女子の話は二転三転と変わりまくるからな、いつからその話になったのかは覚えていないが。
「くはーっ! いつ食べてもここのごはんは美味しいでありますなー」
「うわ、まじでうまいっすねー。男の胃袋を掴むなら、こーゆーのがいちばんっすよ」
わりと好評のようだ。
男は当然ながら、女子までがっついている様はすこし引いてしまう。もっと自分を大切にしろと思うが、まあ荒っぽい仕事上そうなってしまうのもわからなくもないが。
しかし、さっきから女性陣でなにやら話しているようだが……なんか、蚊帳の外みたいで寂しい。
いいもん、俺はディノと絡んどくし。
「うわっ、先生いきなり肩組まないでくださいよ! 飲み物がこぼれますって!」
「うるせぇッ! 男は男同士で腹わって賑わおうぜ! あっ、のりんしゅいおかわりっ!」
私は「ノリンシュイ」と呼ばれる玉子スープを飲みながら、ティルテとノエルさんの会話に耳を傾けていた。
「ぷはーっ! にしてもノリンシュイってどこの料理っすかねぇ」
「確か、アマトが祖母の実家に里帰りした際によく出されたと聞いたな。田舎とも言っていた」
ほほぉ、田舎の料理と言うわりには癖のない澄んだ味わいだ。
しかし、ノリンシュイ……か。名前の意味は何だろうか。旧大陸料理には無かったところを見ると、共通言語が訛ったものだろう。
田舎の言葉は訛りが酷いところもあるし。
「ノリンシュイ……のりんしゅい……のぉーりんしゅうぃ、のりぬしぅい」
「フェイ、ノリンシュイがどうかしまして?」
「いえ、ちょっと考察をであります」
そう言えば、この間孤児院で小さな子にごはんを食べさせていた時に「みしょしぅにおこめまぜうのー」と言っていた。後は「おぞうしゅいたべうー」とか。
となると、ノリン水……もしくはノリン汁か。師匠のだす料理は何とか汁と言うのが多い、当たりだろう。
だがノリン汁のノリンは何だろうか。豚汁は豚が味噌汁は味噌、けんちん汁は……まぁ具のどれかがけんちんなのだろう。
「ノリン……のりん……のぅりぃん、のりーん」
「フェイ、もしかして頭を打ったのではなくて? 頭が悪いのかしら。フェイ、頭は大丈夫?」
「あれ、なぜかバカにされてる気が……いや、まだ考察中であります」
ノリン、そう言えば師匠がタラスパとか言っていた料理に使われていたのがノリだった。
となると、ノリンはノリだろう。
つまり、ノリンシュイとは「ノリの汁」か。
胸につっかえていた物がとれたようだ、不思議な達成感につい顔が綻んでしまう。
「くふっ」
エリーの方を見ると、何故か心配そうな顔をしていた。
違うよ、頭がおかしくなったわけじゃないからね。
「しかしアレでありますな。ノリの汁って響きが何かこう、あまり美味しそうにない感じであります」
「何か悩んでると思ったらのりんしゅいのことですか。確か……一般的にはのり汁っていわれてますねー」
向かいの席に座っている女性、犬獣人のトーカさんがそう言った。
「のり汁も聞いたことがないでありますな」
「ま、そうかもねー。……ところでフェイさん、だっけ? フェイさんは先輩とはどう言う関係なの? なんか他の生徒さんより……ちょっと仲良いなーって思って」
どう言う関係……。それは勿論、師弟関係だろう。
来る日も来る日も盾で殴り殴られ、正面から幾度もぶつかり合った。
時には地面に倒れこみ気を失ったこともあるし、ついつい熱が入って日がくれるまで修練に励んだこともある。
そう言えばあの時の師匠の慌てっぷりは微笑ましいものがあった。
「そうでありますな……。私と師匠は師弟の関係と言う奴であります」
「し、肢体の関係っ!?」
何を驚いているのだろう?
「驚くことでありますか?」
「た、確かに貴女の匂いが強いなーとは思ってたけど……。にしても堂々と言うなんて……ここって貞操観念があれなのかなぁ。ゴホン、フェイさん失礼だけど先輩とはどんなことを?」
訓練の内容を知りたいのかな。
もしかして、助言をしてくれるとか?
流石は師匠の仲間だ。
「んー、もっぱら体をぶつけ合うのがメインでありますな。最近は勢いをつけたのもやるであります」
「か、肉体をぶつけ合う!?」
「はい、初めの頃はあまりの激しさに機を失うことも多かったのでありますが最近は慣れて、もっとお願いしますと延長する余裕も出来てきたであります」
あれ、何故かトーカさんが苦虫を潰したような形相をしている。
体を小刻みに震わして、手を力強く握りしめている。
「そ、そぉですかぁ。なるほどなるほど……しかし気をヤル程ですかぁ、へぇ」
「ええ、ほら師匠のってすごいでありますから。お腹の奥にズシンと内臓をこねくりまわされるような……は、恥ずかしながら堪えきれず嘔吐したことも」
「は、吐くほど!? ほ、ほー。へぇー。……ちなみにどこで?」
訓練環境についても聞くとは、ずいぶんと熱心な。
「学園内にある第三訓練場であります」
「校内の室内!?」
「いえ、第三訓練上はほぼ野外であります」
「あおゲフン、野外プレイ……だと」
何故だろう、トーカさんの機嫌が凄まじい勢いで悪化している気がする。
トーカさん俯いてブツブツとなにかしら呟いているが内容は聞き取れない。
「くぅっ……。でも別に私は二番さんでも……」
「トーカさん?」
「ねぇ、フェイさんはそーゆーの好き?」
それは勿論好きだ。
そもそも私が家の反対を押しきってまで学園にきたのは、幼いころに娯楽小説の冒険や熱い展開に影響されたからだ。
若き戦士の苦楽に満ちた冒険、道中に出会った友とのすれ違いや夕日を背に殴りあい和解する主人公。
他にも師匠との出会いなど、どれもが私にとって色とりどりの世界に見えた。このあります口調だってその主人公の真似だ。
だから、同じ盾使いとして師匠と出会ったときは世界が変わって見えたのだ。少し人格に問題がある気がするが、根本的には真っ直ぐだから憎めないし、そこら辺の下品な男よりは断然良い。
だから、この泥にまみれるような日々は嫌いではない。
「ええ、好きです。とくに夕日をバックにってなんかステキでありましょう?」
「ゆ、夕日でバック!?せ、先輩はバックがお好みかー……よし、決めました。ありがとうフェイさん、敵同士ではありますが感謝します」
何故か感謝を告げたトーカさんはそのまま師匠の方へと歩いていった。
何がしたかったのだろう。
それに敵って言ってたけど、何か悪いことをしただろうか。全然分からない、謎だ。
「いいですかノエルさんー。男なんて胃袋掴んじまえばこっちのもんすよ、そりゃもう力強く握りしめて離さない、それくらいの気概で行けば絶対に先生はノエルさんを選びますって」
「し、しかしだな」
「あーっ! そんな弱腰でどうするんすかー。恋心を燻らせたままの方が気が散っちまいますよ? こーゆー気持ちは早い内にケリをつけた方が良いにきまってますって! だからグラプス ア ストマック作戦で先生の心を奪うっす」
でたな、ティルテのお得意「面白そうな状況をいじくり回す」、かつては私も……まあ今でもだがアレをされた。
純粋なお節介か日頃扱きの憂さ晴らしに師匠にけしかけるつもりかは分からないが、まああの楽しそうな表情からして後者だろうか。
「成る程、それもそうだな。しかしキャッチではなくグラプスとは……、握り締めて良いものなのか?」
「キャッチなんて生易しいのじゃ手からスルリと抜け落ちちゃいますよ? 乙女たるものいつだって恋には貪欲にガンガンいこうぜ! 失いたくない輝きはずっとこの手で握り締めていかないっすと」
「れ、恋愛とは中々奥が深いのだな……」
「うんうん、だからこの恋愛ごとに関してはエキスパートの私を信じて先生を虜にしてやるっす」
何がエキスパートか。恋愛経験ゼロの生娘が。
ビキナーどころか、それ以前じゃないか。
いや、私もだけど。大体、そんなことばかりしているとその内、痛い目にあうよ。特に師匠だし。
「ああっ! これで決心がついた、私はこの手でガッシリとアマトの胃袋を鷲掴み、虜にしてみせよう。上手く事が運んだ際には知らせるので楽しみにしていてくれ」
「応援してるっす」
「わ、私も応援しますわ」
ああノエルさんの笑顔が眩しい、あやうく惚れるところだった。
私もノエルさんの恋路を応援しますよ、恋敵はおおそうですが。
「私も応援します、ノエルさん」
「ありがとう、皆。私は必ずアマトを口説き落としてみせよう」
そう皆に礼を言うと、ノエルさんは席をたち師匠の方へ向かった。頑張れ、ノエルさん。
「素直に助言をするなんて、珍しいですわね」
「ええ、全くであります。いつもならひねくれているのに」
くひひ、と笑うティルテは胡散臭い表情で口角を上げた。
「わかってないなぁ。あーゆー人は素直に言った方が面白いんっすよ」
◆
孤児院に帰り、すっかり皆が寝静まった頃。
俺はふと圧迫感を下腹部に感じ、目を開けるとそこにはトーカがいた。
なにこれ、こわい。
息を荒げたトーカは目を開いていて、窓から差し込む月明かりが目に反射してギラついている。
「な、なにしてんだお前……」
「へ、へへへぇ……。先輩が行けないんですよぉ? いつか先輩から来てくれると信じてたのに、あーんな子にうつつを抜かしちゃって。だからもうやっちゃって良いですよね、ね?」
こ、これはヤバイ。
俺は逃げ出そうと体に力を込めた。
「逃げよーたって無駄無駄ァ……。んー、良い匂いです」
び、びくとしないだと!?
はっ、そう言えば。
「私は獣人だからSTRに振らなくても、上昇値はヒューマンよりも高い。一方、先輩はDEF極。力では魔法使いの私にも勝てないですよ?」
ガッシリとベッドに押さえ付けられた俺は抵抗すら出来ない。
「けひっ、大丈夫。天井の染みを数えている間に終わりますからぁ……」
「おい、やめろバカ!」
そうしてる間にトーカの顔がどんどん近づいてくる。
せめてもの抵抗に顔を横に向けると、ドアから覗きこんでいるぱちくりおめめと目が合った。
ユキカゲだ。俺はカンダタロープにもすがる思いで助けを求めた。
「ユキカゲヘルプ! トーカの暴走で貞操がヤバイ!」
「し、しかし」
「ユキカゲ、じゃましたらころころするよ?」
「ひっ」
だ、だめだ。完全に気圧されている。
これじゃ、じゃん拳で相手がグーをだすと分かってるのにチョキしか出せないようなものだ。
けど、けどさ。グーにチョキが勝てないって誰が決めたよ。いや、決めてなんかいねぇんだ。
お前のチョキは高周波シザーだ。なんだって切れるはずだ。頑張れ、頑張るんだユキカゲ!
「ユキカゲ! 助けてくれたら明日のおやつを増量するぞ!」
「御意」
決断はやっ。一瞬でトーカの背後に回り首を絞めるユキカゲ。
「うぐ、小癪な!」
「うおー! ニンジャサブミッションでゴザル!」
一瞬拘束が弱まり、それを俺は見逃さず一気に振りほどく。
「この瞬間を待ってたぜ!」
「しまっ……」
「【スタンスマッシュ】!」
スタンスマッシュは文字通り確率でスタンさせる技だ。
うまくいったようでトーカの頭上には星が回っている。
「よし、ユキカゲ運んでくれ」
「承知、お休みなさいでゴザル」
「おやすみ」
やれやれ、ようやく眠れる。
布団に手をかけかぶり直す。ちなみにこの布団はユキカゲと俺が作ったものだ。
うつらうつらとし始めた頃、ベッドが軋む音に意識が引きずり戻された。
「アマト、起きてるか」
「お前か」
ノエルがベッドに方膝をのせて此方の顔を覗きこんでいた。鼻元を掠める髪先からくすぐるような淡い香りが漂ってくる。
クッソ良い匂いだ。
「なにかようか?」
とりあえず上体を起こそうとするが。
「そのままで構わない」
とベッドに押さえ込まれた。
「動くな、私に身を任せろ」
慈母神のように優しい微笑みを浮かべたノエルは、俺を片手で押さえつつ俺の下腹部に乗り込んだ。
何だ下腹部に乗るのが最近の女子のトレンドなのか。
「もしかしたら痛むかもしれないが、なるべく優しくするから安心してくれ」
俺の胸に添えていた右手をつつーっと沿わせながら俺の腹に動かした。ぷにぷにとつつかれる。
一体何が始まるんです?
「行くぞ」
「ぅぇっ!」
突如襲った衝撃は体を突き抜けた。
何が起きたのか分からず混乱していたが、間もなく吐き気と鈍痛が体を駆け巡った。
俺は視線をノエルへと向けると、俺の腹にノエルの腕が突き刺さっていた。
「だ、大丈夫か? すまない、すぐに終わらせるーーあった……!」
「ヒュー……なにが……ヒュー」
その時、口から胃液が溢れた。
「ど、どうだアマト」
「ゲホッ、何が……」
「わ、私の事がす、す、すー……きになった、か?」
今ので好意を覚えるってどんだけドMだよ。
むしろ、殺意をおぼえたわ。
「ねーよ」
「そ、そんな! 掴み方が悪かったのか? わかった、次は手加減なしで握るぞ」
無理矢理絞り出され、胃液が再び溢れ出る。
何でこんな目に遭ってんだろ。
なぁ、これは夢なんだろう?嘘だと言ってよバー○ィ。
「ん……、どうだ今度は。」
「だ、誰かたすけ……」
激しい痛みと嘔吐感のなか、俺は意識を手放した。
おのれ、ノエル許すまじ。慈悲はない。
ふと頭を撫でられる感覚に目を覚ます。
「あ、気がついたんですね。御手洗いに行く途中でアマトウさんの部屋から異臭がしたので来たんです。シーツとかも汚れていたので予備を出しました。体も一応拭きましたから匂わないと思います」
月明かりに照らされたシロさんの透き通るような白い髪。すげー綺麗だ。
「て、天使がおる」
「まだ顔色が悪いですね。ゆっくり休んで下さい。私達は体が資本ですよ」
「そ、そうする……」
シロさんマジ天使。
こんな風に育ってくれてお父さん嬉しいです。
「お休みなさい、アマトウさん」
薄れ行く意識のなかでそう聞こえた気がした。
おやすみ、シロさん。
トーカ「ユキカゲ殺すべし。慈悲は無い」
ユキカゲ「アイエエエ!? トーカ!? トーカナンデ!?」
トーカ「ユキカゲ、俳句を詠みなさい」
ユキカゲ「助けてアマトウ殿、拙者ピンチ!」
アマトウ「何だかんだで仲良いなこいつら」
次回、「天誅、インガオホー。ついでにズグムド」
纏めるか、二つに分けるか迷います




