第3話「VS ゴブリンキング1」
微修正
さて、どうしようか。夜まで時間はあるし、あのフィールドをもう少し探索してみるのもいいな。とりあえず、ポーションを補充するか。
これからの行動計画を考え更けていると、不意に後ろからーー
「あっ先輩みーつけたっ! やっと見つけましたよ、もー迷子ちゃんですねー」
ーーと組みつかれた。なにやら鼻息が荒いが大丈夫か? フヒヒとか言ってるし。
「おわっ! ト、トーカ! いきなー「あー、良いですねー。極上の香りです~」ーって話を聞け!」
だ、駄目だ。完全にトリップしている、こうなったらトーカは止まらない。気がすむまでやりたいようにやらせるしかない。
道行く人々から、
「おーおー、熱いねぇ」
「糞ッ! リア充め、爆発しろ!」
「こんな人前で見せつけてっ! ハレンチな!」
とか散々言われているが、そりゃ恋人同士なら良いかもしれんが相手は生粋の匂いフェチだぜ? 確かにトーカは可愛い、でも考えて貰いたい。
「ハァハァ…たっぷりと汗をかいたんですね。とても豊潤な香りがします、あぁ香水で表すならーーそう、正にパルファム」
こんな内容を、延々と呟いてる女子に組み付かれて嬉しいか。ーー答えは当然、NOだ。いや、嬉しい奴もいるかもしれないが。
そんなこんなで現実逃避していると、ようやくトーカがトリップから帰還した。
「はっ私としたことが先輩の香りについつい
我を」
ようやくトーカの拘束から解かれた俺は、後ろへ振り向いた。
「それにしてもよく俺だと気づいたな。名前は教えてないし全身鎧で顔は見えないだろ?」
「先輩、私を見て何か気づきません?」
何かと言われ観察してみると、視界にピクッと動く物体が。
「犬耳?」
犬耳があるってことは、つまりトーカは獣人か。ってことは……いや、考えたくないがまさかな、しかしあり得る。
「ま、まさか匂い……か?」
頼む……外れてくれ。
「当たりです、先輩」
「マジかよ……」
まさか、ゲームの世界でも匂いに拘り、獣人になってまで匂いを求めるとはな。とりあえずトーカとはフレンド登録をした。
「ところで先輩これからどうします? ちなみに私は、知り合いと一緒に南で狩りをする予定です」
南か……俺は北の探索をしたいしなー。とりあえず別行動にするか。
「俺はフィールドの探索をする。何かあったら連絡してくれ、じゃあまた後でな」
「うぐぐ、本当は先輩と一緒にいたいですけど。狩りに行く約束なので我慢します」
耳をペタッとさせて落ち込むトーカ。心なしか尻尾も元気が無い。
「すまんな」
「じゃ、じゃあ明日! 明日は一緒に行きましょう!」
「わかった わかった」
トーカにお勧めの宿屋を紹介して貰い、俺はこの場を後にした。さぁ、いざ行かん。北のフィールドが俺を待っている。
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積極的に戦闘はせず、ひたすら森の中を突き進む。大抵の場合、森の中には何か建造物があったり、襲われているNPC を助けたりとイベントが豊富だと相場が決まっている。せっかくのVRMMOなんだから色々楽しまないと損だしな。
ーーガサッ
「っ!」
俺は急ぎ姿勢を低くし、周りへ耳を澄ます。木々が擦れる音、鳥の鳴き声、その中から微かに聞こえる何者かの息遣い。
ーー見つけた。
鎧の擦れる音に気をつけながら静かに移動する。幹の横から獲物の様子を伺ってみる、敵はやはりゴブリンのようだ。辺りを探り他のゴブリンがいないかを確かめた、どうやら一体だけのようだ。
そっと背後に回り、
「【シールドバッシュ】!」
ゴブリンを殴る。慣れれば声を出さずともスキルは発動できるらしいが、声に出した方が気合いが入る。
おぉ昨日と威力がダンチだな、やっぱトゲは偉大だぜ。
吹き飛んだゴブリンを見るとHPが半分近く削れている。ようやくゴブリンと対等に闘えるようになったらしい。最初8分近くかかってたのが嘘のようだ。
「【ガード】! んで、止めの【シールドバッシュ】!」
さくっとゴブリンを倒し探索を続ける。途中何度かゴブリンに遭遇したが難なく倒し奥に進む。
街を出て何時間経っただろう? 町を出たときは昼前だったが今は少し日が落ちている。そろそろ帰らないと完全に日が落ちるかもしれん、1人で野宿は怖いしな。
「今日はこのくらー「ーーっ! ーーげ下さいっ!」ーって何だ?」
なんか余裕の無い声だったな。ちょっと見に行くか。
急ぎ足で声の方へ向かう。枝葉が鎧にぶつかり煩いがそんなことを気にしてる余裕はない。何かトラブルが起きているのかもしれない、人として放って置く訳にはいかない。
木々を抜け、少し開けた空間に出た。血の匂いが漂う、音の在処へ目を向ける。
「血を流し倒れている者、怪我を庇いながら剣を振る者、あの統一された装備をみるに何処かの騎士かなにかだろう。
ーーその中でも一際目を引くのは1人の女性だろう。分厚い鎧は堅牢ながらも機動性を損なわないよう要所以外は軽量化しているようだ。動く度に日の光に当てられ、その白銀の髪はまるで燐光を散らすかのような神々しさを持つ。…初めて女性に対して美しいと感じた。
ーーってそんなこと考えてる場合じゃねぇ!
俺は走り出す。彼女へ向け剣を降り下ろさんとするあのデカゴブリンへ。
「こっちだデカゴブリン!」
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私の名は「ノエル・アルスベルグ」。一応、姫をやっている。しかし、私はどうも武人気質だったらしくてな。幼い頃より城を抜け出しては騎士の訓練所へ足蹴よく通い、修行に明け暮れた程だ。お父様にお願いし、モンスターの討伐にも積極的に参加した。
それ故に私は皆から姫殿下とまで呼ばれるようになった、殿下と言うのは気にくわないが力強い響きは気に入っている。
「ふむ、エターナ近くの森でゴブリンの大群と遭遇。現在は騎士団と冒険者が協力し、此れを掃討中。ーーか、ミリア。ゴブリンどもがどこから来たか分かるか?」
ミリア、こいつは幼い頃より剣を交えた仲だ。やれ書類を片付けろ、やれ女らしく振る舞えだの、下らんことですぐに怒る。
「たしか、ザルド鉱山の方から来たと報告があります。それがどうかしましたか姫様?」
ザルド鉱山……イシュテスの方角か。確か加護者が召喚されると聞くが、女神に死ぬことを許されない存在と言われている。ふむ加護者……か。
「確か伝承でーーっとこれだ「試練の守護者」。こいつらは、本来ダンジョン等の守護者で魔物の姿を象るのは知っているな?普通はダンジョンからは出られん。だが、加護者が現れると試練の存在を知らせるためにダンジョンの外に出現すると言う。」
「この度のゴブリンと守護者に何か関係が?」
首を傾げるミリア。可愛い奴め
「考えてみるがいい、イシュテスの近くにはどんなダンジョンがある? そこの守護者は何だ。」
「えーとイシュテスには現在2つダンジョンが確認されていて、ーーー確か守護者……は片方が未確認で、もう片方はーーー、」
そこまで言って気付く。
「ーーゴブリンキング、です」
「そうだ。さあ原因は分かったな、後は討伐するだけだ。行くぞミリア、ガルドルドとドーバーも呼べ! 支度ができ次第出発するぞ!」
「ち、ちょっと姫様? もしかして私達だけでとかーー」
私はフッと笑う。当然だろう、無論ーー
「私達だけだ」
今動ける騎士を集め、私はイシュテス北の森へ向かった。
そして私達はゴブリンキングを見つけ、直ぐ様陣形を組み仕掛けた。
しかし結果は悲惨だった。ゴブリンキングの一振りでドーバーがやられ、それに驚いた一瞬の隙でガルドルドが左腕を負傷した。
「姫様っ! お逃げ下さいっ!」
逃げる? それは無理だろう、こいつが逃がしてくれるわけがない。そう、闘うしかないのだ、どちらかが死ぬまで。
「せぇいっ!」
私はハルバードに力を込め【兜砕き】を放つ。
だが奴は私の一撃を剣で流し、その剣を振り上げた。
ーーー死ぬ。
死を覚悟したその時、何処からか声が聞こえた。
「こっちだデカゴブリン!」
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目測でおよそ3m足らずの巨体は振りかぶる。その手に持った刃渡り150cmはあろう剣を、枝葉のように振るうために。
間に合ってくれ!
俺は力一杯地面を蹴る。
「はあぁぁっ! 【ステップ】ッ!!」
心なしか何時もより跳躍距離が長い。これならば届く!
「【ガード】ォッ!」
デカゴブリンの一撃を防ぐ。タイミングも完璧だ。だがそれでも体が吹き飛ばされそうになり、必至に踏ん張り耐える。
全身鎧の重さに助けられたな……。
「今だ逃げろ!」
俺は白銀の女性に叫ぶ。
「断る! 私は仲間をやられた、おめおめと逃げ帰るわけにはいかんのだっ!!」
な、馬鹿かこいつ。命の方が大事だろうに、ーーいや、俺も仲間がやられたら同じことをするだろう、気持ちは分からなくもない。
「わかった、じゃあーー【ガード】! 共闘しよう! 君、名前はっ【ガード】! 俺はアマトウ」
「良いだろうアマトウ。私はノエルだ」
あれ? もしかして初PT戦闘じゃないか?
「よろしく、ノエル。んじゃ行きますか!」
こうして、デカゴブリンとの戦闘が幕を開けた。
短くてすみません
次回、決着