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Artemis Online   作者: 氷結トマト
第一章「箱庭の中」
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第22話「迫る!ズグムド帝国」

ほんのりギャグ話。短め。


やや追記

静寂


夜闇よりも深き暗黒に包まれた空間。


その静寂と闇を祓うかの如く蒼炎が灯火となって辺りを照らす。


ズグムド帝国…そう、この空間、この場所こそズグムドを統べる王の玉座…ズグムド帝国の中枢にして頂点。


玉座にて肩肘をつき頬杖をしているこの男が現ズグムド帝国帝王ツァイリッヒ・ドラッツェン・ズグムド、その人である。


眉間の皺をより一層深め、小さく…耳に響くように呟く。


「…さて、今度の改造魔獣は倒せるかな。グエルドラードの諸君…」


灯りが一つある者を照らす。


膝をついていた男が一人、立ち上がった。


「ツァイリッヒ閣下!ここはズグムド帝国第三兵団が長!火のエルブラストにお任せください!」


ズグムド帝国兵団四天王が一人、火のエルブラストは声を上げた。


「…ふん、よかろう。水のウォルクア、土のグライアス、雷のヴォルダーは失敗続きだ……お前には期待しているぞ?」


「はは!我が改造魔獣【炎獅子ラヴァリオン】にお任せあれ!行けぃ、ラヴァリオン!グエルドラードの街を焦土へと変えてしまえ!」


ラヴァリオンと呼ばれた人形を模した魔獣は心臓の鼓動に合わせるように体を走る溶岩のラインを輝かせる。


操者の声に応えるかのように獅子王は咆哮をあげた。



一般兵は思う。


(俺らの国、悪役じゃね?就職先間違えたかなぁ…)







ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


町中に警鐘が鳴り響く。


「なぁフェイ、あの鐘はなんだ?」


わたわたと慌ただしい様子のフェイに尋ねる。


「ず、ズグムド帝国の改造魔獣が来たのでありますよ!早く避難するであります!生半可な腕では太刀打ちできないで……って先生!?」


フェイが言い終える前に走り出し、爆音が聞こえる方向へ向かう。


ようするに敵だ。つまり、敵国の襲撃イベントってことだろう。だったら俺達プレイヤーの出番って訳だ。


角を抜けると日曜朝に出てくるようなライオンっぽい魔獣が人を襲っていた。


あれは…


「くそっ!バスターエ…うぐぁっ!!」


我がクラスの火力馬鹿ディノだ。馬鹿野郎!パリィで防いだ隙に攻撃しろ!無謀過ぎるだろう!


倒れているディノにライオンが近づいていく。止めを指すつもりか!


「やめーー」


「そこまでだ!」


っ!?


声の方を向くとそこには、………日曜朝に出てきそうなカラフルな奴等が居た。なんだこの展開。


「悪を焼き尽くす勇ましき炎!ブレイヴレッド!!」


ほら、なんか思い思いに名乗り始めちゃったよ。うわーこれ日朝のテンションだわ。あれ?よく見たら俺の鎧と似てるな……そういや俺の鎧もブレイヴゴールドって言ったな。…うわーまじかー、いやでも…うわーまじかよ。これあれじゃん、敵か味方か五人目の戦士!ってやつ。うわーこの歳でそれはないわー。


「四人揃ってぇ!勇鎧部隊ブレイヴ Ⅳ!!」


ババーンってなんかカラフルな煙幕が。うわ、これが派手な演出ってやつかー。うわー、新しい鎧買い直そうかとマジで思ってきたわ。


「ふふふははっ!出たなブレイヴⅣ、今日こそ引導を渡してやろう。火のエルブラスト樣より頂いたこの力で!このラヴァリオンがなぁっ!!」


「俺達は負けない!【フレイムスラッシュ】!」


「激流よ、【スプラッシュアロー】!」


「【ライトニングバインド】!」


「【ソニックブレイド】、切り裂いて!」


うお、聞いたことがない魔法だ。中級魔法ってやつか?いつの間にかディノも逃げたみたいだし、危なくなったら助けにいこう。うん、そうしよう。自分からあれの仲間になるのはちょっと……。





目から溶岩ビーム。爆発攻撃。なんかよくわからんけどスゲェ炎攻撃。かなり善戦しているが徐々にブレイヴⅣは追い詰められていった。


ブレイヴイエローが肩の傷を抑え、悔しさ混じりに言葉を吐く。


「こいつ…!今までの改造魔獣とは桁違いよ!」


うわ、でた。新しい仲間が加入するときによくある展開。レッドも悔しそうに呟く。


「四人では…この四人では勝てないってのか!くそぉっ!!」


おいやめろ。そう言うあからさまなフラグ建ては感心できんぞ。


「ぬふははぁーっはははっ!!その通りだぁ…くぉの俺様の体はぁ!貴様ら四人の攻撃を徹底的に研究しぃ!それに耐えられるようつくられたのだぁぁぁっっ!!」


「そ、そんな…」


あーもう!くそっ!わーったよ!いきゃーいいんだろ?い、け、ば!!





ラヴァリオンの口元に高濃度の魔力が集束していく。ブレイヴⅣは死を覚悟した。そして己れの不甲斐なさを呪った。そのときだ、


「塵と滅っせぃ!!ヴォルカニッククラーー」


「待てぃっ!!」


突如、場を制するようにその声の主は現れた。


「己の欲望が為に日々の安寧を過ごす人々を虐げんとする者よ…その行いを恥と知れ!人それを外道と言う!!」


「な、何者だ!」


煙突の上に立つその姿は逆光になっているため伺うことは叶わない。


「貴様に名乗る名前は無い!変身っ!!とうっ!」


飛び降り、着地したその場所に居た者の姿は。


「き、金色のブレイヴ…」


「ば、ぶぁかなぁっ!ブレイヴは四人しか居ないはずぅぁっ!!貴様ぁっ…何者だああああぁっ!!」


「……(やば、脚がジンジンする)」



黄金の戦士は何も語らない。だって恥ずかしいし、喋ったら色々と面倒だし。


えーと、ラヴァリオンだっけか。残りのHPは半分くらいか……でかい口叩いた以上退けんしなぁ。やるだけやってみるか。


「そこの奴等…手出しは無用だ。この場は俺一人で十分…。そこで見ていろ」


俺の言葉が気に入らなかったのかラヴァリオンは頭に筋のようなものを浮かべ激昂する。


「切り裂いてくれるわぁっ!微塵と散れぃ!【ランページ プロミネンス スマッシュ】!!」


上等!真っ向勝負、受けてたってやらぁ!!


「【オーラシールド】、【ラッシュバッシュ】!」


オーラシールド、最近取得したスキルで一定時間属性攻撃をある程度緩和することができる。


「オラァッ!」


「ズエリャアアアァッ!!!」


黄金のオーラと赤熱した灼熱のオーラがぶつかり合う。…半分は演出だが。


おとこと漢の拳が幾度となく交わり、辺りを衝撃波で巻き上げる。


しかし安物の盾がそんな攻防に耐えきれるわけもなく、やがて盾からはギシギシと悲鳴が上がった。


「その程度の盾ではなぁっ!」


ラヴァリオンが駄目押しにと放った一撃が盾を歪ませる。


パァンっと音を立て、盾が光となり霧散した。耐久値が0になったためによる強制キャストオフ。


歯軋りをする。やはり、持たなかったか。だが、ラヴァリオンのHPも風前の灯火。こうなれば徒手空拳で仕留めるまでだ。


右手を眼前に構えそれっぽい台詞を叫ぶ。


「俺のこの手で弾けて混ざれ!死なばもろとも!ゴルディオンッ!フィンガアァァァッッ!!」


黄金のオーラが右手に集まり、眩い輝きを放つ。勿論ただの【抜き手】だ。あくまで演出である。


ラヴァリオンはその輝きに恐れを抱き後退る。


分厚い表皮に覆われた腹筋に腕がめり込む。今までの戦闘により蓄積されたダメージがその表皮を破壊したのだ。


「そ、そんなっ!そんなぶぁかなああぁっ!!!」


「光となり、あの世で詫び続けろ…ラヴァリオン!ゴールド…エンドォ!!」


止めにと抜き手を再度放ち、腕を抜きラヴァリオンを背に向ける。


ラヴァリオンは腕を抜かれた箇所から火花を撒き散らしながらゆっくりと膝から崩れ落ちた。


「ズグムド帝国に栄光あれええええッ!!!」


派手な爆発が辺りを包み込んだ。勿論演出だ。やがて爆煙が晴れるとそこには誰も居なかった。そう、あの黄金のブレイヴも。




「あのブレイヴは一体…」


「騎士団長なら何か知っているかも」


あの姿…間違いなく彼は五人目のブレイヴだろう。しかし、このブレイヴ装備が五つあったなんて聞いてないぞ。本当に何者なんだ?


「君は…君は五人目なのか?なあ…ブレイヴゴールド」






かくして街の平和は守られた。


「どうしたんです先輩?元気ないですよー」


「……ほっとけ」


一人の羞恥心と引き換えに。


(もう二度とやらんぞ、ヒーローの真似事は)


妙なところで恥ずかしがる男、アマトウだった、





次回、野外授業



グライアス「くくく…、やつの改造魔獣は四天王最弱」


ヴォルダー「いや、そんなこと言ってももう俺達出番ないっぽいぞ?」


エルブラスト・ウォルクア「え?」

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