閑話「生徒たちは何を思う、子供たちとアマトウ」
次回、森のくまさんと書きましたがそこまで熊要素無かったですね。すみません
おはようございます。どうも、リリです。
アマトウさん達が来てから孤児院はとても賑やかになりました。今では体調の悪い子も居ません、アマトウさんの美味しい食事のおかげでしょう…本当に有り難いです。
それにしてもアマトウさんは不思議な方で、思い付きで色々な事します。庭にお風呂が欲しいと言い出したかと思えば古い物置を改造して本当にお風呂を作ってしまいました。生まれて初めてお風呂と言うものを利用しましたがとても気持ちよくてついつい長く浸かってしまいそうになり、アマトウがのぼせますよと注意をしてくれなければ倒れてしまうところでした。お風呂恐るべし。
屋台も軌道に乗り、出店する度に満員御礼でお客さんの勢いが凄いです。しかもアマトウさんが安くで材料を仕入れてくれるので儲けもびっくりするほどで、更にアマトウさんがほんのり甘くて柔らかいパンを作ったのもそれに拍車をかけています。もしかしたら本当にお店を出せるかもしれません。
そんなアマトウさんは今子供たちに童話を聞かせているようです。子供たちに紛れてユキちゃん達や生徒さんらしい人が混じってますけど……一体どんなお話しをしているのでしょう?
アマトウはゆっくりと口を開き、物語る。しかも、ハープなんて持ち出して
「これは昔、とある国で起きた種族と言う垣根を超えた愛の詩。その者は森を走っていた、彼の名はモリノーク……モリノーク・マサーン。彼は熊の獣人だった……その当時、ヒューマンは獣人と仲が悪く頻繁に戦争をしていたのです」
アマトウの話に皆聞き入る。アマトウはモリノークの悲惨な過去や生い立ちを語る。
「にーちゃ!もりのはどうなったの?」
「モリノークは森の中で一人の少女と出会う。モリノークは胸の内から憎悪が溢れかえる。気づいたときには少女の近くまで来ていた。しかし、モリノークは少女を見ると途端にその憎悪は消えてしまいました。……彼女は暴行を受けたかのように傷つき衰弱していたのです」
アマトウは語る、モリノークと少女は同じ境遇なのだ。そしてお互いに仲を深めていったと。しかし、その楽しい一時も長くは続かなかった……武装した盗賊が襲ってきたのだ。
「モリノークは叫びました、お嬢さんお逃げなさい。少女は涙を溢し走り去ります」
そして語られる戦い。武器を持たぬモリノークと武装した盗賊の激しい攻撃の応酬、話に呑まれ皆は息を飲む。
「木にもたれ掛かり、少女は嗚咽を溢しながらもう会えぬであろうモリノークを思い浮かべます。悲しみに身を切り裂かれたように倒れていると、背後から物音がしました。もうだめだ…少女は全てを諦めました」
「そ、それでどうなったでゴザル?」
「その声は優しく、暖かいものでした。少女が今日初めて貰ったあの暖かさです。お嬢さん 落とし物ですよ、少女は振り向くと勢いよくその胸に飛び込み抱き締めました。モリノークの手には大切にしていた貝のペンダントが握られていました。少女は感謝します、再びモリノークと会わせてくれてありがとうと。そして、二人は寄り添い何処かへと消えてしまいましたとさ……ってな感じでどうだ?即興で作ったんだが……って何で泣いてんだ?」
話を聞いていたものは皆、感動し涙を流す者も見受けられる。
(おかしいな、森のくまさんを異世界風に童話っぽくしただけなんだが…どこに感動要素があるんだ?)
「アマ兄、他のお話しはー?」
「そーだなー…、ロウ・ウラシマータの海中冒険記ってのを話そうか」
これも今思いついたんだけどな、浦島太郎を俺流にアレンジした話だ。カメがヒロインで良いだろう。
「また、ロウって名前の人ー?ロウ・キンタとは違う人なのー?」
「別人だよ。ロウってのはありきたりな名前なのさ」
再びハープを弾き始め、勇敢な者を称える詩を語り出す。
「よし、アマトウさんのお話を本にして売ろう」
どんな事でも儲けに繋げようとする程、リリが逞しく育ち始めたのをアマトウは知るよしもない。そして、その本はアマトウ物語としてベストセラーになるのもアマトウは知るよしもないのであった。
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「我慢なりませんわっ!!」
バァンッと机を叩き、ヒステリックな怒声が教室へ鳴り響いた。声の主は所謂金髪ロールのいかにもと言った風貌のお嬢様……名をエリシエーナと言う。
そのエリシエーナを麦色に近い黄金の髪を持つ少女、フェイがたしなめる。
「まぁまぁ、落ち着くであります」
「いいえ!これが落ち着いていられますか!おの野蛮な男ときたら毎日毎日泥臭い訓練ばかり…!…ってフェイ?聞いてますの……あら、それは最近巷を賑わかせているというプリンじゃなくて?」
先程からパンに何かを挟んだと思われるものを頬張っているフェイの机には、最近女子の間で持ちきりとなっている噂のプリンらしきものが置いてあった。
「フェイ、貴女お金がないと何時もあのとても料理とは呼べない形容しがたい物体を食堂に食べに行ってましたわよね?それがどうして入手困難と言われているプリンを持っていますの?」
そう、このフェイと言う少女は決して裕福ではない。実家は貴族だが一切の仕送りが無いため貧しい暮らしをしているのだ。
「先生から貰ったであります。なんでも作りすぎたからやる、とのことで」
「…その言い方ですとまるであの野蛮人がそのプリンを作っていると聞こえますわ」
「まるでもなにも実際先生が作っているでありますよ?私も手伝いを一回だけやったであります」
エリシエーナは衝撃を受けた。戦いばかり考えている野蛮人と思っていた男がこれを作っていた……?
「ん~♪うまいであります~」
ゴクリ、その美味しそうな香りにつられつい喉が鳴った。
「ね、ねえフェイ?ひとくーーー」
「あ、そろそろ時間であります。はむっ!ん、エリーどうかしたでありますか?」
あっという間にペロリと平らげてしまった。…うらやましい。
「い、いいえ!何でもありませんわ!」
(…アマトウ先生にお願いしたら売って頂けるかしら?)
数日後
エリシエーナは休日を満喫していた。
(あら、そう言えば例の屋台はこの辺りでしたわね)
丁度近くを通りかかり、ついでにその店を探してみたが一向に見当たらない。休店日だろうか?
「おや、エリーは何を…あぁプリンを買いに来たでありますな?」
「きゃっ!…もう、フェイ!いきなり背後から話しかけないで下さいませんこと?」
フェイによるともう少し先に屋台を開いているとのこと、案内されるがままに着いて行くとそこにはーー
「お、フェイにエリシエーナじゃねぇか。いらっしゃい」
先生がいた。前ほど嫌では有りませんがそれでも休日にまで会いたくはない。
「むむ…もしかして売り切れでありますか?」
「お前が来ると思って取っておいたぞ、ほれ」
やったー!とはしゃぐフェイ。
「ほら、エリシエーナも買うんだろ?俺の分なんだが売ってやるよ」
「あ、有り難うございます。…って安いですわね。デザートと言うくらいですからかなり高い値段だと思っていましたわ」
儲けが出るのかと心配になる。
「別に高級素材なわけでもなし、それに高くしたら気軽に買えないだろう?こんくらいで丁度近良いと思うんだけどな 」
まあ、先生の経営方針に部外者たる私が口を出す資格はありませんわね。プリンを一匙すくい、口元へ運びパクリと食べる。
「っ!美味しいですわ…これ」
口の中に濃厚な風味が広がる。
「へー…」
「? 私の顔に何か着いてますの?」
「いや、お前いつも怒ってるだろ?そういう可愛い顔もできんだなぁってさ」
「ーー!!」
「おっとエリー、大声は駄目でありますよ?」
何か言おうとしたエリシエーナの口元を塞ぐフェイ。何故か顔を赤面させている。
「はぁはぁ…わ、私としたことが少々取り乱してしまいましわ」
いきなりあんな事を言うとは、この男は女の敵かもしれませんわね、と一人内心呟く。
「そういや、今度プリンにバリエーションを増やすことにしたんでまた来いよ。ちなみに生クリームとかホイップをのせる予定だ」
それは是非とも食べたい。絶対にまた来よう。
「んふふー」
「…なんですの?」
「可愛い顔ーでありますー」
「ーーー!!」
こ、この!人をからかって!
「おっと怖いでありますな、寮まで追いかけっこでありますか?」
「この!待ちなさい!」
彼女らの姦しい一日は今日もせわしく過ぎていく。
次回、せまるズグムド帝国の影
アマトウ「変身っ」
ようやく鎧を着ます




