第21話「屋台と鬼教師」
やや短めです
「ソースよし、食材よし。…うん、大丈夫!忘れ物はないわね!」
「リリ姉ー、準備おわったよー?」
「よし、じゃあ行きましょうか!」
「「「おぉーっ!」」」
屋台を押しながら露店街へ向かいます。どうして私達が屋台を開くことになったのかと言えば、勿論アマトウさんが理由です。突然なんの脈絡もなくこう言いました。
「俺が作った料理とか屋台で売ったら儲かるんじゃないか?」
しかも何処からか屋台まで持ってきました。それに、トーカさんが木箱の中に氷の膜を張って【アイスボックス】なるものを作ってくれて食材が痛まないようにしてくれたんです。
ここまでしてもらった以上、絶対儲けてみせます!
「なんじゃこりゃあ!?このソースってのがこのサクサクしたので包まれた肉と相まって肉汁が!肉汁が!くぅ、うめぇ~!!」
「うぉ!この肉ホロホロと口のなかでほどける!!そしてこの肉からこぼれ落ちるこの甘みは…アルオーンか!そしてこの赤いソースの酸味!美味い…美味すぎる!!」
「素晴らしいわ!このプリン?とか言う御菓子!口の中でなめらかに溶けます…これは卵の風味かしら?とにかく素晴らしいですわ!」
大 盛 況 です
凄い、としか言いようがありません。なんと販売開始から僅か二時間で完売です。一人目のお客さんがウマイッて叫んだら興味を持った人がどんどん押し寄せてきてあっという間に完売しました。お昼頃だったのも関係してると思いますが、それでも凄い売れ行きでした。ハンバーガー、カツサンド、プリン、どれも大人気で自分に卸してくれ!ってお客さんもいましたし、これなら売り上げは予想以上に良さそうです。
「いっぱい売れたねー!」
「ばっか、アマトウ兄ちゃんから教えてもらったメシだぞ?売れてとーぜんだっつーの!」
嬉しそうにはしゃぐ子供たちを見ると今日の疲れも吹き飛んでしまいます。
「そうねー、アマトウさんにお礼言わなきゃ」
「「「はーい!」」」
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その頃、学園内実習場ではアマトウの地獄のようなしごきにより死屍累々となっていた。中にはアマトウに反抗して、
「うきーっ!もう、私我慢なりません!このような泥にまみれるような訓練等、私には相応しくありませんわ!」
「おう、それだけ叫べりゃ大丈夫だ。お前は特別に三分間耐久シールドバッシュな」
「…………!!」
と、更に地獄を見る羽目となった。だがアマトウにとってこれは生徒への愛情からなるものであり、そこに悪意や害意は存在しないのである。
「おいおい、そんなんじゃゴブリンとかと出会したら手も足も出んぞ?」
スッと手を挙げ息も絶え絶えに成りつつもその少女ーーハラペ娘改めフェイーーは口を返す。
「お、お言葉ですが先生。私達はこの近域の魔物との交戦及び討伐経験もあるであります!ゴブリンに引けなど決して……」
「ゴブリンはパリィも使えるし盾を使うものも多い、おまけに軽装な奴なら一撃で殺されかねないほど力も強い。そりゃ魔法で圧倒すりゃ簡単かもしれんがまずそんな場面は少ないだろう、殆ど森のなかでバッタリとか奇襲受けたりとかだしな。向こうは詠唱なんて待ってくれないし、それに生半可な魔法なら構わず突っ込んで来るだろう。そうなったら接近戦しかない、つまりいかに奴らの攻撃を防ぎ倒すかが問題だ。あ、これ俺の実体験な。だからこそ、パリィとかガードの訓練が必要なんだよ」
「……はい」
空気が重く感じる。
「…休憩だ。全員少し休んでろ」
俺は実習場から出ると水を飲み一息つく。
厳し過ぎるのだろうか、なんかこう想像していたの違うな。やっぱりもう少しゆるめの訓練にするか?
「おや、アマトウ先生じゃないですか。何をしておいでで?」
モブ先生…。俺はモブ先生に悩みを打ち明けた。
「ふむふむ成る程。私的にはそれで良いと思いますよ?だってそれが私達教師の本分ですしね。もう、こうっ!ガツーンとぶつかっていけば良いんですよ!あははは、その方が生徒の為になると思いますしね」
悩んでたのが馬鹿みたいだ。そうだよな、やはり生徒には全力でぶつからねぇとな!っし、そうと決まれば休憩が終わり次第訓練再開だ!
バタバタと実習場に入っていくアマトウを見送りながらモブ先生は、
「なーんてこと言っちゃいましたけど生徒が死ななければ良いのですが……ははは」
と呟かざる負えないのであった。
生徒に組手をさせているその横で、俺はひたすら抜き手の練習をしている。ノエルから聞いた話なのだが、基本的にNPC達はその技を練習することによって修得しているらしい。つまり、その方法でスキルを取得すればポイントを使わずにすむかもしれないと言うわけだ。
で、ひたすらやり続けたが…
「うん、無理だこれ。普通に取得した方が良いわ。よくよく考えれば職業レベルが上がる度にポイント貰えるんだから、節約する意味とかあんまりないしな」
そろそろ時間か、と生徒の方を向き集合を呼び掛けようとした時フェイが目に入った。
(お、フェイの奴ガードもパリィも上達してるな。この様子ならゴブリン単独討伐も可能か?)
生徒の成長を内心喜びながら終礼を進め解散した。そのまま職員室へと向かい、明日のスケジュールを確認する。
「んー見た感じ皆上達してるし、そろそろ野外実習を組むか?」
すると後ろから声を掛けられた、モブ先生の声だ。俺はゆっくりと振り向いた。
「アマトウ先生は熱心ですねー。そう言えばもうすぐ学園トーナメントの時期なので選抜が忙しくなりますねぇ」
学園トーナメント?
「なんです?その楽しそうな学園トーナメントってやつは」
「まぁ、単に言えばグルドラード内の学園最強を決めるものですね。因みにうちは前回2位です」
うぉ、すげぇ楽しそうだな。あーでも教師だから関係ないか。教師であるこの身を激しく呪った。
「因みに教師のトーナメントもありますよ」
「っしゃあ!!モブ先生、俺は実習メニューを練るため帰りますんで、それじゃ!!」
ひゃっほい!と内心どころか実際にスキップで孤児院へ帰った。…後から考えるとかなり恥ずかしい。
「全部売れましたー!」
「…マジで?」
孤児院に帰り早速料理の手伝いをしていると、リリさんから完売したとの報告を受けた。正直かなり驚いている。やはり手頃な値段設定が良かったのか?
「それは良かった。その内お店でも開きますか、あはは」
「お店…ですか?で、でも、それ良いですね!うん
、良いですそれ!」
なにやらうっとりした様子のリリさん。女の子ってお店に憧れる人多そうだし、リリさんもそうなのかもしれない。
「じゃあ空き家を借りてお店を開きましょうか。こんど不動産屋に行ってきますね」
「え?あ、その、えと…よろしくお願いします」
そうと決まれば色々準備しとかないとな。
…おかしいな、いつもならデザートを作ってたら「はいはーい!拙者が味見してしんぜようでゴザル!」とか馬鹿言ってくるのに。
「そう言えばユキカゲが居ませんね」
「ああ、ユキちゃんなら外で子供たちにスキルを教えてましたよ?なんでも皆がパリィをマスターしたので次は壁走りでゴザルって意気込んでましたね」
……そのうち子供たちがユキカゲ並になりそうだな。てかパリィをマスターってうちの生徒より強くないか?意外とユキカゲは教師に向いてるのかもな。
ってかユキちゃんって…
お、噂をすればユキカゲの声だ。
「むむっ!この匂いは……味見は拙者に任せるでゴザル~!」
「「「ござるー!」」」
「ごじゃうー」
うわ、皆真似してんじゃねぇか!ゴザルが移ったらどうすんだ。…まあ可愛いから良いけどさ。
「先輩帰りましたよー」
「おや、この匂いはデザートか?さあアマト、早く食べようじゃないか!」
「ふっふっふーん。今日もアマトウさんの美味しいご飯ー♪」
「へいへい、手ぇ洗ってからな」
明日はどう生徒を訓練してやろうか、ユキカゲに密かな対抗心を燃やしつつ皿を並べるのだった。
次回、森のくまさん
トーカ「私達影薄くないですか?」
シロ「…」
ノエル「たまには私メインの話をだな…」
ユキカゲ「そうでゴザルか?」
「「「ギロッ」」」
ユキカゲ「ひっ」」




