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Artemis Online   作者: 氷結トマト
第一章「箱庭の中」
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第18話「グエルドラード到着」

不定期更新で申し訳ありません

次こそは早めにっ


パチッ


新たに薪をくべると赤熱していた薪が火の粉を散らした。


「うっし、そろそろ頃合いかな?」


視線の先、焚き火の周りにあるものは程よく焼けた肉だ。串が刺さっている箇所から滴る肉汁は薪の上に落ちジュッと音をたてる。辺りに漂う香りは無慈悲なほどに食欲を掻き立て、腹の虫はそれを早く寄越せと言わんばかりに声を荒げ唸る。


「ほら、焼けたぞ。取れ立ての山菜もあるしパンに挟んでガブッと食らいつきな。…っとノエルはこう言う飯は大丈夫か?」


俺のイメージだと騎士は高貴な印象が強いからな、雑な料理に慣れてないかもしれんし一応聞いとくか。


「ああ、問題ない。野営等でまともな食事はとれんからな、兎の丸焼き等は日常茶飯事だ」


なら大丈夫か。全員に飯を行き渡るのを確認し早速頂く。勢いよくかぶりつき咀嚼すると口のなかで肉の旨味と山菜の苦味と僅かな甘味が程よく解け合い、そこにやや固めのパンの香ばしさが加わり調和している。


なるほど、これは美味い。ちゃんとした料理屋の味には敵わないがこれはこれで美味いな。屋台で売れば儲かるんじゃないかとふと考えてしまう程には美味いと感じる味だ。これでちゃんとした調味料でもあれば更に良し。


周りを見れば皆美味しそうに食べている。


「うわー!アマトウ殿は料理の腕も達者でゴザルな!これは美味いでゴザル!」


よせやい、照れんだろうが。味付けも殆どしてねぇから素材が良いだけだろうよ。それにしても相変わらずマスク越しに食べてやがる。どうなってんだあのマスクは?今度剥ぎ取ってやろう。


「ほわぁ、パンにお肉を挟むだけでこんなに美味しくなるんですね!」


「ふふーん!まだまだ先輩の腕はこんなものではありませんよ!特に甘味ともなればそれはもう!」


「ほう、確か美味いな。是非ともその甘味とやらも食べてみたいものだ」


はいはい、機会があればな。



「ところでさ、これから行く国ってどんな所なんだ?」


「そうだな…一言で表現するならば学校が充実した国だな」


ノエル曰く。その国の名はグエルドラード、昔から敵国であるズグムド帝国との小競り合いが多く、そのためか人材の育成に力を入れてるのだとか。んで、自然と学校とか人材を育成する機関が発展したんだと。それが現グエルドラードの学校の充実っぷりに繋がったと言うわけだ。


成る程成る程、それは楽しみだ。戦闘に役立つなら学校に入ってみるのもありかもな。






それから何日も馬車に揺られようやく目的地に到着した。途中襲いかかってきた魔物や盗賊を倒したり、他の同乗者の人とかと友情が芽生えたりしたがまあそこは省こう。


「尻がいてぇ…」


ジンジンと痺れたように痛む尻を擦る。


「それはいけません!ささっ先輩、宿屋で私が診てあげますから急ぎましょう!!」


ふんすふんすと鼻息を荒げたトーカが俺の腕を宿屋へ連れて行こうと引っ張る。


宿屋に行くのは賛成だがまだ早い。冒険者ギルドとかで良さげな宿屋を紹介してもらった方が良いだろうし。後、装備にガタが来てるからメンテに出したい、それに新しい装備とか欲しいしな。先に店に行きたいところだ。


「んー、俺は店回りでトーカとノエルとシロさんが冒険者ギルドで情報収集、ユキカゲは街を散策っと。んじゃ三時間後に冒険者ギルド付近で待ち合わせってことで良いか?」


皆はこくりと頷く。三時間後の待ち合わせまでに用事を終わらせるべく足早に解散した。





防具屋の店主に鎧を見せると渋い顔で舌打ちをされた。別に馬鹿にされたわけではなく、店主の腕だと完全な修復は厳しいらしく己の不甲斐なさに舌打ちをしたんだと。


「すまねぇがこいつは無理だな。このまま使えばこの腕のところから先にいかれちまう。……こりゃ作った奴に一部作り直してもらわねぇと駄目だな。」


「そこまでのダメージか……。つってもなぁ、イシュテスまでは糞遠いし…どうしたもんか。 あー、とりあえずおっさんのオススメの一品とかない?しばらくはそれで凌ぐわ」


使えないものに執着はしない主義なんでな。とりあえずは代わりのもんで我満するしかねぇな。


「…その鎧並の性能つったら、ミスリル製の奴じゃねぇと厳しいかもな」


「お、じゃあそれでいいや!そのミスリルーー」


「悪いがここには無い。どっかの工房でオーダーメイドでもしてもらわん限り、この辺りじゃ手に入れるのは難しいだろうな」


えー、それは厳しいな。NPC にオーダーメイドなんかしたらぼったくられそうで怖いんだけど。


「ん、なぁ。その奥の金ぴかの全身鎧って売り物か?」


「ああ、こいつか。こいつは売り物だがお前さんの鎧に比べれば数段落ちるぞ?」


いやいや、性能なんて二の次だろ!それにしても、あの鎧カッコイイー!!なにあれ、なんか金ぴかも相まってヒーローみたいじゃね?腰に変身ベルトっぽいのついてるし、なんか良いなこれ。


「こいつは名工ボルクド・グラップハンズの工房製でな?完成度は高いんだがとある実験的な試みで作られた面が大きくてな。そこまで高い性能では無い。 でだ、その実験ってのは音声による着脱機能と魔法による加速機能の付与だったらしい。つっても結局実験は上手くいかなくてな、着脱機能のみが実装できたんだと。まあ失敗作と言っても普通の鎧として見ても中々の性能だからな、こうして店で売ってるわけだ」


へー上手くいってりゃ俺のロストパイルブースターみたいなのがホイホイできる鎧になってたのか。ちょいと残念だ、夢工房で何とかしてくれないだろうか?今度頼んでみるか。



ブレイヴましき黄金鎧ゴールド】(DEF+ 39、装備制限全身鎧、音声着脱機能、追加スキル【ヒーローディレクション】)


お、追加スキルだ。DEFもそんなに低くないしお買い得商品じゃね?





で買ったわけだが。


『装着時の言葉を登録します。音声入力が完了したら最後に入力完了と言ってください。では音声入力をどうぞ』


「変身。入力完了」


『確認しました。変身で間違いはありませんか?』


「問題ない」


『では最後に装備を外す際の言葉をどうぞ』


「……キャストオフ。入力完了」


『確認しました。キャストオフで間違いはありませんか?』


「もーまんたい」


これで登録完了だ。試しに変身っと叫ぶと体が光に包まれ、魔方陣が展開された。そして次々と鎧が装着されていく。


「成る程、これは素晴らしいな」


ついでにヒーローディレクションの効果を確認する。


【ヒーローディレクション】:派手な演出になる。



なんじゃそりゃ。しかも常時発動って、よくわからんスキルだな。


「…なにが起きるか分からんし街中では外しとくか。街中では適当なレザー装備で良いだろう」


安いレザー装備を購入して店を後にした。





集合まで時間があるのでギルドの横にある練習場に来ている。


「自前の魔法でロストパイルでやったあの加速ができればなぁ…」


さっきから自作魔法とやらに挑戦しているが、全然上手くいかん。どうやって魔法を作れば良いのか皆目検討もつかんぞ。


「手から火を出すのは簡単なんだがなぁ、背中とか足ってのは中々ムズいぞ」


無理なのかなー、重装戦士が炎を噴射しながら突っ込むてのは結構カッコイイと思ったんだけどなぁ。


自作魔法について頭を悩ませていると後ろから声をかけられた。なんかいかにもモブッて感じだな。


「魔法についてお悩みですか?」


「はぁ、まーそうですけど…」


「っ!それは丁度良い、魔法や武術等にお悩みでしたら是非とも我が学園デトリグラシアへ入学することをお勧めしますよ!はい、これが学園までの道とパンフレットです。」


まてまてまて!話が見えん!何いきなり勧誘してるわけ?


「え、ちょ…」


「ではでは、貴方のような才溢れる方のご入学を待っておりますよー!」


ドタバタと立ち去っていくモブさん。


「いや、普通にアドバイスして欲しかったんだけどなー…。ま、いっか。余裕があれば学校に行ってみようかと思ってたし」


学校に行けば自作魔法のヒントが見つかるかもしれないしな。メニューの時計を確認すると待ち合わせの時間が近い、そろそろ行くとしよう。


パンフレットを読みつつ練習場を後にした。






冒険者ギルド前に向かうと既にトーカ達が集まっていた。うわ、女子を待たすとか紳士に許されざる行為じゃね?…もう少し早めに来るべきだったかな。


「悪い、待たせたな。それでそっちの方はどうだった?何か情報は掴めたか?」


「あー…特にこれといった情報はありませんね。守護者や魔物の活発化も確認されていないようですし、しばらく様子見ですねー。 先にダンジョン攻略して守護者を叩きます?」


阿呆、シロさんとノエルが居るのにそんな無茶できるか!…でもダンジョン攻略には興味がある。なんだかんだでダンジョンに行ったこと無いし、前々から興味はあったんだよなー。


「ふむ、ダンジョンか…。腕試しには丁度良いな」


ちょっ!ノエルさん何やる気満々になってんの、少しは自分を大切にしてくださいよ!……まあ腕相撲で俺を宙に舞わすような人だから心配ないとは思うけど。


「あ、でも待ってくれ。ダンジョンって守護者倒さないと入れないんじゃなかったか?」


「…そう言えばそうでしたね。 仕方がありません、適当に依頼でもこなして守護者が出るのを待ちましょうか」


後手にしか回れないのがもどかしいぜ。


「そういや宿はどうだった?」


「…すみません。この時期はどこも満杯だそうです」


もしかしてあれか、入学シーズンで他国の入学希望者が押し寄せてるってやつ。


「はいはい!それなら拙者に考えがゴザルよ!」


どうやらユキカゲが泊まれそうな所に心当たりがあるようだ。街に来てまで野宿とか最悪だ、ユキカゲの機転に感謝しつつホッと胸を撫で下ろす。


これ以上固い地面で寝てたら痔になるところだった…。俺の尻のライフはゼロだ。



辺りも薄暗くなってきた。ユキカゲに案内されるがまま路地裏へと抜けて行くと、そこには少々年季のはいった家が建っていた。


「…宿には見えんが、ここは?」


「孤児院でゴザル。先程色々な縁があってここの者と仲良くなったでゴザル、その際に宿屋に困ったら泊めてくれると約束したでゴザルよ」


へー、孤児院なのか。


コンコンと扉を叩き中へ呼び掛ける。


「たのもー!」


ガチャリと音をたて扉が開く。中から現れたのは同い年くらいの少女だ。服装はやや着古した感が強いがそれでも彼女の可愛らしさには曇り1つ無い。うむ、美少女だな。流石ユキカゲだ、こいつ何かイベントにでも遭遇したんじゃないか?襲われてたこの娘を助けるテンプレ的なやつとか。


「ユキカゲさん!丁度今、食事の準備をしてたんですよ。そちらの皆さんもどうぞ入ってください!」


中に入ると子供達の賑やかな声が聞こえてくる。奥の部屋へ足を踏み入れるとそこには数十名の子供が席を囲んでいた。


…痩せてるな。孤児院と聞いて予想はしていたがやはり痩せ細った子供を見ると胸が苦しくなる。これだけ大勢の子供達を養っているんだ、当然食糧も足りないだろう。そこへ俺達も入るとなるとこの子達の取り分は更に減ってしまう、……それは駄目だ。子供はもっと沢山メシを食って元気に走り回るべきだ、ならばどうする?


決まっている。俺のアイテムポーチ内にはまだまだ消費しきれないほどの肉があるんだ、この子達に食べさせてやろう。肉を食えば力も沸くってもんだ。


一人の子供が俺に近づく。


「お兄さんだれ?」


「俺かい?俺はアマトウ、ここに泊まることになったんだ。よろしくな」


「うん、よろしく!」


俺は先程の少女へ振り向く。


「泊めて貰うお礼に料理のお手伝いをしますよ。どうやら皆お腹が空いているようですし、ちゃちゃっと作りましょうか」


突然何を言っているんだこの人は、と困惑した様子の少女の手を引き調理場らしき場所へ向かう。


アイテムポーチから肉と小麦粉、残っている山菜、パンを取り出す。そして今回の決め手はこれだ! ジャジャーン!植物からとった油ー!


馬車旅の最中に見つけた植物の種をドライブリーゼで乾燥。その種を煎ったりすりつぶしたり、試行錯誤の末に出来た油だ。実はこの世界食用油が何故か売られていない。因みにランタンとかにはオイルフィッシュと言う魔物からとれる魚油を使用するのが一般的らしい。全身油の塊みたいな魔物でファイアボール一発で燃えるってツリフのおばちゃんが言ってた。


「あの…一体何を?」


「揚げ物を作ります!」


「揚げ物?」


きょとんと首を傾げる少女。成る程、この様子だとやはり油で揚げる料理は知られていないようだ。


「故郷の料理法の1つですよ」


アイテムポーチから鍋を取り出してその中へ油を注ぐ。んートーカじゃないが良い匂いだ。菜種にも似たまろやかな香りが鼻をすーっと通り抜ける。


鍋を火にかけ、油の温度が高くなるのを待っている間に下ごしらえをする。まず肉を包丁の背で叩き柔らかくする。筋を切り離すイメージでドスドス叩く。因みに包丁はユキカゲの私物だ、この世界は包丁ではなくナイフを使うみたいで売ってないんだよね。日本人としてはやっぱり包丁が使いたいのが本音である。


お次はパンを細かく刻みドライブリーゼで乾燥させてパン粉の完成だ。ドライブリーゼ便利すぎじゃね?


しかしここで重大なことに気づく。


「た、卵が無い…」


糞!なんてこった!卵がないとパン粉が上手く着かない…それ以前にカツにならない。


その時、救世主現る


「拙者、菓子を作って貰おうと思い卵を購入していたでゴザルよ!これを使うでゴザル!」


ナイスだユキカゲ!てかその菓子、俺に作らせようとしてたな?まぁこの際それは置いておくとして。


で肉に小麦粉をまぶし、卵に浸す。でパン粉をつけたら…油へそぉいっ!!


次から次へと油へ投入!!


黄金の水面は勢いよく泡立ち、その衣を狐色へと染め上げて行く。その者黄金の水面みなもを漂い、愛に飢えし子羊を満たし救うであろう。


頃合いを計りカツを網の上に乗せる。染み込んでいる余分な油を落とし、ザクッと包丁をいれ中まで火が通っているか確認する。


「っし大丈夫だな。後はパンに山菜と一緒に挟んで……ほいっカツサンドっぽいの出来上がりっと!」


これでとんかつソースでもあれば完璧なんだが……今度作ってみるか。



「わぁ!すごいすごい!こんな美味しそうな料理初めてです!」


いやーそれほどでもないっすよー!もっと誉めてもいいっすよ!


「アマトウさんから頂いたお肉のおかげでいつもよりスープも美味しく出来ましたし、本当にありがとうございます!」


「いえいえ、泊めて貰うささやかなお礼ですよ。さ、皆待っていることですし料理を運びましょうか」


席へ食事を持っていくと子供は目を輝かせ大興奮の様子だ。一心不乱にかぶり付き、眩い笑顔でそれをモグモグと頬張りながら俺に「ありがとう」と言う。こちらこそ、その笑顔見せてもらいありがとうだよ。


「おいしい!もしかしてお兄さんは料理人なの?」


「ハハハ!違う違う、これでも冒険者だよ」


「じゃあ冒険者は料理が上手なんだ!僕も冒険者になりたいなー」


「おいおい、冒険者は魔物を倒したりするだけで

料理は関係ないからね?」


そうなんだー、と残念そうに呟く。危ない危ない、こんな可愛い子供が冒険者になってしまうところだった。



満腹感により眠気が一気に押し寄せたのか、子供達がうつらうつらと船をこぎ始めたので少女が寝かせつけに行った。俺達も眠くなってきたので食器を洗った後、言われていた部屋で眠りについた。

次回、試験を受ける


トーカ「先輩くんかくんか!」


シロ「トーカさん大胆ですぅ…///」

※この世界の犬獣人にとって異性へのくんかくんかは求愛を意味します。


アマトウ「zzz…」




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