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Artemis Online   作者: 氷結トマト
第一章「箱庭の中」
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第16話「パルン~大樹のある町7~」

パチッ…


宵闇の中、弾けるような音が響く。


「っと、そろそろ足しとかねぇと…」


火を絶やすまいと追加の薪をくべると、再び音が響いた。


ジ…ジ…ブスブス…パチッ


「あちゃーこいつまだ生木かよ」


今の音から察するに生木だろう。生木は水分が多く燃やすのに適さない、本来なら風通しが良い場所で天日干しにしてから薪にするんだが……こんな状況では仕方がないだろう。


「アマトウ殿。ドライブリーゼを使っては如何か?」


マゴロクが素晴らしい提案をする。因みにマゴロク達は辺りの掃討を終えて俺と絶賛野営中だ。


「その手があったか!ナイスだマゴロク!」


未使用の薪を並べドライブリーゼで乾かしていく。それにしても本当に便利な魔法だな。意外なところでも大活躍じゃないか。



「…なぁマゴロク。このゲームに具体的なクリア目標ってあるのか?俺はただ単にボスっぽいの倒したり、イベントっぽいのこなしたりすりゃやがてはクリア…って思ってるんだが実際はどうなんだ?」


これだけはどうしても知りたい。これからの行動指針に大きく関わってくる、マゴロクならば知っているはずだ。別にユキカゲでも良かったが、日頃のあいつを見てると今一頼りないからな。


「…このAOは非常に自由度の高いゲームで御座る。いやはや高過ぎると申すべきか。感覚も現実と大差無くプレイスタイルも多種多様、ただの村人にもなれるで御座る。故にあのAIが申したクリアの意味は複数考えられよう…、一概にクリアと言っても正確には何をすれば良いのか分からないのが現状で御座る…」


マジか、クリア条件が分からないってヤバいだろう。こうなったら手当たり次第にイベントをクリアするしかないな…。


「ラスボスとか居ねぇのか?」


「この世界のお伽噺に魔王が出る故に、その魔王がラスボスかもで御座るな。若しくはあのAIが、で御座る」


結局何もかも手探り状態か…楽観視できる状況じゃねえな。


「アマトウ殿、もう休まれるが良いで御座ろう。拙者らが替わりで見張る故に心配なさるな」



ここはマゴロクの好意に応えよう。実際、ヘトヘトだしな。


目を閉じると瞬く間に睡魔に襲われる。


…明日も気合い入れて頑張るぞ。


…ぐぅ






ーーーーーーーーーーーーーーー




「アマトウ殿!起きられよ、一大事に御座る!!」


ぬぐぉ…な、何だよマゴロク。朝からデカイ声は勘弁してくれ。


「ふぁ…何かあったのか~?」


「ロックドラゴンを確認したで御座る!」


っっ!!マジか、こりゃ寝ぼけてる場合じゃねぇな!


「よし、案内してくれ!仕掛けるぞ!」


全員一斉に走り出す。


…って!お前ら足速すぎだろ!俺の鈍足じゃ追いつけんわ!


視界から見失わない様に追従するので精一杯だ。…今度からAGI振ろうかなー。





「よっしゃ見つけたぞ!!」


ロックドラゴンを見つけた俺達は、我先へと距離を詰めて行く。


マゴロク達は円月輪を投擲しロックドラゴンを牽制した。


キィン!


しかし分厚い巨石のような鱗がそれを弾く。表面に軽い傷が出来た程度のダメージしか与えられない。


俺も追いつき盾で殴るが効果なし。むしろ盾がやられそうだ。


くそっ!こんだけ硬いと闇雲に攻撃したところで意味がねぇぞ!!


「マゴロク!風の円月輪をぶちこんでくれ!!一点集中攻撃だ!」


「承知!風遁【ウィンドチャクラム】ッ!!」


風の刃が岩の鎧を削り裂く。流石に痛みを感じたのか、ロックドラゴンが猛々しい咆哮を放ち、巨木さえ一撃で薙ぎ倒しかねない程の尾撃を振るう。


ブゥンッ


「【シール、っが!!」


こいつっ!尻尾の速度だけはめっちゃ速いぞ!!


ズザザザッッ!


吹き飛ばされつつ体勢を立て直す。HPに目を向けると四割近く削られていた。


っちょ、ダメージたけえぇぇぇっっ!!え、なにこれ?赤ゴブのチャージ並みの威力なんだけど!ただの尻尾ぺちーんでこの威力っておかしいだろう!!


ポーションを飲みつつ皆を見ると半数近くが光の粒子となり散っていた。生き残った奴等はどうやら空中へ回避したようだ。


「一撃とは…!流石は竜の名を冠ざすだけはあるで御座るな!!」


「しかし、尻尾以外の動きは鈍い…やりようは幾らでもあるさ!せぇいっ!【シールドチャージ】!!」


抉れた箇所目掛けシールドチャージを放つ。


バゴッ


攻撃された箇所が砕けた、これでこの部位を狙えばダメージが通りやすくなるはずだ。



マゴロク達と連携し順調にダメージを与えていく。尾撃にさえ気をつければ問題なく倒せるだろう。


「や、やっと一割かよ…」


ブゥンッッ!


再び尾撃が俺達を襲う。


「余裕っ!【ガード】ッ!!」


ガァンッ!


問題なく防いだ、この程度ならよく見てガードすれば対した驚異ではない。


しかし、その慢心が俺の判断を鈍らせた。尾撃の後にロックドラゴンが俺を噛み殺さんと首を向けていたことに。


「ゴガアアァァァァッッッ!!」


「っっ!!が、【ガー…」


バキィッ…ミシミシッ…


盾が…砕けた。いや、それだけじゃない…奴は俺の右腕に食らいついていた。鎧が、腕部が悲鳴をあげる。


こいつ!!食いちぎる気かよ!


俺は【神穿チ星ヲ抉ル者弐式】を取り出し奴の顔へ突き立てる。


「こなくそっ!放しやがれ!!」


ガンッ! ガンッ! ガンッ!


しかし全く効かない。俺はSTRに振らなかったことを後悔した。


ミシミシッ…バギンッ!!


その時、腕部が砕けた。


「うぐあああああああぁぁぁっっ!!」


「はっ!アマトウ殿!!」


腕が食いちぎられる、激痛により目に涙が滲む。


ブンッ


視界が歪む、辺りの風景が加速した。奴が首を横に振ったのだ、途端俺の体は宙に舞った。しめた、俺を放しやがった。


ズドンッ


体が木に打ち付けられる。肺の空気全てが吐き出されそうな衝撃が体を突き抜ける。


「うげっ!うぐ…いってぇ……」


痛みを堪えつつロックドラゴンへ目を向ける。奴は俺に興味が無いのか、ひたすらツリフへ向かい進行する。


なんであいつツリフへ向かってるんだ?何かあるのか、それともそう言うイベントなのか…?


マゴロクが此方へ近寄って、俺を気遣う。


「アマトウ殿!大丈夫で御座るか!?」


「心配ないさ、俺の事は良いから奴を追ってくれ…」


「承った!」


再びロックドラゴンへ向かうマゴロク。


さてと、俺も回復してさっさと合流しようか。しかし、ポーション取り出そうとしたとき異変に気付いた。


「あれ?腕が上がらん…」


ウィンドウを操作するために右腕を上げようとするが、全く腕が上がらない。疑問に思いつつ右腕を見ると…



腕がなかった。


「うえぇぇぇっ!?腕がねえぇぇっ!!」


え、嘘だろ。だって痛みしなかったぜ?あ、意識するとなんかじわじわ痛くなってきた。ってか痛い。


「いぎぎ…出血もヤバいし、さっさと回復しよう…」


へん!トロールに潰される痛みに比べりゃ屁でもねぇぜ!!


…ぐすっ


左腕で操作しポーションを取り出し、グビッと一気飲みをする。


「よし、HP全快!…って腕生えてねぇ!!え、え、何で?回復したら腕生えるんじゃねぇの!?」


ステータスを確認すると状態に【右腕欠損】と表示されていた。


欠損はポーションで回復しないのか?気になるので掲示板で確認する。


「ふむふむ、欠損を治すには条件があるのか…」


まず、一度死んで復活する方法。次に欠損した部位をくっつけてポーションをかける方法。最後は欠損部が原形が無くなるほど損傷していれば、ポーションを使用するだけで生えるらしい。


つまり、俺の腕が原形を留めた状態だから生えないってことか。…うわぁ。


「武器変更、【赫炎ノ楯】」


とりあえず左手にはこいつを装備するか、うわー片腕ないとバランスとりづれぇ…


頼りない足取りでロックドラゴンへ向かい走り出す。


「走りづれえぇぇぇっっ!!」


片腕がないって大変だな…。


「ん?なんだありゃ」


彼方に土煙が見えた。






ーーーーーーーーーーーーーーー

〈シロ視点〉



ただいまロックドラゴン討伐に向かっている途中です。加護者の件等をギルド長に報告して、なんとか早めに出発出来ないか相談してしつこく粘った結果、一日早くの出発になりました。


それに何と言っても、他の加護者の方達が応援に駆けつけてくれたのです。えーと確かリーダーの方はアクイラさんと言っていました。


「ねぇねぇシロちゃーん、俺とお付き合いしようぜ!無論、槍的な意味でww 」


この軟派な方はやーーや何でしたっけ?あれ、わすれちゃいました。むー…皆さんは槍使いと呼んでいるので槍使いさんで良いでしょう。


「私、軟派な方嫌いです!ふんっ」


「うひひwお、ツンデレかなw ご馳走さまですww 」


ふえぇ…何か怖いです。


「まったく…あんまりNPCの娘を怖がらせないでよ。それが原因で僕たちのゲームクリアに支障がでたら責任とれるの?あ?燃やし尽くすぞ、ねぇ?」


この方は、ひーー…ひ何でしたっけ?あれー思い出せません。とりあえず皆さんは火魔法使いと呼ぶので火魔さんで良いでしょう。


加護者と言っても色んな方が居るみたいです。


「仕方がねぇだろぉが、何かトーカに似てるから気になるんだからよ。ねーw シーロちゃーんww 」


むむむ…何か馬鹿にされた気分です。何故かは分かりませんが。んー、悪い人ではないみたいですけど…やっぱり無理です。生理的に。


「槍使いさんは生理的に無理ですぅー」


「えっ…」


槍使いさんが固まりました。


「あら、駄目ですよシロちゃん。男性はその言葉に弱いんです、特にその男はね」


この方はイグサさんです。アマトウさんと同じ綺麗な黒髪の女性で、長剣を腰に携えています。体型は……す、スレンダーな方です。


「…ひっ、ち、ちがうんだよゆりちゃん…。…や、やめてよ、そんなめでみないでよぉ…」


槍使いさんの様子がおかしいです。昔、女性と何かあったのでしょうか?言葉から察するにユリと言う方が原因みたいですが。


「あ、あの…ご、ごめんなさい。そんなつも…」


「…ち、ちがうんだよぉ…こ、このパンツは…」


「………」


どうやら自業自得のようです。その状況が容易に想像できます。


「心配して損しました…」


「こう言う男なんですよ。昔からね」


昔から?幼馴染みなのでしょうか?


「話に割り込んですまんが、アマトウは此方でどんなクエストをしていたか教えてくれないか?」


この長身の方はアクイラさん、イグサさんと同じチームのリーダーさんです。長鎚をブンブン振り回す凄い人で、この長身でドワーフらしいです。


「アマトウさんは凄いんですよ!こう、盾でゴブリンを吹き飛ばしてこの辺りの巣を殲滅したんです!ズガガーンって感じで!」


鼻息荒く、私はあの興奮を語ります。


でもアクイラさんが手で止めました。


「待て、……森から何か来るぞ」


私は耳を澄まし、辺りの音を聞き分けます。


…ズシン…ズシン…


確かに何か近づいています。森の木々が揺れているのがここからでも見えます。


「この音…ロックドラゴンの可能性が高いです!」


「総員戦闘準備っ!後衛部隊は詠唱を開始せよ!!」


森から人影が飛び出し、続いて巨大な竜が姿を表した。


あの人影は、もしかしてアマトウさんでしょうか?


…いえ違いますね。アマトウさんは真っ赤な鎧を着ています。あの方は確かーーそうマゴロクさんです。


「よぉマゴロクー!他の奴等はー!?」


槍使いさんが呼び掛けます。


「孫六隊は拙者を残して全滅で御座るー!!」


「っっ!!孫六隊がかよ…ってぇことはあの図体でかなり速い攻撃でもすんのか?」


前衛部隊が一斉に攻撃を始める。マゴロクさんが注意を施したので、ロックドラゴンの尻尾に近寄らないように気をつけます。


「せい!とぉあ!ふんっ!かーらーの【抉り突き】ぃ!!」


「はははは!!僕の新作魔法を喰らえ!ファイアボール50連発の多重魔法【ファイアレイン】!!」


す、すごい気迫です。槍使いさん…本当に強かったんですね。火魔さんも凄い魔法を使っています、ファイアボールが雨のように降り注ぎました。


私だって負けていられません!詠唱を終えると私はロックドラゴン目掛け詰め寄ります。


「狙うはその目!【ファイアスマッシュ】!!」


炎を纏った右手を左目に突っ込み、爆発させます。


「グオオアァァァッ!!!!」


流石のロックドラゴンでもこれは効くはずです。目は生物共通の弱点でもありますからね。


「うはww シロちゃんエグいねぇwww 」


あれ?ロックドラゴン口元に何かあります…なんでしょう。


「勝つためで……す…」


私は見てしまいました。ロックドラゴンの歯茎からぶら下がる赤い腕を。


え、どうして。なんであそこにアマトウさんの腕がぶら下がってるのでしょう?見間違いではありません、だってあの赤いガントレットはアマトウさんのです。


まさか、そんな、でも、つまり…アマトウさんが喰われた?


「…許さない!」


私はファイアスマッシュを何度も何度も叩きつけます。


「シロちゃん!落ち着け、死にてぇのか!?」


「あああああっっ!!」


アマトウさんは死なない、でも…それでもアマトウさんを食べたこいつは許せない。


何も聞こえない。


聞こえるのは私が魔法を放つ音だけ。


「シロちゃん!危ない!」


怒り狂ったロックドラゴンの牙が私を喰い殺さんと迫る。


眼前に色濃い死が迫り来る。


死を覚悟したその時。


「【ハルバードブーメラン】ッ!!」


ズガァンッ!


凛とた女性の声が響くと同時に、ロックドラゴンの頭が横へ吹き飛ばされた。


そして、引っ掛かっていたアマトウさんの腕も飛んでいきます。


「おっと!こいつは返してもらうぜ、糞ドラゴン!!」


そこにはアマトウさんが居ました。良かった…食べられてなかったんですね。ふふ、それにしてもそれが本当の喋り方ですか、そっちの方が男らしくて良いですよ。


「アマトウさん!!」


「うげっ…どうした…じゃなくて、どうしまし…ってあぁ面倒だ!!」


「アマトウさん、もう敬語はいいですよ。いつもの喋り方で大丈夫です」


「そ、そう…か。んじゃシロさん、どうし…」


「アマトウ殿ー!お喋りはそこら辺にするでゴザルー!!」


マゴロクさんとは違う忍者の方がアマトウさんを呼びます。もしかしてこの方がアマトウさんのお仲間さんでしょうか?


「よっしゃ!んじゃ行こうかシロさん!」


「はい!」


何はともかくまずはあのドラゴンを倒しましょう。


アマトウさんと家に帰るために。







次回、ロックドラゴン決着


トーカ「台詞が…」

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