閑話「その頃の騎士」
短いです
〈ガルドルド視点〉
俺の名はガルドルド・エルドルード。誉れ高きルード家の一つ、エルドルード家の長男として産まれ騎士となるため育てられた。
よく名前を噛まれる程、ルとドが多い名だ。不本意だが、俺をルドルド等と呼ぶ奴もいる。
俺が騎士になり暫くした時のことだ。訓練場内に可愛らしい声が響いた。
「わたしもやるぞ!おお、そのでかいのがよいな。かしてくれ!」
姫様だ。姫様はかなりお転婆で、やることなすことが淑女とはかけ離れている。本当は男ではないかと疑ったこともある程だ。
そんな姫様はハルバードに夢中になっている。小さな手で握り、必死に持ち上げようと悪戦苦闘していた。
「ハハハ、姫様にはまだまだ早いですよ。どれ、こっちのサーベルで我慢してください」
馬鹿にされたと本能的に感じたのか、グヌヌと此方を睨む姫様。
「うぐぐ…みているがいい。いまにこれをぼうきれのようにふりまわしてやるぞ!!」
その時は騎士の皆で微笑ましい光景だとおもっていた。
「みろガルドルド!もうこれでわたしをわらえまい!!」
そう、ほんの数ヵ月後に姫様がハルバードを振り回すまでは。
それから姫様は勝手に魔物を討伐しに行ったり、俺達の隊舎に移り住んだり、いつの間にか隊長補佐になってたりと色々あった。
そしてある日、
「ガルドルド、ドーバー、ミリア。これより私達はゴブリンキングの討伐へ向かうぞ。エターナ戦の影響でゴブリン共が少なくなっている今が好機だ」
姫様と共にゴブリンキングを討伐することになった。守護者、ダンジョンに潜る冒険者にとって戦いたくない相手だ。他の守護者に比べればまだ弱いが、それでも恐ろしい相手には違いない。
そう、恐ろしい相手だ。決して油断していた訳ではない。だが現実はどうだ、ドーバーが斬られ、俺は左腕をやられた。一瞬でこの様だ、笑い話にもならん。姫様に奴が迫る、今からでは間に合わない。
姫様の死を覚悟したとき、男の声が聞こえた。そして、その声の主と思われる銀色のフルプレートに身を包んだ戦士が、姫様とゴブリンキングとの間に割って入った。
そいつは武器を持っていなかった。ただ、小さな盾一つで攻撃を防ぎ、その盾で殴る。驚くべきは完璧なガードの見極め、全ての攻撃を最善のタイミングで防ぐその技量。これ程の技量をどこで身に付けたのか、興味はつきない。
ゴブリンキングは倒れた。姫様と甲冑の男アマトウが打ち倒したのだ。姫様とアマトウの話を聞けば 、どうやら姫様はアマトウを戦友として認めたようだ。そう言えば昔、戦いの中で培われる友情、戦友が等と姫様に語ったことがあったな。なる程、どうやら姫様は戦友に憧れていたようだ。
「…あれはどう見ても恋する乙女の目………あの男、姫様に色目を……ブツブツ……」
ミリアが何やらボソボソ喋っていたが、全く聞こえん。
しかし、どうやら姫様はノースベルグまで来て欲しいらしく。アルスベルグ家の紋章が刻まれたペン
ダントを渡し、返しに来いと言い始める始末。
余程、初めての戦友が嬉しいのだろう。困惑するアマトウに勢いのままペンダントを預け、返す暇を与えまいと足早く立ち去る。
帰路の途中、姫様はやたらと機嫌が良かった。
「な、なあガルドルド。訪ねてきた戦友と何をすれば良いのだろう?やはり、茶を飲み談笑をしたりすれば良いのか?」
「それで良いと思いますよ、姫様」
まるで、 学校の合宿時のように姫様は高揚していた。その様子を擬音で表すとすれば「そわそわ」だろう。
数日後、アマトウは姫様を訪ねてきた。待ち望んだ日だ、さぞ姫様は嬉しかっただろう。しかし、その日の姫様は書類の処理に追われていた。それに気を使ったアマトウは、邪魔をすまいと足早に帰ってしまったのだ。
あの時の姫様は正に暴れ獅子。まるで怒り狂う獅子のごとく暴れまわり、その場に居合わせた騎士総出でようやく止めることができたが、部屋が一つ破壊されたのは言うまでもない。
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〈ドーバー視点〉
僕達は馬車に揺られ、ツリフへと向かっています。本来はパルン城へ向かうはずでしたが、出発の直前に転移先を間違えたことが発覚し、今に至るわけです。
因みに原因は、転移時の神官の消耗が激しく、詠唱の際に行き先の指定を間違えたことが原因だそうです。あれは物凄く疲れるって授業で習ったのを覚えています。
いやーそれにしても流石に長い間馬車の上にいると、退屈で仕方がありません。
ほら、姫様なんて体が動かせないものだから不機嫌です。
「暇だ…賊でも襲ってこないだろうか?」
そんな物騒な事を願う姫は世界中探してもこの方だけでしょう。
「まったく…こんなにか弱い姫が乗っていると言うのに賊は何をしておるのだ。普通、物語等では定番ではないか…つまらん」
片手でハルバードを振り回すようなか弱い姫は、世界中探しても居ないと思いますよ姫様。
それに特急馬車に追いつける盗賊は居ないでしょう。
今度は何かを考える姫様。しばらく黙ると再び口を開いた。
「ドーバー・ハンス。ノースベルグ学園高等部 騎士科 第156期生を首席で卒業。武技、魔法共に秀でており多才にして天才と言われた。しかし、ゴブリンキング戦で全く役に立たなかったことを引き摺り、最近はそのストレスで脱毛に悩んでいる。治癒士からはもって3年と言われ、未来に絶望した悲哀の男…」
「いやいや姫様!勝手に変なナレーションを入れないで下さい!抜け毛はありませんから!」
「半分は本当だろうに…。しかし、こうもやることがないと退屈で敵わん、こうなれば馬に強化魔法を重ねるか…?」
「…無茶を言わないで下さい」
特急馬車は強化魔法の負荷に耐性を持った馬に、強化魔法【アクセラレーション】を掛けた馬車のことです。強化魔法は身体への負荷が非常に大きく、耐性の無い者は負荷に耐えられない。中には命を落とす人もいます。それを重ねがけ、狂気の沙汰としか思えない。
「冗談だ、それに何もせずとも今日中には着くだろう。それまでの辛抱だ…」
姫様は根性論を地で行くような方だ。全く冗談に聞こえません。
ふとミリアとガルドルドの方を見ると何やらミリアの顔が険しい。窓の外を見ていますが何かあったのでしょうか。
すると突然、ミリアが声をあげた。
「姫様! 私達の馬車より右方向に別の特急馬車が見えます!」
外を確認すると確かに特急馬車が並走しています。
「寄せろ!あれはパルンの馬車だ!」
どうやら姫様はあの馬車と接触する気のようです。
やれやれ、面倒ごとにならなければ良いのですが…
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〈ミリア視点〉
私達はパルンの馬車を停車させ、何用で特急馬車を使っているのか問いました。
本来、特急馬車は王族か王自らが命じない限り使用することは許されない。そして何故、私達と同じツリフの方角へ向かっていたのか。
馬車からは二人の冒険者らしき人物が降りてきました。
一人は獣人の女性、杖を持っているから恐らく魔法使いでしょう。もう一人は……確かヒイヅルのシーフ。…そう、忍者です。それに似た格好をしています。性別は…分かりません。
その忍者が口を開きます。
「拙者らはただ仲間のもとへ向かっていただけでゴザル。この馬車もパルン王が魔物討伐のため、貸してくれた物にゴザルよ」
この次期にパルン王が魔物討伐を頼む冒険者…。そしてツリフにいる仲間か…、となれば彼女等の正体はもしかしてーー、
「お前達…もしや加護者か?もしくはアマトウと言う名に馴染みはあるか?」
先に姫様が聞いてしまいました。そう、姫様を狙うあのタテ男の仲間に違いありません。
「加護者に相違無いでゴザル。それと、アマトウ殿は拙者らの仲間でゴザルよ」
「おお!やはりそうか、実は我等もーー「バチィッ!」ーーっ!」
ザザッ
突然の雷魔法。それは姫様へと放たれました。しかし、姫様は後方へ跳び避ける。
「姫様っ!」
何故姫様に攻撃を。私はその魔法を放った女性へ振り向き問いかけます。
「何故姫様に魔法を!」
何か理由があるはず…、姫様を狙った理由は一体。
「…匂いが」
「え? 」
「そこの女性から匂いがします。…先輩の、先輩の首飾りからしたあの匂いが!!」
バチバチッ
彼女は再び雷を纏わせる。やがてそれは右手へ集 束していきます。
匂い?…訳がわからない。
「塵一つ残さず消滅させてあげます…。これが風と雷の複合魔法!【ライ「ドスッ」ーうぐっ」
「トーカ殿!暴走しすぎでゴザルよ!めっでゴザル!!」
彼女が魔法を発動する前に、忍者の方が止めてくれました。
一先ず目の前の危険が去ったことに、ほっと胸を撫で下ろします。助かりました。
「ん?こないのか…残念だ」
この脳筋プリンセスめ!何、残念そうにしてるんですか!そんなんだから陰で姫殿下なんて呼ばれるんですよ!!
「あ、あるぇー?トーカ殿ー?」
ぺちぺち
忍者の方がぐったりとした彼女をぺちぺちと叩いている。
どうやら先程の手刀で気絶したようです。
忍者の方はおろおろと慌てた様子。
「う、うわーん!ま、またトーカ殿に怒られるでゴザル~!助けてアマトウ殿~!!」
…あれ?私が聞き及んでいる忍者と全然違います。私のイメージでは無表情で寡黙な印象だったのですが…なんか正反対ですね。
トーカと呼ばれた女性が目覚めるまでユキカゲと話をしました。名前や今までの冒険と言った他愛もない話ですが。
しかしその中でも特に気を引くのは【メッセージ】についてでしょう。どうやら加護者同士限定のようですが、遠くの者と瞬時に連絡できるものだそうです。
「おお!そう言えばアマトウ殿に居場所を尋ねようと思っていのでゴザル!すっかり忘れていたでゴザルよ!」
あっはっはと笑いながらユキカゲは指先を宙に走らせます。
「…ッと、送信でゴザル!」
「もしかしてメッセージを?」
「うむ!」
ユキカゲは指をVの字にして元気よく答えました。なにこの忍者かわいい。
「お、返信が来たでゴザル。ふむふむ…」
内容が気になるのか姫様はユキカゲに問います。
「ユキカゲよ、アマトは何と?」
「うむ、どうやらツリフの西…えーその辺りにある鉱山方面の森で、守護者討伐をしているようでゴザルよ」
となるとロックドラゴンが相手でしょう。これはマズイですね…あのタテ男には荷が重いかもしれません。
「えーと、ノエル殿?拙者らこの辺りには疎いでゴザル、しからば先導を頼みたいのでゴザルが…」
「ああ構わんぞ。よし、全員馬車に乗れ!もたもたするな!すぐに出発するぞ!!」
特急馬車は土煙を巻き上げながらタテ男を目指し猛進する。
「持ちこたえてくださいよ…タテ男」
次回、ロックドラゴン戦
そろそろ登場人物紹介を書くかもしれません。
ノートに書いた落書き程度の挿絵ものせる予定です。




