第15話「パルン~大樹のある町6~」
短いながら更新です。
石蜥蜴の動きはやや遅い。よくテレビなどで見掛けるオオトカゲと違い、石蜥蜴の動きが重いのは体が岩石っぽいからだろう。
「そこだっ!【シールドチャージ】!!」
密集し追いかけてきた石蜥蜴に振り向き、シールドチャージを放つ。向こうも全力で走っていたはずだ、そこに正面衝突……かなりのダメージが見込めるだろう。
ズグッ
盾の三本角が石蜥蜴の眼を潰した。そのまま他の石蜥蜴を巻き込みつつ、奴等の後ろへ抜けると同時に走り出す。
ちょっと卑怯だが勝つためには仕方がない。それにあの数に正面から突っ込んだら、間違いなく死ねる。ここは堅実にヒット&アウェイで行こう。
やれやれ、こいつは時間が掛かるな。そう心中で愚痴り、盾を構え再び奴等へ突撃した。
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〈シロ視点〉
どこにもアマトウさんが居ません。道具屋、武器屋、防具屋等に尋ねてみると3時間程前に来ていたことが分かりました。
どうやら、大量のポーションと盾を購入したみたいです。これだけの情報なら、ただ早めに討伐の準備をしていると思うでしょう。
ですが私は知っています、アマトウさんがどんな人なのか。…誰かが傷つく位なら、自ら脅威に飛び込みその痛みを一身に受けるような、正しく盾を体現したかのような人。
その人がしそうな事、出来ることならこの予想は外れて欲しい…。私は西門へ向かいました、アマトウさんが通ったかどうかを聞くために。
結果は、通っていました。つまりアマトウさんは、単独で討伐へ向かったと言うこと…どうしよう、今すぐ追い掛けたい。でも私が一人で行ったって死ぬのが目に見えています、他の冒険者を誘ったところで着いて来るはずがありません。
加護者は不死身。でも肉体は不死身だけど、心までそうとは限らない。アマトウさんが前に言ってました、加護者はHPと呼ばれる光の棒が見えるらしいのですが、それが尽きると生き物は死ぬと。
以前アマトウさんは…、「もしミミズ形の大型モンスターに呑み込まれたら、HPが無くなるまで消化されるのかな……」と少し青ざめて呟いたことがありました。私はそれまで、加護者は不死身で無敵な存在と思ってました。でも違うんです、加護者は死ねないだけで痛みも感じるし、恐怖だって抱くのです。
アマトウさんは笑いながら、「いやー、ゴブリンは俺の師匠みたいな魔物ですよ。初日で2、3回は殺されましたし、…鎧越しに伝わる衝撃が体の内側をズタズタにしてる感覚は今でもトラウマですね。あとトロールに潰されたときも……」 と、自身の体験を語ってくれました。あの時のアマトウさんは笑っていましたが私には分かります、きっと恐怖を誤魔化すためにわざと笑ったのでしょう…。
もし、アマトウさんが惨たらしい死に方をして、二度と立ち上がれない程心が折れたらと考えると、それだけで心が苦しくなります。
どうしよう、一体どうしたら…。おろおろと門の前で考えあぐねていると、後ろから声が。
「そこの娘よ、先程から話は聞いていたで御座る。お主…アマトウ殿の知人で御座ろう?」
私はハッとします。もしかして、この人がアマトウさんのお仲間さん?
「いやはや、拙者は仲間では御座らんよ。なれど拙者の仲間には、アマトウ殿と共に戦った者はいるで御座る」
目の前の人が仲間じゃないと分かり、何故か私は安堵していました。でも仲間じゃないなら、この人はどうして私に話しかけてきたんだろう?
「おっと。かたじけない、先に名を申すのを忘れていたで御座る。拙者、【忍十傑衆】が孫六隊の長、名をマゴロクと申す。実はアマトウ殿が向かったとされる、蜥蜴共の居場所を聞きたかったので御座る」
この人はアマトウさんを助けに来てくれたんだ。私は嬉しくなり、ストーンリザードとロックドラゴンの情報を事細かく説明しました。
「しからば拙者は救援に向かうで御座る。シロ殿、後から他の加護者が来るはず、その者等にも説明を頼むで御座る」
ヒュンッ
そう言い残すと、マゴロクさんは凄まじい速度で走っていきました。
「すごい、獣人じゃないのに…」
おっと、そんな場合ではありません。加護者のことをギルドに報告しないと。…アマトウさん待ってて下さいね、すぐに私も行きますから。
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〈アマトウ視点〉
「ハァ…ハァ…な、何匹倒したっけ…」
頭が朦朧とする。当然だろう、何時間も休まずに戦い続ければ誰でもこうなる。
ザッ!
っ!しまった、完全に油断していた。突如、右から飛びかかって来た石蜥蜴に俺は反撃すら出来ない。何とかガードしようとしたその時、
「切り裂け、風の戦輪よ!風遁、【ウィンドチャクラム】!」
ヒュパッ
風を纏わせた円月輪が石蜥蜴を切り裂いた。このマスクでくぐもった声、忍者っぽい技名、間違いないーー
「ユキカゲ!」
「いやはや、拙者はユキカゲでは御座らんよ。拙者、マゴロクと申すで御座る」
ーー違った、恥ずかしい。
うわー!昔先生にお母さんって言ってしまったくらい恥ずかしい!できれば無かったことにしてぇ!!あああ、穴があったら掘r …じゃねぇ入りたい!
しかし、マゴロクは此方のことはお構いなしに話を進める。逆に気遣ってるのか?マゴロク、優しい忍者だ。
「ふむ、部下に辺りを探らせたが七割方のストーンリザードは、アマトウ殿が倒したようで御座る。しからば、アマトウ殿は此処で休息すると良い、拙者は部下と共に残りを掃討してくるで御座るよ」
「ありがとう。だが気をつけてくれ、俺のDEF でも奴等の直撃はかなり効いた。軽装で喰らえばタダではすまんぞ」
「心配無用、あのスピードならば拙者を捉えることは叶わぬで御座る。なれどその忠告、慢心を捨てるため有り難く聞き入れるで御座る。では、去らば!」
風のように現れ、風のように去っていったな。
ま、今は体を少しでも休ませよう。ロックドラゴン…直訳して岩竜か、本命の岩竜がまだ残っている。一体どんな奴なんだろうな、そもそもドラゴンってのがヤバイ…、大抵のファンタジー系だとドラゴンはもれなく糞強いのが御約束だ。
嫌だなぁ…、俺の攻撃効くのか?名前からして硬そうなのに、…こんなことならハンマーとか持ってくりゃよかったか?硬い敵には打撃で攻めるに限るからな。でも盾だって打撃か、あれ?イケるんじゃないか?
少し、希望が見えた。
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〈風の黄昏〉
「なんで、俺達が向こうに行けないんだよ!」
「もう神官が限界なのだ。すまぬが少し休ませてくれ。悪いな加護者よ」
意気揚々とツリフへ向かおうとした【風の黄昏】は足止めをくらっていた 。
次回、そのころの騎士達
トーカ「で、出番が…」




