第12話「パルン~大樹のある町3~」
この町、ツリフへ来てからもう二日たった。驚異的なペースでゴブリンを討伐した結果、現在クエストボードにゴブリン関係の依頼はゼロ、うむいい仕事をしたな。
しかし働きすぎは良くない、良くないぞ。そこで今日は討伐クエストはお休みだ。今日は理想の盾使いを目指すために頑張るデーとしよう。
理想の突進はどうすればできるのか、やっぱり軽くしてスピードを上げるか、それとも重くしてぷつかったときの威力を上げるか…
んー盾はスキルのお陰でめっちゃ軽く感じるけど、鎧がなー…っとそうかスキルがあったな。
ステータスを開いて、職業のチェックをする。
【重装士】、こいつは盾とか鎧に対して重量軽減が発動する職業のようだ。
この重量軽減は実際に軽くなってる訳ではない、肉体的には軽く感じるが物理的には重さは変わっていないという謎仕様らしい。
つまり職業補整で装備を軽くすれば、走行速度を上げつつ装備の重量を生かした突進が可能となるのだ!…多分。
しかし、取得条件に【重戦士】または【重騎士】と【盾使い】を取得し、足したレベルが40以上と記載されている。
んー取得してたっけ?ちょっと確認しよう。
取得職業は【戦士:レベル14】【盾使い:レベル38】【魔法使い:レベル1】【重戦士:レベル1】
【魔法使い】と【重戦士】が増えてた。いつ取得したんだ?記憶にないが、まあ取得してるに越したことはないし良いだろう。
【魔法使い】の取得条件は何回か魔法を使うことかな、【重戦士】は重い装備を使用して何回か戦闘したりするのが条件か。
それにしても後1レベル足りないぞ、…職業を変えて適当にしとけば1位すぐにあがるだろう。
【重戦士】をタッチして、変更する。途端に盾が重くなり、逆に鎧が僅かながら軽くなる。
「よし、レベル上げはまた後日として。次は筋トレだ」
掲示板の情報によると、スタミナ以外の隠しステータスが見つかったらしい。その名も筋肉値。
これまで筋肉は飾りと思われていたのだが、ある日STRが同値の戦士二人が腕相撲をしたところ筋肉が多い戦士が圧勝。何度やっても結果は同じだった。
そのことから筋肉補正があると言うことが判明した。
そこで俺は筋トレで脚力の強化を考えたわけだ、既に糞重い装備で結構な筋肉がついているが、ここからさらに痛めつける。
となる場所か、走り込みに向いている所は無いか考えていると、
「どうしたんですか?」
シロさんがニコニコと微笑みながら話しかけてきた。よし、ここはこの町に詳しそうなシロさんに聞いてみよう。
「なるほどー…脚力の修業に使えそうな場所ですかー」
シロさんの耳がピクッと動いた。
「大樹の丘の坂道はどうでしょう?」
成る程、いい考えだ。確かに脚力強化と言えば坂道ダッシュと言うのが定番のような気がする。
と言うわけでやって来ました。
何故かシロさんも着いてきたけど。それに何か持ってきてるし、なんだあれ…桶か?
「シロさん、それはなんですか?」
「これは丘ソリです!ツリフの子供はみーんなこれで遊ぶんです。凄く楽しいんですよ!」
尻尾をブンブンと振るシロさん、余程面白いんだろうな。
「でもちょっと重いので運ぶのが大変です…」
成る程重いのか、あの高さの丘から滑って無事な強度となると、必然的に重くなるんだろうな。
「よし、俺が引っ張って行きますよ!」
「…でも悪いですし」
「修業の一環、気にすn…しないで下さい」
ぐおぉ、敬語めんどくせぇ…。機会があれば早く敬語を止めたい。
丘ソリの縄を掴み引き摺る。
「うぐっ…マジで重い。おーもいーこんーだーらっ…と!」
これはキツい、だがいい筋トレになること間違いなし。
気がつけばもう夕暮れ時だ。ひたすら登り降りを繰り返したが、脚力が上がった感じはしない、まあ持続は力なりと言うしこれからも続けてみるか。
「シロさーん!帰りますよー!」
丘の上のシロさんを呼ぶと、シロさんは手を振って応える。
「わかりましたー!今から降りまーす!」
丘ソリで滑り下ってくる。にしても凄い速さだ、止まれるのかあれ?
心配していると、慌てた声が聞こえる。
「とととと止まりません!停止板が動かないです!」
なんてこった、これはヤバイぞ。
丘ソリはどんどん俺に近づいてくる。こうなったら、受け止めるしかない。
「ア、アマトウさん!危ないです!」
「俺を信じてくれシロさん!来な、受け止めてやらぁっ!!」
両腕を前方へ向け、構える。
ガアンッ!!
丘ソリがぶつかり、桁外れの衝撃が体を突き抜ける。
「っが!糞いてぇ!!」
ズザザザザザッ!
勢いは衰えず、体を押し続ける。
「うぐぎぐぅぉあっ!!踏ん張れ俺の脚っ!」
ギシギシギシッ
ガントレットとグリーヴが悲鳴を上げる。
骨がミシミシと音をたてる。ヤバイ折れるかも、だが逃げるわけにはいかん、何としても止めて見せる。
「勢いが衰えた!耐えろ俺っ!あと少しだ!!」
ズズ…ズッ
距離にして30m程俺を押し続け、ようやく丘ソリは停止した。
俺は脚から崩れ落ち、地面に転がる。
「……修業の成果、あったな」
すると、何故か眠たくなり、その重たい瞼をそっと閉じた。今夜はいい夢が見れそうだ。
ピロンッ♪
『職業レベルが上がりました』
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<シロ視点>
私は自宅の床にアマトウさんを寝かせ、鎧を外しています。
ボタッ
「うわ…酷い…」
ガントレットを外すと、固まりかけた血が滴り落ちます。私を受け止めてくれた、その手は掌の皮膚がごっそりと剥がれていました。肉も抉られたようにボコボコと凹凸があります。
次はグリーヴを外します。一番見たくない部位です、何故なら私の嗅覚が焦げた肉の匂いを知らせるから。
ガパッ
両足とも悲惨でした。恐らく中で摩擦され焼けただれたのでしょう、足の裏はボロボロになり赤黒く変色しています。
鎧を全て外し終わり、私はアマトウさんの手と足にこびりついた血と汚れを拭きます。これを怠るとポーションや魔法で治癒した時に、異物が残る可能性があるからです。
持続性のポーションを掛けた後、綺麗な布をあて包帯を巻きます。
「これで…大丈夫かな 」
後は体を綺麗に拭いて、ベッドに寝かせてあげます。
それにしてもあの時のアマトウさんは、口調が荒っぽくなってましたね。もしかすると、本来の口調はあっちなのかもしれません。
明日起きたら、無理して丁寧な喋り方をしなくてもいいですよって言おうかな。
うん、そうしよう。
私はアマトウさんの横に寝転がり、瞼を閉じます。
「お休みなさい、アマトウさん」
…何だか、家族が出来たみたいです
トーカ「嫌な予感がします…」
次回、フェチ襲来




