第10話「パルン~大樹のある町~」
すみません短いです
遠話魔法具より声が届いた、ノースベルグ国王より連絡が入ったのだ。とうとう我が国へ援軍を派遣できると、この言葉にその場に居た者達は歓喜した。
その先遣として、ノースベルグでもかなり腕のたつ加護者を、ここパルン城内のポータルへ転移させる……はずだったのだが。
「す、すまん!転移を行った者が行き先を間違えたようだ……一応パルン内に転移したのは確かなのだが……」
「ば、馬鹿者!お前は昔から肝心なところでいつも失敗をしおって!!ええい、伝令をだせ!国内全てのポータルへ兵を向かわせろ!!」
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光を抜けると、俺は丘の上に立っていた。
後ろへ振り向くと、視界が茶一色に覆われた。上を向くと蒼蒼と生い茂る葉が見える。
どうやらかなり大きい樹のようだ、ありきたりな設定なら【世界樹】とか【ユグドラシル】なんて名前が妥当だろう。
「あ、あの…」
これに毛虫が沸いたら大変なことになるな。風にのって遠くまで毛虫の毛が飛びそうだ。
ブルッ
実は俺、虫は苦手だ。蜘蛛とかムカデとかゲジゲジとか芋虫とか、甲虫とかバッタとかは平気だが。
しかしポータルが大樹とはね。もしかしたら樹の中に埋もれてるかもしれんけど。
さて、とりあえず何をすれば良いんだろう。王様はパルンで、モンスター討伐を手伝えって言ってた気がするし、ひとまず冒険者ギルドに向かうか。
「あのー」
あれ、声がする。後ろへ振り向くと犬耳を生やした女の子が立っていた。髪の色は白で肌は健康的な色をしている、うむ可愛らしい。
第一印象は大事だ、優しい口調で話そう。
「はい、何かご用ですか?」
「あ、あの…間違ってたらすみません。あなたは…その…か、加護者ですか?」
彼女はオドオドした様子で問いかける。
「はい、その通りです」
その言葉を聞いた彼女は顔を綻ばせる。
「やっぱり加護者なんですね!申し遅れました、私はシロと言います。…あのー貴方のお名前を聞いても良いですか?」
「俺はアマトウ、よろしくシロさん」
よし、今から俺は紳士的な人間として振る舞うぞ。
「ところで冒険者ギルドに案内して貰えますか?」
「はい、喜んで!」
彼女はパタパタと尻尾を揺らし歩き出した。
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<シロ視点>
今日も私は早朝起床、絶好調です!
「おはようございます」
私の家には誰も居ません。物心ついたときには一人で暮らしていました。だから両親の顔も知りません、でも寂しいと思ったことは一度もありません。この町の人は皆優しいからです。
私はクエストに行く前、必ずある場所に寄ります。そこはこの町で一番見晴らしが良くて、しかもお昼寝にとても向いてる場所なんです。
ユグドラシルツリー、ずっと昔に旅人が植えたものだそうです。凄く大きな樹で、昔はポータルが傍らにあったそうですが今では樹に埋もれてしまったとか。
世界の何処かにはこの樹が沢山生えている森があるらしいです。いつか私も見に行きたいな。
丘を登っているとユグドラシルツリーの根元から光が見えます。もしかして、物語に出てくる加護者が私達の町にも現れたのかも…、と期待を胸に大樹へ向かいます。
鬼、鬼が居る。以前、ギルドの書物で見たヒイヅルで確認された魔物、鬼。一説によればゴブリンの近縁種だとか。何でこんな所にーー
……よく見てみれば、赤い鎧を着てるだけでした。となると、あの方が加護者でしょうか?
赤い方は大樹に驚いたのか、上を見上げたまま動かなくなりました。
よし、声を掛けよう。
「あ、あのー」
……反応無し。いえ、今少しだけ動いた気がします。
赤い方は今度は樹の幹を見つめています。
よし、もう一度。
「あのー」
赤い方は振り替えると、こちらに少し驚いたのか動きが止まりました。
「はい、何かご用ですか?」
とても優しい声としゃべり方でした。きっとこの人はとても優しい方だろう、そう確信します。…だって町の男の人は荒々しい人ばかりだし。
話を聞くと、やはり加護者の方だったようです。
物語と一緒です!魔物の動きが活性化する時、神様が加護を与えた異界の戦士達を遣わして下さるんです。
イシュテスに加護者が現れたと聞いた時から、この町のポータルに加護者が現れるかも、と淡い期待を寄せていましたが本当に現れるなんて!
加護者ーー名前はアマトウさんと言うそうです。アマトウさんは早速魔物討伐に向かうようで、私にギルドの場所を聞いてきました。
私は喜んで案内します。
途中、アマトウさんが出店の飲み物をジーッと見つめていました。一瞬迷いながらも買ったようで、兜の全面部をスライドさせて飲んでいます。
お顔は中々整っていて、親しみやすい顔つきでした。ジュースを飲んでいると、とても幸せそうな表情をしています。
そしてギルドに着きました。
次回、ゴブリンリーダー




