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気付けたね

作者: Nastur kyo

その男の子は何でもできました。

少しやり方が分かればすぐにどんなことでもできました。

だから、男の子はいろいろなことをたくさんしたのです。

それはもう楽しかったにちがいありません。

でも。男の子は気付いてしまったのでした。

自分はいろいろなことをできるけれど、一つのことを突き詰めている人ほどには何もできないということを。

男の子は悲しくなりました。恥ずかしい気持ちにもなりました。

今まで自分は何でもできるのだと周りのお友達や大人たちに自慢ばかりしていたからです。

でも、実際には男の子のようにいろいろなことができなくとも、男の子以上に一つのことができる子はたくさんいたのでした。

そのことを知った男の子は自分が恥ずかしくなってしまい自分の部屋から出てこなくなってしまいました。

男の子は考えます。

どうしてこんなにも恥ずかしい気持ちに自分はなってしまうのかと。

男の子は考えます。

どうしてこんなにも自分は悲しいのかと。

そして男の子は分かったのでした。

自分は悲しくもあるし恥ずかしくもある。けれど今の自分はただ逃げたいだけなのではないのかということを。

そう思ってしまったら急に男の子は怖くなってきました。

怖くて怖くて、ベットの中でがたがたと震えることしかできずに丸まっている男の子は不意にとても暖かい物に包まれたのを感じました。

それは本当に暖かく心までぬくぬくにしてくれそうなほどでした。

すると、今までずっと怖かったのがウソのように男の子は眠くなってきて、うとうととし始め数分もしないうちに寝てしまいました。

次の日。男の子が朝起きると男の子はお母さんに抱っこされて寝ていました。

昨日のどこまでも暖かな物とはお母さんだったのです。

そうして男の子は昨日自分が感じたことを全部お母さんに話して聞かせました。

お母さんはずっと微笑を浮かべながら男の子の話に耳を傾けました。

そして、男の子はお母さんに尋ねます。

「僕は逃げちゃダメなの?」

お母さんは答えました。

「そうね。逃げてはいけないわ。でもね、一人で向き合わなくてもいいのよ。」

男の子は分かりませんでした。

今まで何でも一人でしてきた男の子にとっては何をするにも一人でやるのが普通だったからです。

だから男の子はお母さんに尋ねます。

「一人じゃなくてもいいの?僕は一人でしてきたのに?」

お母さんは答えます。

「いいえ。今までもあなたは一人ではなかったのよ。

あなたが何かをするとき直接手を貸してくれる人がいなくても

誰かがあなたを見守っていてくれたはずよ。違う?」

そういわれ男の子は考えてみました。

すると確かに男の子は一人ではありませんでした。

何をするときにも男の子のことを心配してくれる人が必ず近くにいたことに男の子は気が付いたのです。

男の子は嬉しくなりました。とてもとても暖かなほかほかな気持ちになりました。

そして、みんなにお礼を言わなくちゃと思いつきます。

それと同時に今まで偉そうな態度をとって威張っていたことを謝らないといけないとも考えました。

そのことをお母さんに言うと、お母さんは笑顔で男の子のことを抱きしめてくれました。

お母さんは抱きしめながら「きちんと自分の気持ちを伝えてくるのよ。あなたならできるわ。」と言ってくれました。

その言葉に背中を押された男の子は、

暖かな気持ちを心に抱いて、

右手にありがとうを、

左手にごめんなさいを、

それぞれ持って家からみんなの下へと走っていくのでした。


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― 新着の感想 ―
[一言] はじめまして。 男の子は一つ、成長したようですね。説教臭さも全くなく、読後感がいい作品だと思いました。 童話にふさわしく、ぜひちいさなお子様から、ティーンの子まで、読んでいただきたい、そん…
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