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狐狗狸さん

作者: 百瀬とうふ

私が中学生の時の話だ。

ある日、私と友達数人で放課後に狐狗狸さんをしようという話になった。その時いわゆる世間で狐狗狸さんが流行っていたかどうかはわからないが、私たちにとって怖い半分、面白半分、肝試しのようなものだった。

私と一番仲の良いKちゃんは、狐狗狸さんを信じていなかったので、みんなを驚かそうよと私に提案してきた。Kちゃんは今日は家の用事があるからと言って帰ったふりをして、教卓の下に隠れているのだ。そうして、頃合いを見計らって飛び出すというものだ。

私はそういうのはあまり好きではなかったが、私だけに教えてくれたので、悪い気はしなかった。

放課後、教室に生徒がいなくなるまで待った。カーテンは閉めたけど、まだ少し明るかった。

参加したのは私を含めて4人の女子で、私とYちゃんが十円玉に指を置き、他の2人はそれを見ていることにした。教室の後ろの方で、二つの机をくっつけてそれを囲んで座った。

「狐狗狸さん、狐狗狸さん。来て下さい」

すると十円玉はゆっくりと動きだし、ボールペンで書かれた鳥居のマークの上で止まった。

「狐狗狸さん、あなたは男ですか、女ですか」

と訊くと、お、ん、な、の順に十円玉は滑っていった。

最初は少し緊張していたが、見ているだけの2人は、私かYちゃんが十円玉を動かしていると思っているのだろう、あはは、と笑い合っていた。私は少し怖かったが、Yちゃんが十円玉を動かしていると考えた。

私たちは雑談をしながら、狐狗狸さんに誰が誰のことを好きか、という主に恋愛に関する質問ばかりをしていた。だんだんと恐怖心は薄れていった。そうしてだいぶ日が落ちて暗くなった頃、帰ることにした。

「狐狗狸さん、どうかお帰り下さい」

と言うと、はい、と答えが返ってきた。ああ、こんなものなのか。と、私は思った。



帰り支度をして教室を出たところで、ふとKちゃんのことが頭に浮かんだ。Kちゃんが、出てきていない。どうしてだろう。Kちゃんは、きっと用事があって本当に帰ってしまったんだ。そうに違いない。

廊下を抜けて階段を下り下駄箱を見ると、Kちゃんがいつも履いているスニーカーが残っている。

私は怖くなったが、みんなに忘れ物をしたから先に帰ってて、と言って引き返した。

Kちゃんは廊下の先の薄暗がりから歩いてきた。青ざめた顔をしていた。

「大丈夫」

「どうして先に帰っちゃうの」

「ごめん。でもいたんなら、どうして出てこなかったの」

「机の中にいたんだけどね、机の前にずっと誰かが立っていて出られなかったの。そのうち教室を出て行く音がしてみんなの声が聞こえなくなってからも、ずっと出られなかった。全く声が出なかったんだけど、何度も帰ってって言ってたら歩いて教室を出て行った。あれは誰だったの」

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― 新着の感想 ―
[一言] はじめまして(・∀・)♪ 読ませていただきました* とても面白かったです\(^O^)/ これからも頑張ってください(*^-^*)
2012/09/17 20:36 退会済み
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