センセは小学生☆
作者注意)X指定するほどではないと思うけど…ちょびっと、えっちぃかもしれません。
ではお楽しみ下されば幸いです♪
ガラスのテーブルに教科書とノート、それに問題集が広げられていた。
あたしの目の前には小学生の男の子が居て、苛立たしげにシャープペンをカチカチさせてる。
さて、あたしらは何をしてるように見えるだろうか?
あたしが彼に…進藤成一勉強を教えてる?
残念。確かに勉強会ではあるけど、教科書も問題集も全部あたしに向いている。
…そう。教わってるのはあたしの方なのだ。
「おい」
小学生のくせに、成一君はやけにドスの利いた声を上げた。
「むぅ。またあたしを《おい》って呼ぶぅ。紀美子だってば」
あたしが口を尖らせると、成一君はフンと下らなそうに鼻を鳴らした。
「高校生にもなって負のかけ算を間違える奴が、名前ごときで騒ぐな。これはこういう計算だろうが」
さらりとシャープペンがノートを踊り、数列を綴る。
はぁ。成一君ってば、子供のくせにすごく綺麗な文字を書くの。
あたしの文字と並べると、どっちが女の子の文字か分からないくらい繊細なんだ。
「…というわけだ」
加えて、説明もあたしの頭で理解できるくらいに解りやすい。
「へぇ、なるほどォ」
「…お前の《なるほど》は信用ならないな」
「ひどい成一君。あたしは精一杯頑張ってるんだよ?」
「…知ってる。それでも脳みそがついてかないんだろ、馬鹿」
「成一君ってば、ひどいよぅ」
「うるさい、とっとと次をやれ!」
「わかったよぅ」
口を尖らせながら、あたしは次の問題に取りかかった。
これがまた難しくて、時間が掛かりそう。
そうそう。何であたしが小学生にどやされながら勉強してるかというと。
今年大学受験があって、家の系列の大学に通わなくっちゃならないからだ。
まぁ、自慢じゃないけど、うちは金持ちだから会社の他にいくつか学校を持っている。
なら受験じゃなくて、面接だけで取ってくれればいいのに…あたしの成績の悪さが親の目に留まり、受験に合格しないと大学に行かせてもらえ無いどころか、家を追い出す!って話しにまで発展。
まぁ、子供の頃からちやほやで、勉強しなくても先生は笑って許してくれたし。
…一度、この先生嫌いっと食卓で父にこぼしたら、翌日からその先生の姿を見なくなったのが原因だろうけど。
あたしに家庭教師をつけて勉強させようとした父は、ちょっと考えた。
…もし手を出されたら大変だ。
結果、女の先生にしようと決まり掛けたんだけど、運悪く父の浮気が発覚。
…当然、母は女の人を家に入れるのを拒否った。
さて、困った。じゃあどうしょう。
丁度その頃、アメリカの大学を卒業した進藤成一君。
飛び級というやつで、成績はトップ(!)
さて、彼はいろいろな企業からオファーが来てる。
「僕はもう一度小学生からやり直したい」
成一君はそう言った。
まぁ、大人に混じって勉強してたんじゃ、子供の楽しいことを知らずに居たわけで。
つまり、遊びたい盛りが今更にして彼に訪れたわけだ。
成一君がアメリカの大学も、日本に来て入った小学校も、全部うちの系列。
…父と母の意見は一致し、こうしてあたしの家庭教師をする羽目となる。
そりゃあ、苛つくよね。
小学生になって遊びたかったろうに、その時間を潰されて、馬鹿なあたしのセンセしてるんだもん。
「いつまでチンタラんな問題に時間掛けてるんだよ」
小さい子供の手が、ばんっとノートを叩く。
しまった。ちょっと飛んでた。
「ご、ゴメン!」
「どうせ、子供に教わるのは嫌だなとか考えてたんしゃないのか?」
皮肉げに歪んだ成一君の唇。
とてもじゃないけど、子供のそれとは違う。
彼がアメリカの大学で、イジメにあってたのは知ってる。
それが、彼をこんな風にさせたのだ。
「成一君が子供だとか、そんな事思ってないっ。…あたしがただボーっとしてただけだもん」
すぅっと成一君の瞳がナイフのように細まった。
…今までイライラしてる時に見せてた顔とは全く別の、知らない顔をする。
「成一君…?」
恐る恐る彼の名を呼ぶ。
「紀美子」
彼は初めてあたしの名を呼んだ。
毎日のように勉強を教えてくれてたけど…名前を呼んでくれたのは初めてだ。
「と、年上を呼び捨てにするのはどうかと思う」
気圧されないように、精一杯大人の振りをした。なんて言うのかな。
猛犬に、いきなり懐かれて、戸惑う感じ?
「その言い方、絶対に僕を子供扱いしてるだろ」
あたしは睨む勢いで見つめられて、たじたじになった。
「だって、成一君は小学生になりたいんじゃなかったの?」
「そのつもりだった」
成一君はすぐに答えた。
「じゃあ、子供扱いしていいじゃない」
「ぼくは《だった》と言ったんだ」
あたしはしわの少ない脳みそをフル回転させて、成一君の言わんとしている事を考えた。
「…今は子供扱いして欲しくない?」
「正解だ」
成一君は嬉しそうに笑って、席を立った。
「どこに…」
行くの?問おうとしてあたしは言葉を飲み込んだ。
彼はあたしの隣に寄ってきたから、問う必要がなくなたのだ。
代わりに別のことを聞く。
「何?」
不意に成一君はあたしに飛びついてきた。
…これは甘えてるのかな?
やっぱり子供だよね。
あたしはヨシヨシと、犬猫にやるような感覚で成一君の髪を撫でた。
「ほら、やっぱり子供扱いじゃんか」
あたしの肩に顎を乗せてた成一君は、ぼそりと呟いた。
耳のすぐ横だから、ちょとくすぐったい。
「成一君?」
甘えたいんじゃないなら、何で抱きついたんだろ?
「実に気に入らないね」
さらに成一君は囁く。
「そもそも、僕が安全で賢い子供だからここに居るんだろ?」
まあ、じゃなかったら家庭教師として呼べないし。
「安全ってのが腹立つんだ」
…えーと。それはどういう意味ですか?
なんて聞いたらダメな気がしてきた。
そう言えば、成一君の抱きつき方が、ちょっと変かな?
ほら、子供が母の胸にすがって抱きつくのって、母のお腹に腕を回すか、しがみつくじゃない。
成一君は、あたしの肩や首に腕を巻き付けてギュッとしてる。
位置が高い。
でも、そうやって来る子もいるし、変ではないよね…?
「紀美子」
成一君があたしの名を呼ぶ。
「どう考えたって《安全》なんて言われたら何も出来ないじゃないか」
あたしの頭はぐるぐる周り始めた。
…安全の反対ってなんだっけ?
…何も出来ないって、何をするつもりなの?
これらの答えを導き出してはいけない気がしてならない。
でも、成一君はいたって解りやすい答えをくれた。
「好きだ、紀美子」
ぼんっ!あたしの頭は小さな爆発を起こした。
顔が火を噴いたみたいにあつくなって真っ赤に染まってくのが自分でもわかる。
生まれてこの方、高校生にもなって告白されたのは初めてだ。
…友達が言うには、あたしの家の肩書きで、同い年の男の子はビビって手を出せないらしい。
免疫の無いあたしは、必死に冷静を装った。
「ま、まずは落ち着こう?ね?」
「今さっき思った感情じゃないからな」
あたしの言葉は無視されて、成一君は囁く。
あたしは腕を放して、どうにか成一君から離れようと考えを巡らせた。
突き放すわけにもいかないし、このまま抱きつくのは非常に危険な気がしてならない。
「成一く…」
「紀美子は何も解ってないね。そうやって僕の名前をすぐに呼ぶけど、それがどれだけ僕の事をかき乱すのか」
「え?」
成一君は少し身をよじると、あたしの耳に息をかけるように囁いた。
「紀美子」
…う。頭の中がぐるぐる掻き回されたように、思考がまとまらなくなる。
ヤバい、ヤバい。相手は小学生だよ?なんかマズいってば!
「好きだよ、紀美子」
成一君はそっとあたしの耳にキスをした。
背中に電気が走ったみたいにビクッと肩をすくめ、それが過ぎると、あたしの頭は一切の思考を放棄した。
「ずっと、前から紀美子を見てた」
成一君はさらに身をよじり、あたしの額にキスをする。
「アメリカの大学を見に来たことがあったろ?あの時にただ一言だけくれた言葉を覚えてるか?」
うん。確か…
「勉強して何がしたいの?」
そう言った気がする。
「僕はただがむしゃらにトップを目指してたけど、自分の中に何も無かったことに気づかされた」
いつだったかな。
1年…いや、2年前に、父の仕事にくっついて行ったときに寄ってきたんだと思う。
将来はここにしなさいみたいな感じで大学を見せられたんだ。
「小学生をもう一度やりたいと思ったのも、紀美子の言葉が忘れられなかったからだ」
あたしの言葉が成一君の人生を変えちゃったの?
「家庭教師の話しが来た時は迷わず飛びついた」
成一君はあたしの瞼にキスを落とした。
「久しぶりに会った紀美子はやっぱり変わってなくて、平然と《やりたいこと見つかったね》と笑ったんだ」
今度は頬に。
「僕は紀美子が好きなんだ」
…次は唇に来る。
あたしは覚悟した。
「大学じゃあ、僕が子供なんてお構いなしにY談するやつもいるんだ…だから、どうするかくらい知ってるよ」
…やっぱり《なにが?》と、問うのはマズい気がする。
成一君こそ、あたしが抵抗しないのをいいことに、シャツのボタンを一つ、二つと外しに掛かってる。
「や…っ。マズいってば…」
少しだけ身をよじると、成一君はあたしの首筋に唇を押し当てた。
子供のくせに、何でこうもポイントを押さえてくるんだろう。
へなへなとあたしは全身から力が抜けていくのを感じ、成一君の勢いに押し倒されてしまった。
「紀美子…」
あとはもう、なるようにしかならない。
体は抵抗を完全にやめてしまっているし。
成一君のキスははだけた肩にも攻め込んでくる。
「紀美子、可愛い」
顔だけ見れば、絶対成一君の方が可愛いのに。
あたしの胸の少し上にキスをした成一君は、唐突に身を起こした。
…えっと?
「時間だ」
そう言って、成一君はあたしの服を直していく。
「時間って?」
脱がされるのと同じように、成一君のなすがままになりながら、あたしは問う。
「家庭教師の時間。長くいたら不審に思われるだろ?」
テキパキあたしの髪を手グシしたり、問題集の採点に取りかかった。
もうあたしは呆然と見てるしかない。
「…もしかして、計画的犯行?」
「正解」
ニヤリと成一君は笑う。
「契約時間をどのくらいオーバーしても平気か、あるいはおやつを持ってくるタイミング、それと勉強の進み具合などを考えた結果、今ならここまで行けると判断した」
「ボタン外すタイミングとかも?」
「あたりまえだ。思ったより紀美子が抵抗しなかったから、第二ボタンまで行けた」
あたしは顔を赤くする。
て、抵抗出来るわけ無いじゃん。あんなキスされたら、力が入らないよ。
「…そういえば、口にキスしてくれなかったね」
「欲しかったか?」
あぅ、なんかヤラシイ会話。
「別に」
あたしはそっぽを向く。
気配で成一君が肩を揺らして笑うのがわかった。
「それは別のご褒美だ」
ますますもってヤラシイ…。
…でも何か物足りない。
せっかく覚悟したのに。
うわっ!あたしが一番ヤラシイかも!?
「勉強がはかどれば、もっと先までしてやるよ」
「…あぅ。顔に出てた?」
「めちゃめちゃ物足りなそう。紀美子は解りやすいな」
「ほっといてよ」
「そう怒るなって」
成一君はすねてるあたしを宥めながら、それはそれは優しく笑っていた。
「…成一君」
「ん?」
「いつもイライラしてたのって、あたしがその勉強のはかどり具合が悪いせい?その…早く終わらなきゃ、手を出せないから」
「やっと解ったか」
コツンと、成一君はあたしのおでこをつついた。
「この日をどれだけ待ってたことか。やっと言える…好きだよ、紀美子」
「さっきから、たくさん聞いてるよ」
「もし、普通に言ってたら、本気にはしなかったろ」
「…うん」
「僕は本気なんだ。紀美子と恋人になりたい」
成一君はあたしの髪を一房取ると、そっとキスをする。
あたしは髪の先まで神経が通ってるみたいに、そこだけが異常に熱くなった気がした。
「里村紀美子サン。僕とお付き合いしていただけますか?」
「ズルいなぁ。ここまでされて嫌だなんて言えないもん。…よろしくお願いします。進藤成一君」
成一君はガッツポーズをした。
アメリカ人ばりの、オーバーリアクションだ。
「あ、この事はご両親にまだ秘密にしろよ。家庭教師ゴッコしてなきゃなかなか会えないし、手を出したとなったら僕の将来が危ないし」
「…だね」
それは痛いほど良くわかってる。
「とりあえず採点も終わったし、今日は帰るな」
「うん」
成一君は荷物をまとめた。
それから、ふとこちらに振り返る。
成一君は笑って言った。
「明日も勉強頑張れよ」
それから顔を近づけてきた。
「え?ちょっ…」
今度こそ口にキスされるのかと身構えたけど、そこを通り過ぎて、耳に直接囁きが吹き込まれた。
「明日を楽しみにしてるよ」
ふぁっ。それってどういう意味!?
再び煙を上げるあたしを見て、成一君はくすくす楽しそうに笑っていた。
悔しいけど、あたしは完全に成一君にハマってしまったみたいだ。
こんにちは、ゆーりっどです。
甘ったるいのを書いてみました。えっちぃですね、成一君。
家庭教師の大人番や、男女逆とか考えてみたりもしたんですが、やはり、この二人が一番書きやすかったです。
…普通じゃあ、つまらないし(笑)
今後どうなって行くかは考えてませんが、成一君なら何とか出来る頭を持っていそうですね。
あ、ちなみに、成一君の家は一般家庭で、将来的に紀美子の父の会社に入ることを条件に、ただで学校に行かせてもらっているという、どうでもいい裏設定もあります。
…まったくもって、蛇足でした。
ではでは、この辺で失礼します。またお会いしましょうo(_ _*)o