34.推測される真実
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「サント王国の、国王? ギャレット、あなた何を言っているの」
あなたはサント王国からの留学生で、あちらの国のフォール子爵家子息でしょう?
「ふん。フォール子爵は、俺の養父に過ぎん。実の兄から謂れのない罪を被せられ、非業の死を迎えることになった実父から幼い俺を託された忠臣よ」
えーっとえーっと。ちょっと待って。
死に戻ってからの私は、サント王国史も勉強したのよ。たしか、現国王の弟は麻薬に溺れて死んじゃったのよね。だからサント王国では麻薬を厳しく取り締まるようになった、はず。
「ねぇ、あなたのお父様って、麻薬に溺れて死んだ王弟なの?」
「違う! それは現王が父を辱めるために流布した嘘だ!!」
うーん。どっちが本当カナー?
でもなー。うーん。
「まぁ私には真実が分からないから。でももう一つだけ。……サント王国の王弟さまのご子息ということは……ギャレット、あなた年齢詐称しているのね? 私と同じ歳なんてありえないわよね!」
「……嘘など、ついていない。留学生が同じ歳だなんて規定はないからだ!」
「ナンデスッテ?!」
そうなの!?!?
「エードルンドの貴族子女の入学は年齢が決まっているそうだがな。国外からの受け入れは各国によって学生でいる年齢が違うため、留学生の年齢は規定にないのだ!」
「えー。つまり、30過ぎて学園の制服を着て学生やってる童顔のおっさん」
「失礼なことを言うのはヤメロ!」
ちょっと声が震えてましてよ? ぷぷぷ。顔真っ赤ね。まぁ言葉にするとすごい破壊力だものね。
「同年代の女性に相手にされないからって、経験値の薄い年下を騙すのよくないわよ? やめなさい?」
いるのよねー。えらそうにできるからって年下と交際したがる男。大抵、同年代の女性と青春する相手として選んでもらえなかったタイプ。失敗から学んだ無駄知識と経験を駆使して若い子を騙すのよねー。
って。やだ自分を刺しちゃった。自分の胸まで痛いわ。イタタタタタ。
私ったら、男選び失敗のお約束を選択しすぎでしょ。
「うるさいうるさいうるさいっ! 時を戻せるお前の力で、亡き父の無念を晴らすんだ! ただ父より先に生まれただけで王となった僭王を排除する。サント王国を正しき道へと導くのだ!」
すっごい早口だった。あー。痛いとこ突いちゃったかー。ごめんごめん。でも年齢詐称については、あとでミリーちゃんに伝えとこ。きっと目を覚ましてくれるだろう。
見開かれた目は血走っているし、なんなら口角には泡が溜まっていた。うう。きちゃないよぅ。そんな顔を近づけないで欲しいわ。
あぁ、なんでここにラーンナーお姉さまがいらっしゃらないのかしら。しばらくあの凛々しいお顔を見てもいないわ。同じ邸内にいても、姉妹らしい会話なんてしたことないんだけど。でもたまには廊下ですれ違うと笑顔で挨拶を交わすくらいはする。それがあるかないかだけで一日が明るくなったり寂しくなるんだから、家族って不思議ね。
でもそれは学園を卒業後、無事に従騎士になられているからだわ。おめでとう、次姉さま。
ただ、末の妹は、肝心な時に傍にいて貰えなくて残念です。
すべて私が場当たり的なのがいけなかったんですけどね。えぇ。大失敗です。でも反省はいますることではないので。後ほどゆっくりしますわ。
つい憎さが先に立って突撃しちゃった。挙句、余計なことまで口走ってしまったことを悔やむ。取り返しが付かないんだけど。あー、失敗したわー。
あんまりにもギャレットが気持ち悪かったせいか、一周廻って冷静になれた。
感謝はしないけどね。
冷静になったので、ひとまず訂正を入れてみる。
「現王と王弟さまの遺恨についてのコメントは差し控えさせていただきます。でも、サント王国は、男子優先長子継承制を取ってますね。あなたのお父様より先に生まれたなら、現国王は長子ということでしょう? ならば現王こそが正統な継承者です」
ギャレットって本当に王弟の息子だったっぽいわね。全然気が付かなかったわ。まぁ麻薬に溺れた王弟の子だっていうのはマイナスにしかならないと思うんだけど。
あぁだから国境を越えての旅の途中で体力が尽きて倒れたのか。
スキャンダルで死んだ王弟の子供を引き取ったものの、30過ぎても働いてなくて異国に留学したがるような男に、そんなにお金は渡せないだろう。フォール子爵家がよほどの資産家なら別だろうけどね。
でも、聞いたことないもんね。サント王国のフォール子爵家については、前の私はあれほど情報を欲しがっていたのに。
どんなに大きな商家のお客様でも名前を知らなかった。つまり、サント王国でも冷遇されていたような家なのだろう。
あぁ、でも。
初代国王の時を戻す力を知って、その力で実父を生き返らせるつもりでターシャ・ヴァローを連れて帰りたかったのか。
それが本当ならば、ギャレットは、あの娼館や町医者とグルだった訳ではないのね。




