【後で後ろの番号直します。学生時代挿入話です。もっと書きたい気もするけどそういうお話だらけなのでとりあえずここだけ】
完結済にしておきながら、書いておけばよかったなーと思った部分を挿入しておきます。
長くなっちゃいましたけど分割して入れるなどの作業はまた後日させてください。
もっと書きたくなるかもしれないしw
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「なんでこんなことに……」
「なんでも何も。君は侯爵家の令嬢じゃないか」
「だから、なんで……」
思わず遠い目になる。
なりもする。
二度目の学園生活は、勉学にも励んで、令嬢たちとも沢山交流を持って、お茶会にだってお呼ばれだけじゃなくって招待状を出す側にだってなっちゃったりして、ヴァロー侯爵家の令嬢として相応しい教養と社交性を身に着けて、ヴァロー侯爵家のためになる婚約者を見つけるつもりだったのに。
「なんで私が、生徒会に入ることが決定事項なんですか!」
生徒会副会長がバル……じゃなかった、ラインバルト殿下なのは分かる。一年生だけど、王族だし。
けれど私まで生徒会の役員、それも庶務係にされたのは何故なのか。
「もちろん一年生で私の次に爵位が高いのは君だからだよ、ヴァロー侯爵令嬢」
「うぐっ。でも……」
前回の私は、生徒会に呼ばれたりしなかった。
成績が、駄目ダメ過ぎたからか。いや、性格的に無理だったな。うん。
誰とも目線合わせない生徒会役員とか役に立たなささ過ぎるもんね。分かる。
「生徒会役員の中で唯一業者との接点が生まれるのが庶務なんだよ。ターシャなら、限られた予算の中で最大級の成果が望めるだろう?」
貴族学園だから、安く上げるための交渉が必要な訳ではない。
予算内で手に入る中で、ただひたすらにより良い物を商人に用意させるためには、学生相手だからと馬鹿にされない交渉が必要になる。
「だから、私の知る中でもっとも適任だと思う君を、王族たる私が推薦した」
にっこりと笑って告げられてしまっては、受けるしかない。
なんて傍迷惑な。
「くっ。……えぇ、えぇ自信がありますわ! 謹んで拝命いたします、ラインバルト殿下。ですが、私を敬称なしに名前で呼ぶのはおやめください」
王族の下命であるならば、侯爵令嬢として受けなければならない。嫌だけど。すっごく嫌だけれど、それくらい分かってる。
それでも名前を呼び捨てにするなという主張だけは、言わせてもらわなくっちゃなのよ。
「あはは。頼んだよ、ターシャ」
私の真剣な訴えを軽く笑い飛ばした腹黒王子殿下によって、私の生徒会入りは決定となったのだった。とほほ。
そうして、絶対に一年でやめてやろうと心に決めていたのに。
結局翌年二学年になった私も、生徒会役員として忙しく過ごすことが決定した。
しかも今度は昨年度バルが務めた副会長だ。勿論、バルの推薦である。
なにが『今年は私が会長なのだ。ならばそれを支える副会長はターシャ、君しかいない』なのよっ。
ふっざけんな。くっっそがあぁぁぁ!
「なにか仰いましたか、ターシャ副会長」
「いいえ? なにも」
ほほほほほほほほ
令嬢としての微笑みを浮かべて笑って誤魔化す。
相手もそれ以上踏み込んでこようとはしない。それがルールだからだ。
「ふふっ。あれですよね、ターシャ様は、ラインバルト会長の事を思い出してたんですよねー?」
しかし世の中には堂々とルールを破ってくる者もいる。それが許されるほど親しい関係だと誰かに誇示したいこともあるだろうが、今この発言をしたミーア・デレル子爵令嬢の場合はただの平常運転でしかない。いつものことだ。
「ミーア様。有志としてお手伝いを申し出てくださるのなら、お口ばかり動かしてないで手を動かしてください」
常のことなのでいちいち反応する方が馬鹿らしい。取り合わずスルーするのが一番だ。
「やだ、ターシャ様ったら。突然の下ネタ発言ご馳走様でーす」
コノヤロウ。怒りのまま、いつも携帯している扇子で殴ってやろうかと思ったのに。
私がそれを手にする前に、横で一緒に作業をしていた庶務のセシア・リシュパン伯爵令嬢が、その下品な口をぎりりと摘まみ上げた。
「いひゃいっ。いひゃいれひゅ~」
「だまらっしゃい。貴族令嬢として不適切な下品な女の手伝いなど必要ありません。今すぐ部屋から追い出して参りますわ」
ミーアは生徒会役員ではない。あくまで有志、お手伝いでしかない。追い出すのも、他の手伝い希望者に交代を命じることだって簡単なことだ。
切れ長な瞳に剣呑な光を浮かべた今のセシアならばそれ以上のことも容易くやってのけそうだ。
「いやです。ごめんなさい。ちゃんとお手伝いさせてくださいませ。ターシャ様のお役に立てなかったと知られたら領地に帰れなくなっちゃいますぅ。両親と、なにより領民からぶっ殺されてしまいますよぅ」
「ならば、静かに手だけを動かすのですね」
「はーい。……でもぉ、リシュパン伯爵令嬢は気にならないんですか?」
しつこく食い下がって話し続けようとするミーアに、セシアが拳を握る。
「まだ何か」
立ち上がったセシアがその拳を振り下ろす前に、と慌てたミーアが叫んだ。
「ターシャ様と会長の仲が!」
「ミーアさま」
思わず額に手を当て目を閉じる。女が集まれば恋バナが始まるのは何処も一緒かとがっくりと肩を落とす。
「……それは、気になりますわね」
「ですよねぇ!」
「セシア庶務まで何を言い出すのです。馬鹿らしい。私ごときが王子殿下とどうなるなどあり得ません」
馬鹿らしいと一刀両断してやる。
「えー? ターシャ様には、“如き”なんて言葉は似合わなすぎですっ。ターシャ様以上の令嬢なんてこの国にはいませんもん。きっと会長もそう思ってますよぅ?」
「私は駄目です」
「なるほど。たかがこの国の第二王子ごときでは女神たるターシャ様には役不足ですね」
「確かに!」
突然意気投合して頷きあう二人を前に頭痛がしてきた。
「セシアまで。冗談でもおやめなさい。不敬が過ぎます」
「えー、でもぉ、会長は絶っ対に! ターシャ様のことがお好きですよねぇ!」
へらりと笑って断言するミーアのその言葉が、どうしても我慢ならなかった。
机の下へ隠した手をギュッと握りしめた。
姿勢正しミーアを視界から完全に外す。
「……ミーア庶務」
「はい、ターシャ副会長」
「作業の邪魔だわ。それを外に捨ててきて」
「はい」
きちんとわきまえることが出来るセシアはスッと表情を引き締め頭を下げた。
今度は問答無用でミーア・デレルの腕を取ると、少し強引に立ち上がらせた。
そのまま廊下へ向かって歩き出す。
「え、あっ。ヤダヤダヤダ。冗談ですよう」
「……」
「あー、ターシャ様ごめんなさぁい」
「…………」
「失礼します」
「あーっ!!!」
ぽいっと廊下へと追い出されたミーアは、それでもしばらくはそこで粘っていたようだが、結局廊下で騒ぎを起こすことなく立ち去ったようだった。
「セシア庶務、いいえセシア・リシュパン伯爵令嬢にお伝えしておきます」
「はい、なんなりとお命じください」
私の言葉に、セシアも表情を引き締める。
「生徒会の仕事以外で、私が、ラインバルト殿下の横に立つことはありません」
「……」
「嘘に惑わされること無きよう。もし根も葉もない嘘の噂を耳にすることがあったら、訂正をねがいます」
「……しかし、私から見ても、あの方は、ターシャ様を」
セシアの言葉を、首を振って遮る。それ以上は、駄目だ。言葉にさせる訳にはいかない。
「私ね、ヴァロー候爵家のために生きていきたいの。領民の笑顔を守りたい。そうすると心に決めているの。王都で生きることを定められているあの方の手は取れないわ」
きっぱりと、はっきりと告げる。告げているつもりだけれど。
私は今、笑顔を浮かべることができているだろうか。声が震えたりしていないだろうか。
わからない。ただ、いまこの言葉を発することが、苦しい。
セシアの視線を感じるけれど、その視線に目を合わせることすらできなくて、ひたすら、書類を処理する振りを続けた。
本当は、そこに書いてある文字など一文字たりとも頭に入ってこないけれど。
それでも、つっかえることなく言うべき言葉を最後まで言い切れた。それだけで自分を褒めたい。
「ターシャ様は、本当にそれで……」
話し終えても書類から目を上げることもせず、それでも意を決したように声を掛けてくれているセシアの顔をみることすらしようとしない私を説得することを諦めたのか、セシアは肝心な部分まで言葉を続けることはなかった。
言葉を呑んで、ゆっくりとセシアが頭を下げた。
「かしこまりました。我が領地を救ってくださった女神のご命令ならば。必ず」
くっ。女神呼びされるの、本当にこっぱずかしいんですけどっ。
けれど、ここで恥ずかしがってる場合じゃ無さ過ぎる。
「ありがとう」
セシアなら、きちんと根回しをしてくれるだろう。
これで、以降この手の噂を耳にすることは無くなる筈だ。
『ターシャ』
いたずらっぽい笑顔を浮かべて手を差し伸べてくるあの人が浮かんできたけれど、それを掻き消す。
娼婦でいた記憶の残るこんな私には、王子である彼の手を取るなど許されない。
あり得ないことなのだから。
ミーアたちとお茶会するとことか
バルが周囲を威嚇するとことかもいつか書きたいなー
(2026.9.19)




