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[k]night [silent - k - 黙示]  作者: 成橋 阿樹
第一章 使命
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第18話 resonance of the soul

(サー、レイフ様。グレイブに戻りませんか)


 Valkyrie(ヴァルキリー)……彼女の姿が消えてもその場に立ち尽くしていた僕たちだったが、レミュのその言葉に中へと戻り始めた。


 だが……やはり気になる事がある。


 何故……このタイミングで現れたのか。

 彼女にしてもmilitia (ミリシア)にしても……だ。


 集められたんじゃなく、集まった……か。



 思う事は互いに同じだったようだ。

 グレイブの中へと足を踏み入れたところで、僕とレイフは立ち止まった。


「……カイ」

「……ああ」


 中には入らず、踵を返すと僕たちは歩き始めた。

 

(サー、レイフ様、どちらに向かわれるのですか?)


 どうしたのかと不思議そうに訊くレミュに僕は答える。


「アンダーワールドのその先に向かう」


(サー……?)


「レミュ。このアンダーワールドはオーバーワールドの地が反映されている。それは支配している地という意味だ。つまりは領地って訳だが、あのmilitia……彼女が言っただろ。集められたんじゃなくて集まったんだって、さ。じゃあ、そもそもそれは何処から来たって訳だ。キミだってリディアのような領主が他にもいる事は知っていただろ。アンダーワールドと単に言っても、その領域は分かれているはずだ。この辺りがリディアの領地のように……ね。だから……その先に向かう」


(ですが、サー)


「分かっているよ、レミュ。敵地に赴く事がどんな事かって事はね……僕もレイフもよく分かっている。だからこそ向かうんだよ」


(……サー)

 不安そうな声だ。心配するのも分かる。


 レミュの不安を和らげるように、そっとレミュを撫でると僕は言葉を続けた。


「心配はいらないよ。それに関しての答えは前に話した通りだ」



『なあ……レミュ。リディアの他に届いた招待状……あれがそうだったんだろう? 他にもいると言っていたしな』


『だけど招待状というよりは……交渉条件。僕を引き込む為のね……それはいい条件が記されていた事だろう、何も分からずアンダーワールドに堕ちた僕を惑わすには十分なものだ』


『わたしは……どうしてもサーをレディのところへ……サーに選択をさせたくなかったのです』



『だから僕は信じたんだよ、レミュ。キミもリディアもね』


 レミュが招待状を突き返した時に、既に交渉は決裂している。

 それに、僕の思いは変わる事はない。



「レミュ。僕たちの選択に間違いはないよ」


(サー……)


「カイの言う通りだよ。俺たちは交渉するつもりはない。militiaが集まったというのも、向こう側にしてみれば切羽詰まってるって訳だ。選択肢の一つには援軍として引き入れる事もあったんだろうが、そもそもmilitiaに交渉は無理な話なんだよ」


(それは……つまり、どういう事でしょうか……?)


 やはり、思った事はレイフと同じだと、後を続けるように僕は答えた。



「そこに攻め入っている『knight』がいる」



 Valkyrieは戦場に現れる死の精霊だ。彼女が姿を見せたというなら、今まさに戦いが行われていると考えられる。このアンダーワールドでも、だ。

 だが……歩を進めたはいいが、どの方向に向かえばいい。

 進める足は方向を知っているのか……分からないながらも足は止まる事はなかったが、どれくらいの距離があるだろう。


 ……急ぎたい。


 歩を進めても進めても、目指している先は見えない。

 辿り着く事は出来るだろうか。


 うっすらと浮かび上がってきた靄が次第に濃くなる。

 また……何かが……。

 僕とレイフが武器を構えようとした瞬間。


(サー、レイフ様)


 レミュの穏やかな声に手が止まった。


(彼らが力を貸してくれるそうですよ)


 靄が姿を象り始める。


 ああ……そうか。

 この辺りはレミュたちのグレイブが点在しているんだ。

 その者たちが僕たちに力を貸してくれている。


 靄が象った姿は。


 ……馬だ。

 それも二頭。馬具も整っている。


「レイフ」

「ああ。ありがたいな」

 僕たちは馬へと近づき、首を(さす)ると(あぶみ)を履き、騎乗した。


「頼んだよ」

 そう言って僕は、馬を走らせる。

 レイフはポールアックスを背負い、同時に馬を走らせた。


 速い。いい馬だ。

 示せる方向は僕たちにはなかったが、どうやら場所を知っているらしい。僕たちをそこに連れて行ってくれるようだ。


「レミュ。振り落とされないようにしっかり掴まっているんだよ」


(はい。サー)



 疾走する馬に身を任せ、暫く距離を行ったが、耳に捉えられる音に手綱を引いた。

 馬の足を止めた僕にレイフが並ぶ。

「勘が当たったようだな、カイ」

「……ああ」

「どう攻める? 音を聞く限り、今までの比じゃない。なにせ、目で捉える前に耳で捉えられるくらいだからな。無闇に突っ込めないぞ」

「……分かっている。だが……」


 僕は馬を走らせる。

「カイっ……!」

 僕の行動にレイフは驚いて声をあげたが、僕を直ぐに追い掛けた。



 ……やっぱり。


 確かに相手の数は多い。二百……いや、三百といったところか。

 だが、その数を圧倒している力がある。


 壁のようにも二列三列と並んだ長槍兵を単身で切り込み、態勢を崩していく。その人壁の開いた穴を抜け、次の人壁へと向かう。

 相手からすればたった一人だが、その一人に多数の槍が集中すればする程に、味方同士が絡まり合って隙が大きくなる。

 逃げ道を塞ぐようにその者の周囲を囲みだすが、その瞬間に数人を倒すと膝をつかせた背に乗って飛び上がり、更に向かって来る長槍兵の頭を足場に飛び越えていく。

 一人を追うが為、一箇所に集中し過ぎた所為で押し合いとなり、その混乱が相手側同士の戦闘になった。



 小高い丘から見下ろす光景に、目覚めたようにもはっきりと僕の意識が叫びをあげた。



 舞うようにも鮮やかに周囲を斬り開いていった……『knight』が手にしているのは『dual sword(デュアル ソード)



「ラドっ……!!!」



『あなたが会いたいと望む相手が『knight』なら、会えるんじゃないかしら?』



 ラドル・グレンフィル。


 やっと……会えた。

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