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[k]night [silent - k - 黙示]  作者: 成橋 阿樹
第一章 使命
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第16話 coup de grace

「はは。カイ……まさか|man at arms《マン アット アームズ》にって訳じゃあないだろう?」

「まさか。例えknightになろうとも、主に忠誠を尽くせない者と組む気はない。表向きに忠誠を誓ったとしてもそれは封建に狙いを定めての事だ。領地を与えられれば、欲が芽生え、それが反乱の元ともなるだろ。そこから侵略が始まる。確か……訊くまでもなく、答えは同じだったはずだが……? レイフ? まさか一致していない、なんて今更言うなよ?」

 ちらりと横目にレイフを流し見し、ニヤリと口元を歪ませ、笑みを漏らす。

 僕のその仕草を感じ取るレイフは、ははっと笑うと答えた。


「ああ、勿論、一致しているし信じてるよ、カイ」

「 ほら、見てみろよ。向こうも答えが出たようだ。ふん……双方に利点がなければ交渉など成立しない。そもそも、選択肢を持って交渉しに来るなど、脅しに来たも同然だろ。信じろというのは無理がある」

「それは(もっと)もだな」

 レイフの笑みの含んだその声に、同時に足を踏み込む。


 それは向こうも同じだった。

 mercenaryが一斉に僕たちに武器を向ける。

 多勢に無勢といったところではあるが……。

 周囲にも警戒していたが、どうやら潜んではいないようだ。


 長柄の武器が多いな……。

 ロングソードやハーフソードを持つ者もいるが、斧と槍、(かぎ)を組み合わせた形状のハルバードを持つ者、柄の先に鎌のような刃、そこからフックが伸びているウェルシュフック……か。

 そして、持つ盾はストラップ式で腕に固定されているだけあって、両手が使える状態だ。

 完全防備の上に打撃、斬撃にも向くハルバード。下手すれば剣を折られる。ウェルシュフックにしても、あのフックに引っ掛けられれば動きを乱される。


 相手の数から考えれば、こっちは確かに劣勢だ。

 向こうにしても数を考えての事だろう。

 knightが揃う前に抑える気でもあったか……。

 やはり僕たちの事を知っての事、か。


「カイ」

「ああ」

 声掛けを合図に僕とレイフは突撃する。それは向こうも同じだ。


 数に飲まれてしまいそうだが……ここは。


 剣を握る僕に向かって来るのは剣を握るmercenaryだ。

 どうにも短絡的だな……。

 走る僕の肩にしがみついていたレミュが柔らかにも光を放ち、肩や胸などを防御するハーフプレートアーマーに変わった。


 ……レミュ。


『大丈夫です。今度はわたしがあなたの鎧となります。サーに傷を負わせたりはしません』


 思わず、ふっと笑みが漏れたが。

 目前に迫ったmercenaryが剣を振り翳そうとする瞬間、僕はmercenaryの間を擦り抜け、長柄武器を持つmercenaryに向かう。

 不意を突かれた剣のmercenaryの一瞬の隙を狙って、レイフが剣を叩き落としていく。その音を耳にしながら僕は下方に剣を構え、長柄武器を僕に向けるmercenaryの柄を次々と斬り落とした。

 武器を失ったmercenaryは攻撃手段を体術へと切り替えてくるだろう。直様(すぐさま)に僕は、剣が生かせる距離を取ってプレートアーマーの首と胴の隙間を狙い、レイフはポールアックスを振って薙ぎ倒し、mercenary全てを倒した。


 僕とレイフは倒れたmercenaryをじっと見つめていた。


(サー、レイフ様)


 レミュは猫の姿に戻り、僕の肩に乗る。

「レミュ、ありがとう」

 そっとレミュを撫でながらも、mercenaryに目線を向けていた。

 疑問があった。


 それはレイフも感じた事だろう、レイフから漏れる呟きに僕は頷いた。


「……弱いな。本当にmercenaryか……?」

「……ああ、そうだな。militia (ミリシア)……民兵と見た方がよさそうだ」

「切羽詰まってんなあ……一体、何処から集められたんだ……?」



「集められたんじゃなくて、集まったのよ」


 ……誰だ?


 間を割って流れた声にレイフと共に振り向く。


 いや……それよりも。


 気配もなく、僕たちの背後を取った。

 だが、僕もレイフも全く気づかないなど……。

 それとも……声と共に今、現れたばかりか……。


 一つに束ねられた長い髪……その黒髪と気の強そうな雰囲気がリディアを思わせるが、彼女は身体的にも強さが備わっていると感じた。

 ハーフプレートアーマーに身を包んだ彼女は、|femaleフィーメイル knightナイトのようだ。

 敵意はなさそうだが、この女……。


 彼女がゆっくりと僕たちに歩を進めて来るが、僕とレイフの間を抜け、倒れた一体のmilitia へと近づいて行く。

 そのmilitiaの手が僅かにも動きを見せた。


「おい!」

 レイフが警戒を呼び掛けるが、彼女は動きを止める事はなかった。


 僕とレイフは彼女を追い、遠ざけようと手を伸ばした瞬間。


 彼女の手が上から下へと、militia目掛けて大きく振り下ろされた。


 militiaが動きを見せる事は、もうなかった。



「お前……」

 僕は、伸ばした手を彼女に触れる事なく、そっと下ろす。

 彼女の行動は……彼女が背負ってきたものなのだろう。


 彼女の手に握られているのは、細身の長剣『ミゼリコルド』だ。

 ミゼリコルドは刃が薄くて鋭く、プレートアーマーの隙間を突ける。

 戦闘で深傷を負っても死に至らず、苦しむ者を楽にする為に一撃で殺す……慈悲の一撃と言われるものだ。



「……あなたたちには分かるでしょ……」


 彼女は僕たちへと体を向けると、引き抜いたミゼリコルドを抱くように胸に抱えた。

 まるで、ミゼリコルドが彼女を支える軸であるようだ……。


 彼女の表情が悲しげに揺れる。

 そして、発せられたその言葉が、抱えた思いの決断に迷わせない事を知る。



「敵味方問わず最期を迎えさせるのが、この手である事を」

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