第13話 Free company
剣を手にした時にもその感覚は得ていたが、仲間が出来たからなのだろう、ふわりと纏うような感覚は目に見えてのものとなった。
『|coat of arms』を掲げた外衣、マントだ。
この邸宅を訪れる度に、与えられるものが増えていく。
リディア・ハーシェル……彼女の事は殆ど分かってはいないが、惹きつけられるものがある。
それは彼女の美しさというよりも、会いたいと願う者がいるという、その深い思いに共感しているからなのだろう。
レイフも彼女に忠誠を誓うのは、やはり感じるものがあるからだ。
「サー・レイフ・リッジウェイ。あなたにもあるのね……譲れない思いが」
「ああ。果たせなかったものがある。俺が仕えてきた主が今、どうなっているのか……気掛かりでならない。このポールアックスは主が俺に与えてくれたものなんだ。初めの装備は自分で整えたが、俺が準備した武器は剣だった。剣を持つknightは多いが、斬るというより打ち付けるように使う。まあ、プレートアーマー相手に斬撃は向かないしな。剣は斬るというよりも突くという使い方だ。だが、プレートアーマーの隙間を突くのは難しい。俺には向いてないと思ったよ。だから俺にはコレが向いてると、主がね……」
「……そう。その方は、個人にも目を配っていたのね」
「ああ。俺たちを駒として扱わなかった。尊敬していたよ。主、自らknightとして戦場に立つくらいだった」
「そう……同じね。主人もそういう人だったわ……」
主、自らもknight……か。
リディアの夫もknightだと聞いているが、領主でもあったようだ。
この邸宅の大きさや装飾からみても、その地位は高いだろう。
レミュたちのグレイブがある場所も彼女の所有のようだし……。
このアンダーワールドは彼女たちのオーバーワールドでの領地が反映されているのか……。
邸宅を後にする僕たちにリディアが言う。
「カイ、レイフ。あなたたちの部屋はあるのよ。そこで過ごしても構わないのよ」
僕とレイフは互いに目線を合わせ、頷き合うと僕がリディアに答える。
「いや……流石に自分の肉体と向かい合って寝るのは抵抗あるからな……それに残りの五人を探すのも急ぎたい」
「そう……そうね」
僕の考えも理解はしているが、寂しさを隠せないリディアに僕は言う。
「レイフも共に探してくれるんだ。見つかるのも早いだろ。近いうちにまた来る事になるよ」
「ええ。待っているわ」
「ああ」
「レミュ。あなたもまた顔を見せてね」
(はい。レディ)
邸宅を出て、レミュのグレイブに一旦戻ろうと歩を進める。
「なあ……レイフ……」
「ああ、気になっているのはdual swordの彼の話か」
「ああ。もう少し詳しく聞かせてくれないか」
「随分と気になっているようだが、もしかしてカイが探してる親友って……」
察しのいいレイフに僕は頷く。
「ラドル・グレンフィル。ラドはdual swordなんだ」
「……そう……なのか」
「レイフ?」
僅かにも声色が落ちた事に、僕はどうしたのかとレイフを見る。
「カイ……俺が見た彼がお前の親友かどうかは分からないが、mercenaryとはいっても彼は|Free companyに属していたようだが……」
「Free company……傭兵団か」
「ああ。正直、そのFree companyにあまりいい話は聞かない。knightに叙任される事のないmercenaryは収入源が限られるからね……要請がなければ独自で稼ぐしかない。略奪なんて日常的なもんだ。それも手当たり次第にね。そもそも、knightならFree companyに属する事なんかないだろ。coat of armsがある身分って訳だしさ……俺だって身分を隠してmercenaryでいたとはいえ、カイに言った通り、俺には目的があった訳だし、言うならばフリーランサーだ。属する必要がない。それにdual swordが他にいないとは言い切れないんじゃないか?」
レイフの言う通りだ。
確かにラド以外にdual swordがいないとは断定は出来ない。況してやFree companyにラドが属する必要がない。ラドもknightだ。
だが……それでも……。
もしそれが本当にラドなら、レイフのようにそうせざるを得ない理由があった……そう考えてしまうが……。
「なあ……カイ。直属軍の兵士が少ない、或いは持たない領主はmercenaryに頼るしかない。言わば援軍だ。一見、強敵なんかじゃないって思えるが、実は策略に長けている。mercenaryは捕虜を領主の為には使わない。自身の利益の為に使うんだ。防具や武器も維持するにも金が掛かるしな。捕虜の身代金がそのままmercenaryの報酬になるんだよ。そういった領主に雇われるmercenaryは……強い」
レイフは当時の事を思い返すように、そっと目を伏せると深い溜息を漏らした。
「俺が見たdual swordの彼は、Free companyに属していたとはいえ、素性を明かす事はなかったようだ。顔も隠していたしね。クールで口数も少なかったが、同じ剣を二本持っている事を聞かれた時、予備だと言っていたのを耳にした。常にdual swordで戦っている訳でもなかったし、一剣でも十分強かったからね。まあ、同じ剣を二本でなくとも、剣を二本持っている奴はいるしな」
「dual swordだと分かったのは、実際、それを見たからだろ。まあ、そう言ってたしな」
「そうだな……目の前で見たからな」
「目の前だって?」
僕は、眉を顰めた。
戦闘中に目の前でって……。
「だからカイ……その人物がお前の親友でない事を願うよ」
「レイフ……お前……」
「ああ。思い出したんだよ……カイ」
レイフは、僕を振り向くと悲しげに笑みを見せて言った。
確証はないが、払拭が出来ない。
レイフの腕前は目にしているだけに、その相手の腕前も確かだ。
どうか……違うと否定させてくれ。
「俺を殺したのは……彼だ」




