【現在】隣の席
「アカリはさ、俺のこと全然意識してなくてさ。
どうしたら意識してもらえるんだろ〜ってヤマダによく相談してたわ。
ヤマダだろ?
俺の気持ちをアカリに勝手に言ったやつは。」
ヤマト君が照れると髪をかきあげる仕草をしながら話す。
ずっと変わらない癖。
でも常に短髪だから、本当に仕草だけ。
それがまた可愛いなと思っていることは
ヤマト君には伝えてはいない。
「たまたま隣の席になって、
初めましてなのに、
最初から私がうるさかった〜とか言ってたと思うけど。」
「いや、正直最初はなんでこんなぐいぐいくるんだろうと思ってたよ。
鉛筆貸して〜消しゴム貸して〜ってさ。
しまいには、『もうサトウ君のは私は自由に使っちゃお〜』とか言い出して。
考えるだけでもすごい人でしたね。」
「え?え?そうだっけ?
そうだった気もする。
私最低じゃない。中学生こわい。」
「こわいのはこっちだわ!
でも、いつもニコニコ笑顔で口下手な俺の話もウンウンって聞いてくれて、
なんか輪に入れない子がいると話しかけてたりさ。
なかなかイイヤツだったんですよ。
ヒカリさんは。
完全にやられましたね。
隣の席から変わった時、関わりがなくなって、
どうしようかまじで焦ったね。」
「なんだ?酔ったの?
よく色々覚えてるね。
なんか恥ずかしくて烏龍茶でも酔えそうだよ。」
「俺、暗記力はないけど記憶力はあるんだよね。
隣の席っていう特権がなくなった時、
ヤマダに言ったのが間違えだったな、、、」
「と、特権って。
でも、私が聞いたのはだいぶ後だったと思うけど。」
「そりゃあ誰かさんに夢中みたいだって話もしてたからね。
さすがに言わなかったんじゃない。」
私は黙ってしまった。
とにかく気まずい。とても気まずい。
「まあ、2回目にまた隣の席になった時は運命だと思ったよね。」
本当に昔のヤマト君からは考えられない話っぷりだ。