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作者: ネギトロ

「桃太郎を呼べ」


渋谷のスクランブル交差点に突如鬼達が現れた。


通行人は一瞬驚いたが、さほど気にした様子もなく通り過ぎている。


きっとYoutubeの撮影かドッキリとでも思ったのだろう。



鬼達は辺りを見渡している。何となくここが自分達が前いた世界と違うことは気付いたようだ。


しばらくすると鬼達は渋谷のスクランブル交差点のど真ん中に腰を下ろしはじめた。





~その夜~


TVのニュースや天気予報で渋谷の交差点が写されるたび鬼達は映った。


あっと思う視聴者もいたが、色々なユーチュバーがいるこの現代、


皆気に留める時間はそう長くなかった。




~夜が明けて次の日~


さわやかな朝のニュースが始まり、渋谷の交差点が映るたびに鬼達は変わらず映っている。


少しずつおかしいと思う人間も出てきたのだろう。


SNSのトレンドで#鬼 #渋谷に鬼 などが検索ワードとして引っかかり始めた。


鬼達は以前として腰を下ろしており、行き交う人間をよく観察しているようだ。


それにしても朝は出勤に登校で忙しい。皆横目で鬼を見ながら通り過ぎていった




~昼過ぎ~


ついに警官が鬼のもとにやってきた。


どうやら事情聴衆するらしい。


警官「ちょっといいですか。皆さん何かの撮影?許可は取っているの?」


鬼達「桃太郎はどこだ」


警官「質問に答えてくれるかな」


鬼達「桃太郎を呼んで来い」


全く会話にならなかった。



警官は追加で鬼達のボディチェックを行った。


これはコスプレかどうかを確かめる目的も含まれていた。


ボディチェックを終えて警官は驚愕した。


コスプレであればどっかに着脱するためのチャックなどがありそうだが、全く見当たらなかったのだ。


警官はあわあわと震えだしてどこかに応援を呼ぶと去っていった。



3日目は朝から慌ただしかった。


2日目の警官の様子が全国のLIVEビデオで配信されており、


瞬く間に検索ワードのトレンド1位となっていたのだ。


この頃になると様々なお調子ものが出てきて、


”(神回)鬼に会って話してみた”


”渋谷の鬼は本当か検証してみた”


などの動画がアップされるとともに、鬼に接触を図るものが増えていった。



肝心の鬼達は、お調子ものから様々な会話や接触をされるたびに、


「桃太郎はどこだ」としゃべるか


相手方を睨みつけるだけで、鬼のイメージとは裏腹に害を与えることはしなかった。




~正午過ぎ~


総理大臣の命令により、自衛隊が渋谷のスクランブル交差点に現れた。


そして、鬼達を包囲するとともに、


24時間以内にそこを退かないと攻撃をすると繰り返し伝えた。


鬼達は自衛隊に向かって


「桃太郎を呼べ」

「桃太郎はどこだ」


と喋るのみであった。



自衛隊が鬼達を包囲したまま一夜が明けた。


自衛隊も鬼達も一歩も譲ることなく、均衡状態が続いていた。


TVでは専門家達がなぜ鬼が突如現れたのか、独自の見解を述べており、


時空のゆがみにより、別世界から鬼達だけが偶然地球に現れた


という見解が最もポピュラーであった。


鬼達は自衛隊に包囲され、銃口を向けられているにもかかわらず



どこかつまらなそうで、やる気を感じられなかった。




自衛隊の警告から24時間が経過した。


ついに、包囲していた銃口からいっせいに火の粉が吹いた。


それは瞬く間に鬼達をハチの巣にするくらいの勢いであった。


薄煙が立ち上るなか、鬼達の様子を確認したところ



全くの無傷であった。


自衛隊員達は何度か銃撃を繰り返したが、効果がないところを悟ると


報復を恐れて逃げ出した。


しかし、鬼達は自衛隊員を襲うことなく、またその場に腰を下ろした。


数週間が立って、鬼達に害がないことが分かると、政府も放っておくようになり、


渋谷のハチ公につぐ、スクランブルの鬼達という一種の観光スポットになった。


修学旅行生などは、鬼達を背景に写真を撮り、SNSにアップして楽しんでいる。



そして、また突如時空のゆがみから、沖縄の国際通りに桃太郎が現れた。


どうやら退治すべき鬼達を探しているらしい。


そして、桃太郎が来たことを鬼達も感じ取った。


そう。桃太郎は鬼達の悪行を桃太郎が退治する物語なのだ。


いまだにこの世界で悪行をしていない・・・・


鬼達は自分の役割を思い出すと、おもむろに修学旅行生の頭を掴んで粉砕し始めた。



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