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「なろうラジオ大賞3」のための物語

時計は知っていた ―迷宮探偵・驚天動地郞のワンダフル推理―

作者: ヤギマルケイト

「時計の謎はすでに解けました」

 探偵は高らかに言い放った。

 探偵・超次元ヶ原(ちょうじげんがはら)驚天動地郞(きょうてんどうちろう)。常人の想像を遥かに越えた超絶推理で謎に挑む。

 誰が呼んだか、その名も“迷宮探偵”。

「1時間ではありません」

 死体は、誰も入らなかった部屋の中に突如現れた。

 奇妙な点がひとつ。

 男の腕時計は1時間だけ進んでいた。

「もっと大きく狂っていたのです。そう……数百年以上」

「数百年だと?じゃあ」

「彼はこの時代の人間ではありません」

 探偵は答えた。

「彼は時間旅行者ですよ。時を越えて、ここに現れたのです。僕には一目で分かりました」

 頭にちょんまげを結い腰には刀、獣の皮をまとって棍棒を握り、何やらあちこちに未来的な装置をつけた被害者の男。その正体をあっさりと見破った探偵の洞察力に、一同は声もない。

「犯人もまた、時間旅行者なのです」

 ざわつく一同。あるいはこの中に、他の時代から時を越えてきた人間が……?

節堂(ぶしどう)さん」

 一人の男に呼びかけた。

「あなたはこの時代の人間ではありませんね?恐らく……江戸時代の人間だ」

「な、何を言うでござる。拙者は」

「そしてウンバボさん。あなたは原始時代から来た」

「ウンバボ!」

 ちょんまげで着物姿の男と、毛皮をまとったほとんど裸の男は驚きの声を上げる。

「では彼らのどちらかが」

「いいえ三雷寺(みらいじ)さん。もちろん未来人であるあなたも容疑者ですよ」

「なっ……」

 機械だらけの宇宙服のようなものを着た男は、すっぽりかぶった丸いフードの奥で目を見開く。

「いくら現代人のふりをしても僕には通じません。これはそう……探偵の勘、という奴です」

 隠していた正体を鮮やかに見抜かれてしまった時間旅行者たち。恐るべきは迷宮探偵の推理力。

 探偵は、残る二人に目をやった。

「というわけで佐藤さんに高橋さん、お二人はお帰りになって結構です。ああ念のため捜査一課の本骨(ほんこつ)警部に連絡を」

「いや待て探偵そいつは」

「ロボットだとでも思いますか?」

 青くて丸い高橋を見つめる。

「彼はただの着ぐるみですよ。僕は見てしまったんです決定的瞬間をね」

 不敵に微笑んだ。

「ロボットは、どら焼きを食べたりはしないんですよ」

 改めて二人を促す。高橋は隅にあった勉強机を腹部のポケットにしまい込むと、佐藤と共に出ていった。

「さて」

 探偵は残る三人を見回した。

「ではこの中の誰が、恐るべき犯行を行ったのか──」



 迷宮探偵・超次元ヶ原驚天動地郞。

 今日もまた、ひとつの謎が迷宮の奥底へと消えていく。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 笑ってしまいました。 5分アニメで見たいです(笑)
[良い点] ロボットはどら焼きを食べない……確かに! 固定観念を利用した小ネタが散りばめられていて面白かったです! しかし丸くて青い彼のことを誤解するとは、もしや迷宮探偵こそトラベラー……!?
[良い点] 『勘でも推理でもないだろ!』という漫画常套のせりふが頭に鳴り響き、陳腐な手段と思いつつも笑ってしまいました。その挙げ句事件は「迷宮入りしました」っていう「解決(オチ)」をするんですよね。 …
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