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侍女いわく私は悪役令嬢らしい  作者: 日華
第1章 悪役令嬢への分岐点は幼少期にあり
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出会いと原因

「今日からお嬢様にお仕えすることになりましたディパーノ・ルチルクォーツです。よろしくお願いいたします。」


今日から私には専属侍女が付く。私と同じく8歳にもかかわらず、魔法に秀で、子爵となった祖父譲りの頭脳を持った天才らしい。

お父様は彼女からその知識を学び、当主として成長できるよう彼女をつけてくれたのだろう。


まだお茶会にあまり出席できないし遊ぶことなんでほぼ無かったから同世代の子は新鮮ね!長い付き合いになるだろうし、ちゃんと勉強しつつ、友達のようになれるかしら?

でもなによりしっかり期待に応えないと。


「スコーティアよ。私が公爵家の跡取りとして成長できるようこれからよろしくね!」


私が少し緊張しつつも笑顔で答えると彼女は一瞬びっくりしたような顔をしていたけれどすぐに元の顔に戻っていた。


彼女が来てから数か月がたった。彼女は噂通りの頭の良さで、私が家庭教師に学んでいるときは後ろに控えているか、使用人の仕事内容を覚え、こなせるようになるべく動き回っているはずなのに私が復習でつまずくとさらりとアドバイスしてくれた。


上位貴族でないと学べないような分野も興味がありそうな様子だし、彼女と一緒に学ぶことでより質の良い授業になるだろうと思い授業はともに受けることにした。(特に魔法学の授業の時の熱の入りようがすさまじい、もちろん座学しかまだできないけどおじいさまの遺伝なのかしら?)


また使用人としての仕事の覚えも早く、彼女の入れた紅茶はすでに1番といっていいだろう。

なにより甘いものが大好きという共通点があり、彼女が考案したスイーツを私が料理長たちに頼んで作ってもらったところ斬新かつ絶品だった。


特にイチゴのタルト!!


彼女は「実現できたのはお嬢様のおかげです!うちじゃ絶対作れないし、あの阿呆者たちには食べさせる価値もない。」と言っていた。


彼女、おじい様以外の家族に対して結構辛辣なのよね。一度愚痴だけでも聞こうかと提案したら「お嬢様のお耳が穢れてしまいます。」って全力で拒否されてしまったわ。


それに、彼女が話してくれる物語はとても面白い、私は歴史書などばかり読んでいたとはいえ,かなり珍しいものが多いように思うけど…(特に恋愛物語の設定や事の成り行きが現実よりかなり自由なのよね)


なにはともあれ今ではディー、スティア様と呼び合う仲になったし、ほかの使用人たちともお菓子や植物の観察勉強を通して以前より仲良くなった。


ディーは若干私を過大評価しすぎなところはあるけど彼女たちのこと思うとより当主教育に励めるわ。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


緊張を顔に出さないように注意してなんとか挨拶をした。


すると「スコーティアよ。私が公爵家の跡取りとして成長できるようこれからよろしくね!」


まるで鈴のような可愛らしい声が聞こえ頭を上げると淑女らしくも幼げのある妖精がいた。思わず驚いてしまい、持ち直すのに必死だった。


ゲームでの彼女は確かに絶世の美女ではあったが、その笑顔は毒々しいものだけだったはずなのに。(ヒロイン(ジェーン)をいじめてるときとか…)

どうやら最悪の前提条件ではなかったようだ。


妖精のような今の彼女のままでいてくれればいいのだけれど。


彼女に仕えて数か月がたったが日を重ねれば重ねるほど、彼女はゲーム内の様子とかけ離れていた。

むしろ、子爵家では学べなかった分野の授業をただの使用人である私も共に学べるように計らってくださった。

特に魔法学は前世の世界に存在していなかったので、新鮮だし、面白くて仕方ない。(一刻も早く実践したい!!)


甘いものが好きな私が前世のスイーツに焦がれてそれとなく話すと料理長に提案して作り上げてくれた。なにより美味しそうに食べるお嬢様が可愛すぎる。

特にイチゴタルトが気に入ったようだ。

破顔させて「美味しい!」とおっしゃった姿は一生忘れることがないだろう。

新たなレシピに職人魂を燃やす料理人たちを筆頭に使用人全員があの笑顔にやられてしまった。しかたない。


ーーなぜゲームで彼女はあんな悪女になったのか。


ここで過ごすうちに少し引っかかることがあった。

どうもスティア様は立派な当主になることにこだわりすぎている。

貴族としてもちろん大事なことではあるがそれだけが彼女の価値ではないと思うし、公爵夫婦の愛情もしっかりと受けてはいるのだ。

ただ彼女はそれに報いる術が公爵になることだけだと考えてしまっているような…


……だって、世界関係なく3歳から六法全書みたいな分厚い本しかほぼ読んでないのも、おもちゃ遊びの一つもしないのも異常でしょ?

頭を抱えつつ、前世の物語をいくつが熱弁してしまったわ。(ちゃんと興味を持ってくれたからよかったけど)


そのとき……ハッ!自室のベッドの中で脳内整理をしていたが、そのとき思わず両手をたたいて飛び起きた。


そうだ!彼女は10歳の年に両親を事故で亡くした遠縁の男の子を義兄に迎える。

名前はアクアス・アレキサンドライト。

みずがめ座の力を宿し、頭脳明晰で王子の側近としても有力だったためゲームでは次期当主はスコーティアでなく彼とされていた。


重要なのは彼の瞳の色。彼はアレキサンドライト家の血を持つが深紅の瞳なのだ。


前世の世界ではアレキサンドライトは日光の下では緑、ろうそくや白熱灯の下では赤色に輝くのは有名だがこの世界にその知識はない。

きっと彼の色が異なるのはそれが元になっているのだろう。


そのため、それを隠していた瞳の色を変化させる魔道具の一種である眼鏡がはずれ、赤色であるとばれた際にアレキサンドライト公爵家の印は緑の瞳であるとスコーティアや分家の者たちから虐げられていたのだ。


今の彼女からは想像できない行動だが、懸命に当主となるべく幼少期から子供らしさも自分の好きなものに気づく時間さえも犠牲にして勉学に励んでいたのに別の者に目標をかっさらわれた少女。

そんな中一番身近にいる専属侍女は野心の強い子爵家からスパイのごとく送り込まれた頭の切れる娘。


ー現状ゲーム進行と同じなのでは、っていうか私がスコーティアを嵌めた人間だな…


そういえば、アクアスの瞳の色がばれた原因は「アクアス様は赤色の瞳」っていう()()()()()を聞いたスコーティアが無理やりはずしたからだった気がする…

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