課外授業。領主の義務について。
俺の質問に対して返答を行ったのは、貴族至上主義の貴族領出身の生徒で、金銭的に裕福な家庭ではないとの事なのでかなり過ごしづらかったのではないだろうか…
「うん。良い答えだね。ただしそれだけだと多くの生徒たちにはなぜなのかがわかっていないようなのでもう少し詳しく説明を出来るかな?」
貴族出身の生徒や察しの良い生徒たちの中には理解出来た者もいるようだけどこの手の話に疎い者達には通行税以外にお金を取られなかったと言うだけでは意味を理解する事が出来ないのだろう。
「え?あ…はい。
俺の住んでいた領地では通行料以外にも門番の人とかにお金を渡さないと中に入れてもらう事が出来なかったんです。
他にも何かあるたびにお金を要求される街だったのでただ生活するだけでもどんどん金銭的にきつくなっていく場所でした。」
その説明を聞いて先ほどまで理解できていなかった生徒たちにも納得の表情が浮かぶ。
「その通り。よく理解できてましたね。
なぜお金を追加で要求されるのかというと大まかに2つの理由が考えられている。
1つ目はその領地の方針として平民から搾取するのが当然だという風潮がある地域が存在しているために一般の兵士などにも本来の権限に無い追加の資金要求を行っている場合があるようです。
2つ目はその領地での生活というものに不安を抱えている者達が少しでも安定した状況を求めてより多くの金銭を入手しようとして行っている場合です。」
生徒の回答に対して俺は更に詳し情報を説明する。
「先生。それでは原因は領地や領主様には無くて、金銭を要求する者達の独断という事なのですか?」
俺の追加した情報に対して他の生徒から質問が飛んでくる。
この事柄に対して興味を持ってくれたって事だろう。
「いい質問だね。
この場合の問題は領主がうまく部下をコントロールできていないか、あるいは領主自身の考え方が原因で引き起こされている場合があります。
どちらにしても領主に問題が無いという事はなく、その責任は計り知れないものがあると考える事が出来ます。」
「ちょっと待てよ。なんで兵士たちが勝手にやった事でも領主が悪いんだよ?
そんなのやった本人の問題で領主は関係ないだろうが。」
俺の説明に対しておそらくは貴族至上主義者の生徒から反論の声が上がる。
「通常の場合であれば部下が問題を起こしても領主がその責任を問われる事は無いでしょう。
しかし領主には部下が間違いを起こさないように教育をする事と、間違いを起こした部下を裁く義務があります。
しっかりと義務を果たしているのであれば、問題が起こったときに領民か他の部下から情報が上がってくるはずです。
もしそれが無いのであれば部下たちの多くが同じように間違いを犯しているか、領民たちから領主に嘆願しても意味が無いと思われているって事で、そのどちらでも領主に問題が無いのであればそのような状態にならないはずです。」
俺がそう説明すると、その生徒は言葉に詰まって大人しくなった…
「さてと。このクラーク公爵領は統治の成功例として最初にやってきました。
一般人である我々に対しても最初から丁寧な態度で接していましたよね。
領主が平民を軽んじるような人物の場合はあのような態度で対応するような人物が育つことはほとんど無いですからかなり良い統治をしていらっしゃるのでしょう。」
俺の説明に対して生徒たちの中で公爵領に対しての憧れのようなものが見え隠れする。
「それじゃあ。この後は街の中を観光がてら見て回りましょう。
明日はまた別の領地で課外実習の続きをするので今日の所は羽を伸ばしましょう。
宿は確保済みなので存分に観光して回ってください。」
そう言って生徒の皆に守護の為の魔法を密かにかけてから一度解散する事にした。




