適性確認
授業後の鍛錬にエレノアさんが参加するようになった。
俺はエレノアさんが王女だとわかってから呼び方をエレノア王女に変えようとしたのだが、貴族だったらともかく学園に通う一般の国民にはエレノアさんの事を一目で王女だとわからない者の方が多い。
そんな中で王女呼びをしていたら、いらぬ危険を呼び込む可能性があると説得されて結局エレノアさんと呼ぶことになった。
エレノアさんの鍛錬なのだが、まずは彼女がどんなことに適性がありそうか色々な事を試してもらう事から始めた。
一か月後、俺は鍛錬終了後に寮の自室でこの一か月で試したエレノアさんへの鍛錬の結果を考察している。
結論から言うと彼女の説明していた通りに強さにつながるような事柄には基本的に向いていなかった。
体を動かす類の事は基本的に苦手らしく、たとえ教導スキルを使っても成長限界が近そうに感じる…
以前ファームラビット達に対して教導スキルの効果の確認をした時に、もともと興味の強い事柄と興味の無い事柄で教導スキルでの成長速度と成長限界に明確に差が出たのだ。
おそらくエレノアさんに直接体を動かして戦う手段を学ばせても目的の強さまでは到達できないだろう…
遠距離から弓で戦うのは相手が多かった場合に矢が足りなくなったり、接近されたときに対応できないと意味が無いから今回は除外するとして。
次に魔法関係なのだが魔力制御や魔力感知も問題なく取得できたし、書物を読むのが好きなだけあって書物を読むときに文字から情景をイメージするからか魔法の発動に必要なイメージする事にかけては今までで一番と言っていいほどの適性があった。
しかし彼女の魔力量は魔法を戦闘のメインにするのには少なく、もし戦闘になればすぐに魔力切れで戦えなくなってしまうくらいの魔力量だった。
魔力量を増やすか魔力の消費を抑える事が出来れば魔法関係が一番可能性がある気がするんだけど…
魔力枯渇によって魔力量を増やすのにはそのたびに気絶する事になるので、俺の時みたいに赤ん坊の時だったらともかく9歳の彼女に行わせるのは普段の生活に支障が出る可能性がある…
王族であればまだ学園に通っていなくても、何かしら一日のうちにやらなければならない鍛錬なり勉強なりがあるだろうし、魔力枯渇を繰り返す時間を取れるか怪しい…
内在魔力が少ないのを外在魔力で補う事も出来るが、その方法をとっても普通に魔法を発動するよりも時間がかかる事になる。
やはり戦闘に使用出来るレベルまでには難しいだろう…
こう考えると魔法学科に通う者達は十分な魔力量も持ち合わせていた。
おそらく天恵スキルを授かった事と関係があるか、あるいは魔力量が多いからこそ魔法関係の天恵スキルを授かったのかもしれないな。
俺が赤ん坊の頃に転生者スキルに教わった方法で魔法を使用する魔力を確保する方法はさっきの二つと魔力の自然回復を待つことだ。
今回の目的を考えると、戦闘中に魔力の自然回復を敵対者が待ってっくれるはずがない…
どうにかしてエレノアさんの力になってあげたいんだが…
彼女は俺の指導を求めてくる前にすでに、国で有名な実力者たちの元で鍛錬して戦闘関係に適性が無いと判断されている。
それでも目的の為に努力を続けようとする彼女の姿を見ているうちに彼女の努力が報われるように手助けしたくなっていた。
うーん。魔力量か…
そういえば最近魔力量について何かあった気が…
俺は重要な事を忘れている気がして自身の記憶を掘り起こす。
そうか。トビーに対しておこなった魔力活性化の魔法だ!
あれで取得できる物に魔力量増加があったはずだ。
とりあえずは魔力活性化の魔法を使い続ければ、魔力量増加のランクも上がっていくだろうから、問題は無いかもしれないけど、念のために魔力量の消費も抑える手段を考えてみよう。
その日、俺が眠りについたのはかなり時間がたってからだった。