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ソフィア・クラークの決意

「ありがとうなクリス。手伝ってくれて助かったぜ。」


目標数を作り終えた後、アイザックさんの許しの元に満足するまで武器などを製作させてもらった。


「こちらこそ目いっぱい鍛冶仕事を出来てすっきりしました。

また何かお手伝いできることがあったら呼んでください。」


「おう。それは助かるぜ。なんて言ったって国からの依頼は大規模な魔物狩りが行われるたびに大量に注文が入るからな。

必要な事とはいえもう少し余裕をもって注文してほしいぜ…」


国は定期的に街道付近などの安全を確保するために軍を派遣して魔物の間引きを行っている。

そのたびに大量の武器や回復薬などが必要になり、王都内のそれらの品を生産できる場所に注文が入るのだ。

大量の注文だし金払いも良いので基本的に歓迎される事ではあるのだけど、品物の納期が短めで設定されていることが多いので、その分愚痴も多くなる。


「確かに定期的に行っているのですから、一定数を常に確保しておいて追加で必要であればその時に生産すればいいと思いますけどね。」


「そうだな。特に国からの仕事は品質の管理が大変で、こなせる職人の数が限られているからな。

そうだ。薬屋のばあさんからもクリスに対して依頼が行くと思うから時間があったら受けてやってくれ。」


おそらく国からの依頼が薬屋にも行っているのだろう…


俺は今度時間を取って受ける事を伝えて、依頼の達成報告所に報告してから寮に戻った。



やはり無心で作業をするとすっきりするな。

一時でも面倒な事を忘れられると気分がすっきりする。

明日からの学園生活も頑張ろう。




ーソフィア視点ー

私はクラーク公爵家の長女として生まれたました。

我がクラーク家では代々魔眼系スキルを天恵の儀にて授かる事が多く、魔眼スキルは制御できれば大きな恩恵をもたらす一方制御できなければ自身の死のみならず周囲の者達にもその被害が襲い掛かる事になります。


幼いころからそう教え込まれ、その対処法として魔力制御スキルの取得とランクアップを目的に物心ついたころから鍛錬を続けてきました。


鍛錬の成果で天恵の儀までに私の魔力制御は上級に達していました。

長年の経験から上級魔力制御があれば魔眼の暴走は起こらないと考えられており、私も両親、二人いる兄もこれで大丈夫だと安心していたのが良くなかったのでしょうか…


天恵の儀で私が授かったスキルは予想外の結果でした。


進化の魔眼…

魔眼に深く関係する家系の為、大昔にあったとされるそのおとぎ話のようなスキルも我が家では教訓話のような物として私も聞かされた記憶があります。


魔力制御の鍛錬を怠るとこの進化の魔眼の伝説の様に自身にも周りにも不幸が降りかかるかもしれないぞって脅かされたものです…


この結果に両親も二人の兄も全力で情報の収集と対処法の考察を進めてくれました。


進化の魔眼の制御には英雄級の魔力制御が必要になると予測しています。

それ以上が必要であれば、もうこれは不治の病とあきらめるしかないでしょう…


スキルについて教わる時には教える側の取得しているスキルのランクによってその成長速度に影響が出るという話があるので英雄級の魔力制御取得者に協力をお願いしたい所です。


しかし結果は思わしくなかったです。

進化の魔眼についての情報は伝説上の話以外には他に出てきませんでした。

対処法も国内で一番魔力制御スキルが高いのは特級の人物達で、国内には英雄級の魔力制御取得者がいませんでした。


そんな絶望的な状況で入ってきたある情報、とある村で天恵の儀より前に魔法を取得した人物がいて、さらに同じ村の年下の子供に魔法について指導して、取得させるまでに至った人物がいるという情報でした。


天恵の儀までに魔法スキルを取得するのはとても困難です。

学園の魔法学科に通う者達は、天恵の儀で魔法関係のスキルを授かってから、その魔法系の天恵スキルに存在する魔法関係の技能スキルの取得速度の上昇を利用して取得するのです。


その補正が無い状態でしかも他の補正の無い人物に取得させるまでとなると、その人物の魔法関係の技能スキルのランクは期待できるかもしれません…

私は両親や兄たちが慎重にその人物を見極めてから判断するべきだと言われましたが、その人物が私と同年齢で同じ魔法学科に通う事になっているとわかり、少しでも早く接触させてほしいと頼み込んで何とか許可をもぎ取りました。


まだ進化の魔眼が制御不能になるだろう時期まで数年ありますが、それまでに対処できるかの不安で私は今にも倒れてしまいそうな感覚に耐えられず、珍しく強引にお願いしていました。


そんな感じで、学園の授業当日にその人物、クリスさんに出会いました。

授業の初めの魔法の発動を見て、クリスさんが並外れた魔力制御を持っていることがわかりました。


その日の授業の後に、私は逸る気持ちと彼に断られるかもしれない不安を抑え込みながらおこなった事情の説明とお願いを聞いてクリスさんは自身のランクなどについて内緒にすることを条件に協力してくれることを了承してくださいました。


それを聞いた時、一瞬緊張の糸が緩んで思わず涙腺が緩んでしまったのは仕方が無かったと思います…


そしてクリスさんから教わった内容はとても素晴らしいものでした。

並列思考のスキルを使用する事で、スキルの性能を引き上げつつそのスキルのランク上昇速度を引き上げれるなんて考えたことが無かったです。


説明も分かりやすくて、わかりづらい事は魔法によってわかりやすく表現していただけてとてもありがたいです。


私はクリスさんにいつかこの恩を返せるように全力で努力する所存です。


なので目の前の人物がいかに目上の人物だからと屈するわけにはいきません!


「何度聞かれても答えは変わらないです。

彼は貴女が気にするような事は何も無いです。」


第三王女エレノア・アーク。

クリスさんに年齢が一番近い王族がわざわざ私に彼の事を質問しに来るなんて面倒ごとしか考えられないです。

ただでさえ私が迷惑をかけているのにこれ以上面倒ごとを増やさせるわけにはいきません。

ソフィア・クラークはそう決意するのだった…

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