エミリーからの情報
「私が警護関係の仕事をしているのは言ったと思うけど、職務内容には警護の他にも精霊を使役することで解決できるだろう事をお願いされる事もあるの。
例えば他の方法で調べたけど特定できなかった事とかを精霊の力で調査する事が出来ないか依頼されたりするわ。
一見警護とは関係無いと思うかもしれないけど、王都内で不審な事や危険な事を調査・排除することが警護対象の安全につながる事があるからその手の仕事もしているの。」
なるほど、確かに精霊使役のスキルは敵対相手が精霊を使役できる場合に対抗するのに必要になるだけでなく、他にもさまざまな事に応用が利くスキルだからそういう事もあるか。
「それで少し前から王都内に今まででは珍しかった素材などが多く出回るようになったのね。
珍しい素材が出回る事自体は遠方から大量に輸送したりとかで今までにもあった事だから問題では無いわ。
ただし今回出回った素材は傷みやすい素材で遠方から輸送したとは考えられない物だったらしいのね…
私の雇用主はその事について部下に調査させたらしいの。」
この話の流れで珍しい素材が出回っている話をするって事は、俺が資金作りの為に販売した素材の事か…
素材のランクの事は気を付けていたけど、確かに近場に取れる場所があるかどうかは気にしていなかった…
ダンジョンマスターと豊穣の森の主の2つの称号スキルを持っていると、ダンジョンと豊穣の森から所有権が俺にある物をどこからでも取り出すことが出来るので取れたての素材を販売してしまっていた…
隠蔽スキルを使いながら販売しに行ってたけど、この様子なら何らかの方法でばれてしまったのだろう…
「でもいくら調べてもそれらの素材を持ち込んだ人物を特定する事は出来なかったそうでね…
高度な隠蔽能力を持った人物が何故か周囲では採取できないような素材を鮮度を保った状態で販売いる…
雇用主は、目的はわからなかったけど何者かが何かを企んでいる可能性を考えてその人物を特定してくれと私に依頼してきたの…」
え…何でそんな話になるんだ?
「ちょっと待ってよ…何で隠蔽能力を使用しながら珍しい素材を販売すると何かを企んでいるって思うの?」
「ただ隠蔽能力を使用しながら珍しい素材を販売するだけだったら、珍しい素材を市場に流したのが自分だと知られると、目立つから隠したかったって判断したんだろうけど…
今回雇用主が調べさせるのに使った部下は、探査・探知・追跡系などの特級スキル持ち達を使ったの…
にもかかわらず何の痕跡も発見できなかった…
この事からその人物が英雄級以上の隠蔽系スキルを取得しているか隠蔽系の天恵スキルを所持している可能性があるわ。
それほどの人物がわざわざ手間がかかる事を行っているから何か目的があるはずだと判断したみたい…」
「そっか…それは確かに怪しいかもしれないね…」
何て事だ…
俺にとっては何の手間でもないから本当に目立ちたくなかっただけの事でも、他の人たちにとっては手間のかかる事だから、素性を知られないようにして手間のかかる事をわざわざ行っている怪しい奴だと思われるって事か…
「説明つづけるね。依頼を受けて調べてみると、通常の精霊使役では何にもわからなかった…
それで私の天恵スキルを使って調査したの…」
エミリーの天恵スキルは確か【精霊進化】だったな使役している精霊のランクを1ランク引き上げる事が出来たはずだ。
「最近になって【精霊進化】を使うときに精霊の好きな物を対価に使用する事で1月に1度だけさらに1ランク上げる事が出来るのがわかったんだけど、特級スキル持ちが何の情報も手に入れられなかったって聞いていたから、思い切ってそれを使用して幻想級の精霊に調査をお願いしたの。」
精霊は人間よりも周りを探索する能力が高い。
それが幻想級であれば確かに俺の隠蔽なんて看破して調べられるだろうな。
「幻想級の精霊は特殊な方法を用意しなくても、精霊視が無い人にも見る事が出来るし人に意思を伝える事も出来るの。
その事を知った雇用主が調査結果を直接聞いてみたいと言ったので精霊からの調査結果を雇用主の前で聞いの…
そうしたらクリスが素材を販売していたことがわかったわ…
クリスが素材を販売していた事で私にはただ目立つのが嫌だっただけで隠蔽をしながら販売していたって直ぐに理解できたけど、雇用主を納得させるのは大変だった…」
えっと…ずいぶんとエミリーにも迷惑をかけてしまっていたみたいだ…
「ごめんエミリー。俺の考えが足りていなかったばかりに迷惑をかけちゃって…」
「別にそれは良いよ。
ただ、この事で私の雇用主はクリスの事を凄く気にしているわ…
天恵スキルは【変換】だから【隠蔽】を英雄級以上で取得しているだろう事。
王都の外に出た形跡がほとんど無いのに、この周辺で採取できない新鮮な素材を数多く販売している事。
そしてグレースが説明していたような事。
それらの事からそのうち接触をはかると思うから気を付けてね。」
「ちなみに雇用主ってどんな人なの?」
「それは守秘義務なので言えない…」
雇用主に対して質問すると間髪入れずにそう返された…
いやいや。守秘義務って…
さっきまでの話は守秘義務に反さないのかよ…
その後話が終わるのを待っていたかの様に注文した料理が届いた…
確かに二人が気に入るのも分かるくらい絶品なのだが、その直前の話のせいか心から楽しむことはできなかった…