グレースからの情報
グレースの突然の発言に対して考えてみる。
確かに学園に通うようになってから注目をあびるような行動をしてしまった事もある。
詠唱についてと一般的な魔法発動にかかる準備期間を把握していなかったから普通に使用してしまって、魔力制御のランクが高い事はばれてしまっている。
しかし俺の魔力制御の正確なランクまでは知られていない事と、その後から授業以外の時間はソフィアさんと行動を一緒にする事が多い為か、予想されていたような貴族からのちょっかいとかは無かったから問題は無いと思うんだけどな?
そう思ってグレースに確認してみると…
「本当に認識が甘いわ。王侯貴族の事を甘く見すぎよ…」
そう言ってグレースが説明した事を要約するとこうなる。
まずは前提条件として、天恵スキルで魔法関係のスキルを授かっていない者が魔法学科に通っている事自体が注目を集める事である。
優秀な魔法使いは1人でも多く自身の手元に置いておきたいと権力者たちは考えているのだそうだ。
しかもその人物は特級魔法の使い手たるセオさんが褒めるほどの魔力制御を、授業の初日に披露する才能を見せた。
魔法関係のスキル保持者は魔法に関係する技能スキルの取得に補正が入るはずなのにそれらの者達よりも、関係のない天恵スキルを授かった者の方が高いランクの魔力制御を示した事でさらに注目を集めている。
それらの情報を得て接触をはかろうとした者もいたのだが直ぐに様子見に流れが変わった。
理由は多くの者たちが動き出す前に王国有数の貴族、クラーク公爵家の令嬢がその人物に接触したためだ。
しかもクラーク家は魔眼スキルの名家である。
代々魔眼スキルを授かる事が多くその力を使って、王国に様々な利益をもたらしてきた。
そしてクラーク公爵家は魔力制御のスキルの高さを重要視している事でも有名である。
このことによってクラーク公爵家と揉めないように接触は控えつつも注目はより多く集めてしまい、裏ではクリスの情報を様々な者達が集めている状況になっているそうだ。
「そんなことになってたのか…全然気づかなかったんだけど…」
俺は気配察知などのスキルも取得しているので周りをうろつくやつらがいれば、気づける自信があったのだが今の今まで気づけなかった事がショックだった。
「しょうがないわよ。
クリスも探知系のスキルを取得してるだろうけど、今回は下手すると公爵家との問題になりかねないからか、その手の事に使える天恵スキルを使いこなせている人物達のみが活動してるみたいだし…」
天恵スキルか…
確かに天恵スキルには技能スキルでは再現不可能だと思われるようなものもあるみたいだもんな…
でも厄介ごとに巻き込まれる可能性があるのであれば対応できるように考えてみよう…
「でも助かったよ。問題が無いと思っていたけど、表面化していないだけでいつ厄介な事になるか予測がつかないって事なんだね。
とりあえずクラーク公爵家の名前で抑えられている状態が続くことを祈って大人しくしてるよ…」
「はぁ。それだけだったらよかったんだけどね。」
俺の発言を聞いて何故かグレースはため息をつきながらそう言った。
「えっと…どういう事?まだ何かあるの?」
「グレースの情報はそれで終わり…次は私の番ね…」
俺の質問に今度はエミリーが話始める。
「今までの様子からクリスは自覚していないみたいだけど、他にも注目を集めかねない事をしているんだけど自覚は無い?」
どうゆう事だろう。
魔力活性化の魔法によって、他人にスキルの取得を促せる事は知られていないはずだし、それは変換スキルで行える事にも言えるからそれでは無いはずだ。
グループ授業では教導スキルは使用していないから、皆の上達速度には俺は関係ないはずだし…
何も無いと思うんだけど…
「ごめんエミリー。考えてみたけど、該当しそうな事に心当たりがなくて…」
「やっぱり自覚がないんだね…それじゃあ。順を追って説明するね…」
そう言ってエミリーが事の経緯を話し始めるのだった。




