進化の魔眼対策講座
「お待たせしましたクラークさん。」
クラークさんを探そうと思ったが周りを見渡したら直ぐに見つかった。
どうやら授業終了の後に俺らのグループがお互い話しているのが終わるのを待っていてくれたみたいだ。
「いえ。気にしないでください。
それよりもいまさらではあるのですが、私はクリスさんに教えを乞う立場になるのですから、家名では無くどうかソフィアとお呼びください。
それと先ほどグループでの様子をうかがいましたが、普段はご自身の事を俺とおっしゃっていますよね?
私の前では一人称を変えていらしたみたいですがそちらも普段通りにしていただいて大丈夫です。」
こちらの声掛けに対してそう返してきた。
「わかりました。
それではソフィアさんと呼ばせてもらいますね。」
本来公爵家の令嬢を、本人が良いと言っても一般市民の俺が名前で呼ぶのは失礼に当たるものだが、学園の原則である学園において身分は関係が無いという事と本人の許可があるので何とか平気だろうと判断する。
「ええ。それでお願いします。
私が良いと言ってもなかなか名前で呼んでくださる方が少ないのでとても嬉しいです。
それではさっそくご指導お願いします。
学園に許可を貰って魔法の訓練用の施設を毎日の授業工程の終了後にお借りできるようにしておきましたのでそちらに参りましょう。」
ソフィアさんは満面の笑顔でそう返してくる。
名前で呼んだだけでこの笑顔が見られるのであれば良かった。
そう考えながら案内するソフィアさんの後についていく。
「こちらですね。
この施設は独自の魔法の研究や秘匿性の高い魔法の練習などに使用する施設になりますので、盗み見られる心配もないですし、頑丈に作られていますので多少強力な魔法などを使っても問題ない作りになっています。
ここでしたらクリスさんの能力がばれる心配も無いですから、安心してご指導お願いできればと思います。」
「確かにこの建物でしたら、一般的な魔法などによる透視や盗聴にも対応できそうですね。」
俺から見た感じでも特級までの魔法や技術では、外部からこの場所の様子を探る事は出来ないだろう。
「それではさっそく始めますね。
まずはソフィアさんの進化の魔眼の特性や俺の持ち合わせている知識などから考えた結果、魔力制御に重点を置いているだけでは問題解決にはならないと結論付けました。」
「そ、それでは魔眼の暴走は防ぐことが出来ないという事でしょうか?」
俺の説明に対してソフィアさんは顔を青ざめさせつつ質問してくる。
「魔力制御のみではそうなるというだけです。
ただしちゃんと対処法を考えてありますので安心してください。」
「そうでしたか。すみません説明の途中で…続きをお聞かせください。」
「いえ気にしないでください。俺の伝え方が悪かったです。では続けますね。
進化の魔眼の暴走を起こさせないためにソフィアさんには、予定していた通りの魔力制御のランク上昇以外に、並列思考のスキルの取得とランク上昇を目指していただきます。」
「並列思考ですか?確か同時に複数の事を考える事が出来るというスキルでしたよね?」
俺の説明に対してソフィアさんは不思議そうにしている。
これには理由があって現状並列思考のスキルを取得した人物たちは、どうやら別々の事を同時に行うスキルだと勘違いしているのか、同じスキルを別々に起動してスキルの性能を引き上げるという使い方をしてきた者がいないようである。
その為にソフィアさんは「並列思考を一緒に覚えるって事は魔力制御以外に何かを行うことで魔眼の暴走を抑えられるのかな?」っと思ってしまったのだ。
その辺りの事を説明してみると劇的な反応があった。
「す、すごいです。大発見じゃないですか!。
やっぱりクリスさんは凄い人です!
ああ。グループ授業でのクリスさんのグループの人たちが羨ましいです…
私もクリスさんのグループが良かったです…」
目をキラキラさせて俺の事をほめ倒してきたと思ったら、グループ授業が別々のグループである事を残念だと主張し始めた。
「まあ。魔法を実際に使用できる人の人数がクラスの中でも限られているから、現時点で魔法を使用できる人たちが別々のグループに分けられるのは仕方がない事ですよ。
授業の進捗が進めばまた状況も変わって一緒に学ぶことも出来るかもしれないですから。」
まだ何か成果を上げたわけでは無いのだが、並列思考スキルの説明がそれほど驚きだったのか、反応が過剰な感じだったので、いったん落ち着かせる。
「そうですよね。まだチャンスはありますよね。楽しみです。」
「それじゃあ気を取り直して並列思考スキルの練習を始めましょう。」
「はい。お願いします。」
授業の後で疲れているだろうから、スキルの練習にどれだけ集中できるかと思っていたけど、並列思考スキルについてあらかじめ説明した為か、思っていた以上の集中力で練習を始めていく。
その後外が暗くなり始めてソフィアさんの家に仕える人が迎えに来るまで練習を続けるのだった。