49.召喚者、不死身の悪鬼ダイダロスを倒す
ちょうど不死身の悪鬼ダイダロスが動き始めようとした時に、勇者パーティーが来たからアキトは倒すのを勇者に任せてみたのだが……。
「ありゃ、駄目だな」
最初は倒せてたように見えてたのだけど、真っ二つにされた身体が分裂してダイダロスが二体になってからはもう一方的にやられている。
「ふむふむ、あるじさまご報告があります」
賢者スライムのスラインが、何か言ってくる。
「なんだ」
「勇者たちの会話によると、ダイダロスの弱点はあの胸の赤い魔石だそうです」
ここからよく聞き取れたなと思ったら、ウサギ耳のラビットスライムが聞き耳を立てているらしい。
なるほど、一芸に秀でたスライムはいつか役に立つって本当だな。
「ふむ、二体のダイダロスの一体を潰しても駄目なら、両方の魔石を同時に潰せばどうだろうか」
無敵とか言っても弱点はあるはず。
それで分裂する系の敵は、確かそんな倒し方のケースがゲームなんかでは多いと思った。
ポケットに入れていた黒い宝玉が震える。
『さすがあるじじゃが、惜しいが違うな』
「なんだ魔王」
『いよいよ、妾の知識が役に立つ時よな』
「なんか知ってるなら、もったいぶらずに教えてくれよ」
『ダイダロスは最初から二体、そして二体のダイダロスの胸の赤い魔石を両方一気に砕く、これもまた正しい。だが、それだけでは倒せん』
「まだ裏があるのか」
『あの左のダイダロスの左目を見てみい。一際妖しく輝いておるじゃろ。あれこそが、本命の魔石じゃ』
「ああーなるほど!」
よくよく見れば、左のダイダロスは右と違って控えめな攻撃しかしていない。
こいつが弱点を持ってるから、前に出ないんだな。
そして、耀く赤い目の左側が本命の魔石で、あれを潰さんことには何度でも再生するというわけか。
『ダイダロスの胸の魔石を両方潰しつつ、最後に左のダイダロスの左目を潰す。それができてようやく倒せるわけじゃ』
「なるほど、これはめんどくさいな」
あと、得意げに語ってるけど配下の魔族の弱点を教えていいのか魔王。
『ふん、あいつは妾への反意を隠そうとせんうざいやつじゃからな。殺されたって妾の知ったことじゃないわ』
「なるほど、魔族もいろいろあるんだな」
そりゃ、逆らってくる嫌な部下ぐらいいるか。
まあ弱点がわからなくても、最終的に召喚でなんとかしちゃえそうでもあるんだが、スマートに倒せるならそれに越したことはない。
「あと、俺は目立ちたくないんだけどなんかいいアイデアないか」
『召喚術は、召喚者に力を与えることもできるのじゃ。とりあえず、目立つ胸の魔石つぶしはそっちにやらせたらええじゃろ』
こういう時に使えるやつとなると、一人はテトラにやってもらって……。
「グラントさん!」
「呼んだか、アキトさん!」
リーダーとして活躍していたはずなのに、グラントはアキトが呼ぶと喜んで跳んでくる。
もうグラントも、召喚獣ってことでいいかもしれない。
「これから、俺はグラントさんを召喚します」
「ふむ、よくわからんが、そうするとどうなるんだ?」
「一時的にパワーアップできます。あとは、この剣をあげますからこれで右のダイダロスの魔石を潰してください」
アキトは、この前もらったミスリルの剣をグラントに与える。
グラントは、感動の面持ちで武者震いした。
「こんな業物を俺にくれるのか。よし、よくわからんがわかった! この命、アキトさんに預けた!」
グラントがそう望んでくれたので、召喚して魔力を与えることができた。
「テトラも、全力で行くぞ! グラントとタイミングを合わせて、お前は左のダイダロスの胸の魔石を同時に潰せ!」
「わかったのだ! 力みなぎるなのだ!」
テトラは嬉しそうに飛び跳ねていった。
グラントも、「超、瞬殺剣!」と叫びながら突っ込んでいく。
こういう時に迷いがない連中というのはありがたい。
スラインたちに援護射撃をさせて、アキトもタイミングを合わせる。
ポケットの黒い宝玉が震える。
『アキト、今こそ妾の力も貸すぞ。ダイダロスの抵抗を打ち破り、左目の魔石を見事召喚して見せるのじゃ!』
「おう」
望まれない物を奪うように召喚というのは難しいことなのだが、ダイダロスよりも高位の魔族である魔王アンブロシアが望んでくれたので、意外と簡単に召喚できた。
『ちょ、ちょっと待つのじゃアキト。仮にもラスボス戦じゃぞ、もうちょっとこう溜めてからやるとか、演出とかあるじゃろ!』
「あ、ごめん。テトラたちとタイミングを合わせないとと思って、ちょっと先走った」
災難だったのはダイダロスだ。
調子こいて、勇者を高笑いしながら痛めつけていたのに、突然命そのものである左目の魔石を奪われたのだ。
「ぐぁあああ! なんだ! 何が起こったぁああ!」
驚いて隙ができる。
そこに、不死であるはずのダイダロスを殺す二本のミスリルの刃が迫る。
「でぁあああああ!」
「潰すのだぁああ!」
見事、テトラとグラントは左右の魔石を打ち砕いて見せた。
「き、貴様がぁ!?」
最後、自分の命である魔石を握りしめるアキトを見つけるダイダロス。
バレては困ると、アキトはサクッと手に持った魔石を握りつぶす。
「ぬかったぁあああああ!」
二体のダイダロスがアキトめがけて地獄の業火を噴き出したが、それらの攻撃は全てアキトをガードしていたミスリルスライムとオリハルコンスライムによって遮断される。
最後の瞬間まで、本当の敵を見抜けなかった後悔に苛まれながら、ダイダロスはアキトに向かってなおも歩を進めるが時すでに遅く。
核を失ったその肉体は急速に魔力を失い、ボロボロと腕から崩れ落ちていく。
「おのれ……おのれぇ……」
こうして、長らくリムレス王国を苦しめた不死身の悪鬼ダイダロスは崩れ去った。
自らも満身創痍のクリスティナは、息を荒げて立ち尽くしてるグラントを称賛する。
「お前は、なんという冒険者なのだ!」
「グラントだ」
「その実力素晴らしい! ぜひ勇者パーティーに入らないか!」
「いや俺なんて、アキトさんが……」
その言葉に、姫聖女ソフィアが叫ぶ。
「そうですよ! アキト様がいるはずです。あっ、ダイダロスの死体が消えた。絶対この辺りにいますよ。すぐ探さないと!」
その様子をアキトは物陰に隠れたまま眺めて、スラインに小声で命じる。
「テトラに撤収と伝えてくれ。このまま、他の地域のギガントサイクロプスが全部倒されたのを確認してから国を出ていく。もちろん、俺達が倒した分の死体はいただいていくぞ」
「御意です!」
こうして魔王軍の未曾有の進攻は表向きは勇者パーティーによって、実際のところはアキトの活躍によって打ち破られたのであった。
今更ですが、幼女魔王アンブロシアの口調を、一人称、妾。
のじゃろり風に変えてあります。
今頃キャラがまとまってきた。





