45.勇者パーティー、ギガントサイクロプス王都へ襲来の報告を聞く
サイクロプスを超える、超巨大なモンスターが次々に出現したという報告を聞いて、リムレス王国国王ラウール・ロドス・レス・リムレス・オーガスターは、玉座から転げ落ちそうになった。
「巨人の荒野と、ワイルドの谷に発生したギガントサイクロプスの軍団は、現在馴染みの森とミスリルの丘に向かって進行しております」
王都への直進コース。
「狙いはこの王都か。して、敵の数は」
「ギガントサイクロプスの軍団は、百体を超えているとのこと!」
「なんと、どうすればよいのか」
弱々しくつぶやく王に、傍らにいた聖槍のクリスティナが叫ぶ。
「私に考えがございます!」
「おお、クリスティナ。何か方策はあるか」
「サイクロプスの弱点は一つ目。それは、ギガント級といえど同じでありましょう。巨人族の倒し方にはコツがございます。まず足を挫き、倒れたところを弱点である目を潰すのです」
「なるほど! さすがは聖騎士だけではなく冒険者としての訓練も積んだクリスティナよ。皆のもの聞いたか、全軍を持って巨人モンスターを……」
王が立ち上がってそう言い終わる前に、伝令が走り込んでくる。
「た、大変です。不死の悪鬼ダイダロスが、ギガントサイクロプスの後方から現れたとのこと!」
「総攻撃だと」
不死の悪鬼ダイダロスは、かねてよりこのリムレス王国を滅ぼさんと現れた魔王軍の幹部だ。
一度意を決して立ち上がったラウール王が、また椅子に座り込んでしまう。
「ダイダロス……」
さすがの聖槍のクリスティナも、これには悩んだ顔を見せる。
いかにクリスティナといえど、不死身の肉体を持つと言われる悪鬼を倒す術は知らない。
長らくの戦いで弱点らしきものは確認されている。
だが、リムレス王国はダイダロスが出てきた戦場で全て敗北している。
「勇者パーティー出動だ!」
ラウール王が叫ぶ。
「しかし、勇者はまだ高位魔族と戦えるほど仕上がっておりません」
「しかたないではないかクリスティナ。私とて、こんなに早く決戦の時が来るとは思わなかった。だが、魔王軍幹部を倒せるとしたら、聖剣クラウ・ソラスの聖なる光しかありえん」
「それでも、現状では勝ち目は薄く……」
「お前たちだけを戦わせるわけではない。私も出るぞ。王国軍は全員出撃して、ギガントサイクロプスと戦い王都の民を守るのだ!」
普段は慎重すぎて、臆病とすら揶揄されるラウール王がそう決断したのだ。
王国の危機存亡の時。
負ければ全て終わりなのだ。
王自らが剣を取って陣頭で戦うとまで言われては、クリスティナにも否やはない。
「ハッ、勇者パーティーは、魔王軍の幹部魔族ダイダロス撃破を目指します。陛下のおっしゃるとおり、ダイダロスを倒せる可能性は聖剣クラウ・ソラスしかございません!」
「無理な戦いを強いてすまんな」
「いえ、我ら聖騎士はその為におります。陛下の御為ならば、この命も惜しくはありません!」
「戦えぬ民はなるべく後方へと逃してやるとしよう。最悪のことを考えれば、民が逃げる時を稼げれば御の字というところか。冒険者ギルドにも協力要請は出しておこう」
そう寂しそうにつぶやくラウール王と、クリスティナの目が合った。
二人が思っていることは同じである。
あの最強の召喚師アキトが動いてくれれば、被害はいくぶんか少なくて済むのではないかということであった。





