42.召喚者、ドワーフとオリハルコン山を掘る
ドワーフたちに他に困りごとはないかと聞くと、ワイルドの谷近くの採掘所でどうやっても割れない岩盤があって、困っているという。
そろそろ、スラインたちの村の建設工事も終わったみたいだし、少し遠出してみるのも悪くない。
「じゃあ、とりあえずそこまで行ってみよう」
みんなと共にマール村から丘を下っていき、ワイルドの谷の方に向かう。
道すがらスラインが話しかけてきた。
「ドワーフスライムを作ってはいかがでしょうか」
「え……」
怖い想像になってきたんだけど。
「あ、いえ。ドワーフは食べませんよ。古い工具などをいただければ、鉱山労働に適した便利スライムが作れます」
「なるほど、もらってもいいかな」
「ワシらは新しい工具をもらったんだから、もちろん構わんよ」
許可も出たので、ドワーフスライムを何体か作ってみる。
小さいつるはしを持って、ヘルメットまで被って可愛らしい。
そうやって遊んでいたら、でっかいウサギのモンスターの群れが襲いかかってきた。
なんだ、今日は冒険は休むつもりだったのにまだいたのか。
「テトラ!」
「了解なのだ!」
ビョンビョン飛んでくるジャイアントラビットを、テトラが虎の爪で斬ってさっさと片付ける。
ミスリルの爪は、凄まじい威力でジャイアントラビットごときは一撃だった。
だが、いささか数が多い。
ウサギだと思って油断してると、危なそうだ。
「オークを倒しても、まだこんなにモンスターがでるんだな」
「オークやゴブリンたちがいなくなったら、今度は他のモンスターが縄張りを伸ばすもんじゃよ。だが、こいつらはオークより弱いし肉も毛皮も使えるから無駄がない」
「なるほど、ウサギの肉なら食えるもんな」
「ワシらにはこれがあるから、もう村や採掘所をモンスターには渡さん」
ドワーフたちがクロスボウを撃つと、それがジャイアントラビットに当たった途端にパーン! と音を立てて爆発した。
「おお、面白い物を作ったな」
「とりあえず、できるもんを組み合わせてアキト殿にもらった銃というやつを真似てみたわい」
ドワーフたちは火薬の知識はすでに持っていたので、矢に火薬を仕込んだ爆発矢を作ってみたようだ。
できる物を使って創意工夫できるドワーフたちなら、もうモンスターにやられる心配はないだろう。
火薬の爆発する音と光は、聴力に優れるジャイアントラビットたちにとっては弱点らしく、撃たれたらすぐに動かなくなった。
スラインたちも控えてはいるのだが、もはや応援は必要ないようだ。
「あるじさま」
「なんだスライン」
「このジャイアントラビットの死体もいただけませんか」
「いいけど」
アキトがそういうが早いか、スラインはパクパクもぐりと巨大なジャイアントラビットの死体をひと呑みにしてしまった。
ブルブルと震えると、ぷるんと分裂してウサギの耳のついたスライムが誕生する。
「すごいな、この大きさを丸呑みか」
「あるじさま、ラビット!」
ちょこんとウサギの長耳を横に傾ける。
「おお、なんかこいつ可愛い。よろしくな」
スライムにウサ耳って、合わないかと思ったら結構似合うじゃないか。
可愛いは正義だ。
趣味で冒険をやっているアキトのところは、相変わらずの容姿採用である。
「あるじさま、ラビットスライムは可愛いだけではありません。聴力に優れて、遠くの音が聞けます」
「ふむ、どういう使い方をすればいいんだろうか」
「特に今のところは思いつきませんが、一芸に秀でた者をお側に置いておけば、いずれ役に立つことでしょう」
なんか前にもそんな会話したな。
前のフロッグスライムの時も何の役に立つのかと思ったが、そのジャンプ力は上からの攻撃にかなり使えた。
スライム召喚に使う魔力はほんと微々たるものなので、色んな種類をできるだけ集めてみていいかもしれない。
そうこうしているうちに、オリハルコン山の麓へとたどり着く。
「鉄の採掘所についたのじゃ」
「ここがそうか」
ワイルドの谷のドラゴンたちが一掃されてから、ドワーフたちは即座に鉄鉱山の開発に着手したようだ。
しかし、微量のオリハルコンを含む層の岩盤が硬すぎて、つるはしではとても掘れないという問題を抱えているようだった。
「じゃあ、発破を使ってみるか」
「発破じゃと?」
「みんな、ちょっと採掘所から離れてくれ」
さっそく今回作ったドワーフスライムに、硬い岩盤の部分にダイナマイトを差し込んでもらってくる。
あとは、導線でつないだこちらのスイッチを入れれば……。
ドッカーン!
激しい爆音とともに、横穴から大量の粉塵が噴き出してくる。
「な、なんじゃあ!」
しばらく煙がおさまるのを待ってから坑道に入って確認すると、硬い岩盤は綺麗に砕け散っていた。
「これで大丈夫だね」
「さっきの、発破といったか。もしかして、大量の火薬を爆発させたのか?」
うーん、ちょっと違うんだけどな。
まあそのようなものだと、アキトはドワーフたちに説明しておく。
「さすが英雄殿じゃ。硬い岩盤なんぞ一撃じゃな」
「一体どこまでできるのやら、底知れぬ力に恐れ入るわい」
まあなんとなくアキトが凄いのだということで納得してくれてよかった。
ダイナマイトは、人間の生活を豊かにしたが同時に戦争を悲惨にした悪魔の発明とも言われている。
現状、モンスターとの戦いが熾烈を極めているので人間の国同士が表立って争うということはないそうだが、未来はわからない。
ドワーフたちの自衛のために銃程度ならと思ったが、さすがにダイナマイトのような大きな力を与えるのには躊躇する。
「いずれは、技術を発展させていくことで気づくかもしれないが……」
この世界は強大な魔法力を持つ人間も存在して、それでも致命的なトラブルを起こさずにやっているようだから、心配しすぎかもしれないけど。
元の世界の歴史を考えると、やはり科学技術の功罪を考えてしまう。
自分たちを滅ぼしかねないほど強い力を多くの人が持った時に、それを管理するための思想や倫理が同時に醸成していることを祈るばかりだ。
「アキト殿」
「ああ、すまないちょっと考え事をしてた」
「おかげで、鉄も掘れるようになった。これでガンガン便利な道具を作っていくぞ!」
「そうか、それはよかった」
まあ、先のことは先で考えればいだろう。
ドワーフたちはいずれこのオリハルコン山にもたくさん採掘所を造って、自分たちの住処にしたいと言っていた。
そんな日がくるといいなあ。
ともかくまずはマール村で新しい道具がたくさん生み出されれば、肥沃の湿地の干拓も進み、みんないい方向に回り始めるに違いない。





