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3.王様と姫聖女の密談

 異世界勇者召喚の騒ぎが一段落して、姫聖女であるソフィアは父王ラウールを詰った。


「お父様! なんでアキト様をあのまま行かせたのです」

「なんでと言われても、勇者タケヒト殿が現れたのだから問題ないだろう」


 獅子王丸ししおうまるタケヒトと名乗る、異世界の十七歳の少年は、まさにラウール王が求めていたスキルを全て兼ね備えている。

 この勇者を育てていけば、この国よりモンスターを追い出して、魔王を倒すことだって夢ではない。


「アキト様の『全召喚』こそ、素晴らしい魔術ではなかったですか」


 そう言われて、満面の笑みを浮かべていたラウールは、険しい王としての顔つきになる。

 愛娘に対してではなく、一国の王として重々しく姫聖女ソフィアに問う。


「ソフィアよ。そう言うからには、先程のアキト殿の召喚術式はきちんと見ていたのだろうな」

「ええ、見ていましたとも。私達が十年かけて行った召喚魔術を、アキト様はたった一人で一瞬にして行いました!」


「ならば、拘束術式をすり替えたところも見たな」


 拘束術式とは、召喚された相手を召喚者に逆らえなくする魔術だ。

 召喚した者に反逆されては召喚魔術の意味がないので、そういう安全弁が必ずついているのだ。


「拘束術式などなくても、アキト様を説得して協力を仰げばいいではありませんか」

「勇者として育てて、それから敵対国に寝返られたらどうするのだ。あるいは、国を乗っ取ろうと動かれたらどうか。手元に置くには危険すぎるし、勇者を一人使えるように育てるにも莫大な手間と金がかかるのだぞ」


「きっとそうはなりません。聖女である私にはわかるのです。アキト様は、聡明で善意に溢れた、勇者に相応しく礼儀正しいお方でした」

「それはそうかもしれん。だが、そうでないかもしれん」


「やってみないとわからないではないですか。魔王の軍と戦うために戦力は一人でも多いほうが良いはずです。アキト様のお力ならば!」

「ソフィア、お前は欲張りすぎなのだ。分を過ぎた望みを持てば、いつか足をすくわれるぞ」


 ラウールは、名君というほどではないが、これまで堅実にこの国を治めてきた賢王だ。

 もしかしたらアキトの『全召喚』であれば、この城の召喚術式を使ってもっとたくさんの異世界勇者を召喚できるかもしれないと、ラウールとて一瞬だけ欲に駆られた。


 だが、それができたとしてその勇者たちを従えるのはレムリスの王、ラウールではなく召喚者である砂川アキトということになる。

 砂川アキトを中心とする最強の勇者団が、この国を乗っ取ろうと動いたらとても太刀打ちできない。


 いわばあの『全召喚』は、最強を統べる最強。至高の王の力だ。

 コントロールできない力は、それがどんなに強大であろうとも手元に置くべきではない。


 だから、ラウールは砂川アキトを丁重に送り出したのだ。


「お父様、私は欲張ってなどおりません。ただ、民の安寧と教会の正義のためにできることをしたいだけです」

「アキト殿は、この国のために働いてくれる最強の勇者を召喚してくれたのだ。私はこの国の王として、それ以上は望まぬ」


「私は、アキト様に協力を要請しますよ」

「それは、お前が思うように勝手にすればよい。だが、ソフィアよ。姫聖女であるお前の役割は、まず手持ちの勇者を使えるようにすることだ」


「わかりました……」

「わかればよい。ほら、勇者殿が呼んでいるぞ」


 勇者に与えられる聖剣クラウ・ソラスを手に取って「うわー、この剣すげー光る! ソフィア見てよ、俺めっちゃかっこいいっしょ!」と喜び勇んでいるタケヒトに、なんかこの人好きになれないなあと一抹の不安を感じる姫聖女であった。

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