28.召喚者、湿地のモンスターを一掃する
こうしてアキト……というより使役するスライム軍団の活躍によりジャイアントフロッグとワームの群れを倒すことができた。
「アイススライムに、ファイヤースライムか。一気に新しいスライムが出来たな」
「ぱくぱく、魔法系は軍団として複数運用すると、もぐもぐ、便利ですからぷるぷる」
アキトとグラントが先ほど採った薬草を食べて、回復スライムを生みだす賢者スライム。
戦闘が終わったら、回復役が必要になる。
この際だから、回復スライムも増やそうということだ。
生み出された回復スライムたちは、怪我をした屯田兵たちを治療していく。
いきなりスライムに治療された兵士たちはびっくりしたのだが、そこはグラントが説明して落ち着かせてくれたようだ。
「スライン、もっと違うスライムも作れるかな」
「やってみますか。そうですね、そのジャイアントフロッグの死体を一ついただいてよろしいですか?」
構わないと、アキトが許すと賢者スライムはジャイアントフロッグの死体をむしゃむしゃしはじめた。
ぷるぷると震えると、新しいスライムが生み出された。
今度は緑色のスライムだ。
「フロッグスライムよ、あるじさまに力をお見せなさい!」
「ジャンプ!」
ビョンビョン飛び跳ねるフロッグスライムは、飛ぶたびにその高さを増し、ついに雲の上まで飛び出して。
どーんと落ちて、柔らかい湿地に思いっきりめりこんだ。
「うーむ。スライン」
「ハッ!」
「これはどういう使い方をするスライムなんだろう」
「特に今のところは思いつきませんが、一芸に秀でた者をお側に置いておけば、いずれ役に立つことでしょう」
「まあ、動きが面白いからいいか」
ワームスライムとかもできそうだなと一瞬思ったが、よく考えると見た目や動きが気持ち悪くなるかもしれないので止めておくことにした。
あるじのアキトが趣味で冒険をやっているので、スライム軍団はわりと容姿重視の採用である。
「さて、あるじさま。それでは、さらにアイススライムとファイヤースライムを増やし、湿地にいる敵を根絶やしにしましょう」
「我ももっともっと戦うのだ!」
アキトの従魔モンスターたちは、何も言わなくても勝手に敵を殲滅に向かってくれる。
「グラントさんはどうしますか?」
「普段なら俺も戦闘に飛び込んでいくところだが、アキトさんがここに残ったのには意味があるんだろう」
いや、ちょっと疲れたから休憩してるだけだから意味なんてないよと、アキトは困惑する。
どうもグラントは、アキトを買いかぶりすぎだ。
「どうもここは、土が柔らかすぎて歩きにくいね。長靴でも出しておくかな」
アキトは、金貨と交換にゴム製の長靴をたくさん召喚してみる。
田んぼに入るための長靴で、ゴム製の地下足袋みたいな形状である。
輪ゴムをぐるっと引っ掛けて密着させることで泥が入りにくくなっている。
たくさん出したのは、テトラの分もあったほうがいいかなと思ったのだ。
どのサイズがフィットするかわからないからな。
それを見て、グラントが尋ねてくる。
「それは一体何だ?」
「長靴って言うんですよ。この世界にはないのかな。グラントさんの分も出したから良かったらどうぞ。これなら湿地でも多少は歩きやすいでしょう」
グラントは長靴に履き替えて、びっくりしてしまった。
「何だこれは、凄く歩きやすいぞ! こんなものがあれば、干拓の作業も捗るではないか」
「あ、そうか。みんなの分も欲しいんですね」
「これを、みんなにもらっていいのか!?」
「うん。長靴なんか安いものだから、金貨一枚でもたくさん出てくるよ」
こんな物が欲しいなら、いくらでも出せるのだ。
「さすがアキトさん! 凄すぎる! おーいみんな、アキトさんがとんでもない靴を出したぞ!」
グラントが呼びかけると、屯田兵たちが集まってくる。
「うわ、なんだこりゃすげえ。こんな靴みたことないよ」
「足にピッタリと吸い付くようだ。アキトさんありがとうございます!」
屯田兵たちは、長靴を履いて大喜びだった。
「さてと休憩もしたし、そろそろ辺りのモンスターの掃除も終わっただろうから、倒したモンスターの死体を拾いながら沼に向かいましょうか」
「いよいよだな。まさか、今日中に嘆きの沼まで行けるとは思わなかった」
湿地帯の奥にできた嘆きの沼によって、肥沃の湿地はモンスターの巣窟になってしまっているのだ。
「あるじさま、掃討完了しました」
「あるじ、沼の奥にいるボスが怒っているのだ」
感覚の鋭いテトラは、敵の怒りを感じるらしい。
怒ってくれれば、おびき出しやすいというものだ。
沼のそこから恐ろしい瘴気が立ち上り、八本の頭を持つ大水蛇がゆっくりと姿を現した。
「アキトさん。ここは俺に行かせてくれ」
「そうだね。大水蛇退治は、グラントさんの目標ですもんね。みんな、サポートしてあげて!」
グラントは、どうやら自信を失っているようだとアキトには思えた。
別にそれはアキトの責任ではないのだが、自分がキッカケになっている以上、本人が冒険者を目指すになったと語る大水蛇退治を成し遂げるようにサポートしてやりたい。
「スキル身体強化! 上級剣術! 征くぞッ!」
グラントは気合の叫びを上げて、大剣を構えて大水蛇に斬りかかっていくのだった。





