19.召喚者、Fランク冒険者を救う
テトラがオークの群れに突っ込んでいって、次々に倒すと戦闘はあっという間に終わった。
それを見届けて前衛で傷だらけになっていた赤髪の少年剣士が、力尽きてバタッと倒れた。
「マールしっかりして!」
緑のローブの魔術師風の女の子が、倒れた少年を揺さぶっている。
「さっそく、回復スライムが役に立ってよかったな。治療するから、ちょっとどいてくれるかな」
「え、スライム?」
「ホワイトーホワイトー」
ビックリする魔術師の女の子を尻目に、アキトは回復スライムに治療魔法をかけさせる。
回復スライムが唱えてるホワイトって、もしかして回復魔法の呪文なのか?
初歩の魔法だが、効果はあるようですぐ意識を取り戻した。
「う、うう……」
「目を覚ましたか」
アキトが仲間からマールと呼ばれている赤髪の少年を介抱していると、冒険者たちが騒ぎ出した。
「この人見たことある。竜殺しのアキトだぞ」
「おいバカ、失礼だろ、アキトさんだろ。相手は、Bランクの召喚術師だぞ!」
ざわついているなか、魔術師の女の子が話しかける。
「あなたは、ワイルドドラゴンを倒したことで有名なアキトさんね。私はエマといいます」
「ああ、よろしく」
「マールを助けてくれてありがとうございます、そこの獣人の戦士やスライムにはびっくりしたけど、召喚術師ですものね」
「礼なんかはいいよ。それより、みんなも怪我をしてるようだから先に治療だ。これを飲むといい」
アキトは、回復ポーションを差し出す。
「回復ポーションですか、でも……」
マールという少年が受け取るのに躊躇するのに、隣の魔術師の女の子が説明する。
「アキトさん。残念だけど、私たちは余分なお金がないんです」
「ああ、そんなことか。お金なら気にしなくていいよ」
「そんな、こんな高い薬をいただくわけには」
「高い薬って、こんなものただみたいなもんだぞ」
「ただですって。その回復ポーションは、一瓶百ゴールドはしますよ!」
「うーん、見せたほうが早いかな。回復スライム、ポーションを出してくれ」
「あるじさま、ホワイト」
だからそのホワイトという鳴き声のは何なのだ。
もしかして、雇用者であるアキトにホワイト企業にしてくれと訴えているのかと思いながら、回復スライムに薬草をむしゃむしゃ食べさせると、回復スライムは口から青色の液体が入った瓶をコロンと吐き出した。
「な、いくらでも作れるから何本でも使っていいんだ」
マールたちの常識では、回復ポーションは教会の聖職者が作って販売しているものだ。
スライムが回復ポーションを作るという信じられない光景に、少年少女とドワーフを含む冒険者パーティーは全員目を丸くするのだった。





