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-A10-  作者: 二旅 書簡
夜を照らす
2/2

no body-ノーボディ-

金属のこすれる音がする。


「ううぅぅあああぁぁっ!!」

突然、体の進行方向と違う方向に引っ張られ、小腸あたりから込み上げた声が出た。

減速したところで乱暴に放り出されると、何に引っ張られたかを気にする前に、鋼鉄の追跡者の意識が、敵意が、表情の変わらない顔が私の注意を縫い止める。


初めて自分が飛び出した場所を認識し、転げ落ちる人形の鉄塊を見た。ここは広大なスクラップ集積所だ。機械だろうが資材だろうがリサイクルのために砕き、仕分け、再構成も担う場所の一つ。クレーターを再利用したその形は物々を引きずり込むに適している。

幸いにも、巨大なゴミだめは稼働し、鉄塊を屑にしていく。


屑の山に飛び込んだハンターはなんとも言えないもの悲しさも感じさせる。蟻地獄のような地形は重たい体を沈めさせるには理想の地形だった。しかし、その首は目標をまだ見つめている。


不意に体の力が抜ける。




目を覚ますと、私は鋼鉄の黒い鎧に運ばれていた。肉弾戦になったのか、所々塗装が剥げている。

眩暈がするが声を出す。

「もう大丈夫ですよ隊長。歩けます...。」


鎧についているスピーカーから声が聞こえた。

「そうか、さっきはすまなかったな。」そう言って私をおろす。もっと早くに言って欲しかった。


鎧は全身が機械化されていて器用に私を降ろせないので他の隊員に手伝ってもらった。この2mほどの機械兵は私の所属する警備隊『ラウンド・スペード』の上司、ルビーアイ隊長だ。どうやら部隊の回収ポイントに着いたらしい。


「さっきの暴走した重機はどうなりました?」まず気になった質問を投げ掛ける。


「ピーク、説明してやれ。私は内部の維持に電力を回す。エルカ訓練生は帰投後にオフィスへ来るように。」

またタイミングが悪かったらしい。彼女は搬送トラックの荷台へ着くと動かなくなってしまった。


隊長と同じ装甲車両の助手席に座る。運転席から妙に甲高い男の声に話しかけられる。

「アネゴ、人手が足りないからってあんなデカブツ一人で相手したんだ。許してやってくれ。ミサイルも許可が出たのは一発だけだったのに…よくやるよ。」整備班副長のピークだ。


「ターゲットはどうなった?」

「雑に砕かれたよ。予定の粉砕エリアとは違ったけどなァ。メモリーも回収したし、明後日には諜報班が解析を済ませるだろうよ。」ピークが私の顔を覗き込みながら言った。

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