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危機回避・未来  作者: 中野翔
僕に危機回避能力は存在しない
4/59

遊戯



   4月12日、木曜日。

   

   三人が自分達の教室へ向かうと、花の鉢植えを教壇に飾るマリアの姿が。

   マリアは三人に気づくと「おはようございます」とにっこりと微笑んで挨拶する。

   「おはよう、マリアちゃん」

   「おはよう」

   最初に月冴、その次に炎樹がマリアに挨拶をする。

   そして幸磨は…。

   「マリアちゃん…もう体調は良いの?」

   挨拶より先に彼女の体調のことを尋ねた。

   昨日体調不良で学校を欠席していたマリアを気遣ってのことだった。

   「はい、もう大丈夫です。ご心配をおかけしました」

   「そう…良かった」

   幸磨はそれを聞いてほっと一安心した。

   だがそれは一瞬で、マリアと目が合った瞬間顔が真っ赤になってしまう。

   「あっ、そっ…その花、きれいだねっ!」

   何か話さなければと思ったのか、幸磨は先程マリアが飾った花に話題を変える。

   「えぇ。うちの家から持ってきたんです。先生からご許可を頂いたので、教室に飾ろうかと」

   「そっ、そうなんだ。何ていう花なの?」

   「ヒヤシンスです。赤・ピンク・白・黄色・青・紫と花色が豊富で、こうやって鉢植えや地植え

  、水栽培にして育てることも出来ますよ」

   「そっ…そうなんだ」

   花の知識が全くない幸磨。

   「はい。良かったらこう君も育ててみませんか?楽しいですよ?」

   マリアは幸磨を園芸の世界へお誘いをかける。

   「えっ、いや…僕には無理だよ。花育てたことないし、マリアちゃんみたいには出来ないよ」

   花を見ることがあっても、種(または苗)から育てたことは一度もないので、全く自信がない。

   マリアのお誘いでも、下手をすればカッコ悪い所を見せてしまうと幸磨は遠慮してしまう。

   「そうですか。残念ですね…」

   幸磨の返事にマリアは悲しそうな顔をする。

   それを幸磨の隣で見ていた月冴は、「だったら初心者でも育てられる花ならいいんじゃない?」

  とさりげなく二人に呟く。

   「「えっ?」」

   幸磨とマリアは月冴の言葉に声を揃えて驚く。

   「そうだな。いきなり上級者向けのものをしたって枯らしてしまうだけだからな」

   更に炎樹が話に乗ってきて、幸磨は少々パニックになった。

   これにマリアが閃いた顔をして次のように幸磨に伝える。

   「それでしたら、ガーベラとかいかがでしょう。一度植え付ければ毎年花を咲かせてくれます

  し、花色も豊富ですよ」

   「おぉ~いいじゃん。そのガーベラ、家で育ててみようよ」

   「月冴君、僕まだ何も言ってないんだけど」

   「綺麗な花咲かせられたら、きっとお母さん喜ぶだろうなぁ~」

   月冴のその言葉に幸磨は、ある幼い頃の記憶を思い出した。

   大切な思い出を心の中で振り返った後、幸磨は三人の前で「僕、やってみるよ」と答え、

  ガーベラを育てる決心をした。

   「では、私の家からご用意させていただきますね。こう君が育てたガーベラを見るの、楽しみ

  にしていますね」

   「あっ…ありがとう」

   こうして、幸磨はガーベラの花を家で育てることになった。

   

   

   その日の授業が終わって家に帰った後、すぐに二人は子機03にその話をしたところ『ちゃん

  と育てられるの?』と第一声から心配と不安の声が挙がった。

   「初心者でも育てられるって言ってたし、大丈夫だよ」

   『うーんー…』

   「お母さん、心配しすぎだよ。もし枯らしちゃったら、こう君の責任なんだし」

   「月冴君、見捨てないでよっ!それになんで僕だけのせいになるのっ!?」

   「育てるって言ったのはこう君でしょ?俺は何も言ってないもんねぇ~」

   「ひっ、ひどい…」

   幸磨は月冴に裏切られた。

   『月冴。そんなこと言わないで、手伝ってあげてよ。この子、一人で植物の世話とか今までし

  たことなかったから、ちょっと心配よ』

   「うーんー…植物かぁ…。まぁ、野菜を育てるのとあんまり変わらないなら、手伝ってあげて

  もいいかな。食べられないけど」

   『月冴にその気があるなら、ここで野菜作りしても構わないわよ?食費の節約にもなるし』

   「いやいや。ここまで来て野菜作りは勘弁してよ」

   月冴は子機の提案を拒否した。

   それは、彼の実家が家庭菜園をしており、毎年嫌々ながら手伝わされているからである。

   だがそれだけではなく、掃除・洗濯・料理とほぼ家政婦のような扱いで今の彼にとって幸磨と

  の暮らしは自由であり楽園と言っても良いぐらいだ。

   月冴の返事を聞いた子機は『あら、そう?残念ね』と残念そうにする。

   なんだか罪悪感を感じた月冴はその後「まぁ…考えておくよ」と希望がある返事を返した。


   「さぁ~て。部屋で宿題でもしようかな」

   月冴が伸びをしながらそう口にすると幸磨が「えっ?」と驚いた顔をする。

   「今日宿題出てたっけ?」

   幸磨は宿題があることについて月冴に尋ねる。

   「出てたよ。国語の宿題と数学の宿題」

   「そうだったっけ?」

   幸磨には宿題が出された記憶がなかった。

   「そうだよ。こう君、先生の話ちゃんと聞いてなかったでしょ?」

   月冴は幸磨に注意する。

   幸磨はそれに少しムカッとして「失礼だな、ちゃんと聞いてたよ」と言い返す。

   「でも、宿題のこと忘れてたじゃない」

   「んん~………おかしいなぁ…」

   何度思い出そうとしても、月冴が言う記憶は思い出せない幸磨。

   授業はちゃんと受けていて先生の話も聞いていたのに、どうして宿題のことを忘れていたのか

  自分でもさっぱりだった。

   「ほらっ、早く宿題終わらせないとテレビ見れないよ。今日7時からあの番組見るんでしょ?」

   『今日のゲストは今人気の俳優さんが出るのよね~。楽しみだわ』

   二人が言う番組は、毎週木曜夜19時からやっている人気番組。

   ゲストは映画やドラマの番宣を兼ねて参加し、用意された数多くのミッションをクリアしポイン

  トをゲットし、最終獲得ポイント数で勝者を決めるというものである。

   「月冴君、一緒に宿題やろうっ!二人でやればすぐ終わる!」

   「いいよ。一緒にやろう」

   二人は番組が始まる19時までに宿題を終わらせるため、部屋へと戻って宿題を始めた。

   協力したことにより、国語・数学の宿題を終わらせ、夜の19時になると二人は子機と一緒に

  人気番組を見て楽しんだのであった。

   

   


   

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