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危機回避・未来  作者: 中野翔
僕に危機回避能力は存在しない
14/59

過去、そして彼との出会い



   お母さんは僕を愛してくれたけど、あの人はあまり家に帰らなかった。

   たまに帰って来た時、お母さんはすごく嬉しそうな顔をするけど、送り出す時はすごく寂しそう

  な顔をしていた。

   僕はお母さんのことが大好きだったから、お母さんを悲しませるあの人のことは大嫌いだった。

   そんなある日、お母さんは……帰らぬ人になってしまった。

   あとで発明家のおじに話を聞くと、お母さんは『寿命』だったらしい。

   病気じゃなくて、寿命。

   その時の僕はその言葉を病気の名前だと判断して、あの人のことをますます嫌いになった。

   おじからは『お父さんに心配かけたくなかったんだよ。お母さんはそう言う人だった』と

  フォローを入れてくれたけど、それでも僕の心は変わらなかった。

 

   葬儀の後、あの人からお母さんの手紙を渡された。

   僕は手紙をその場で開封して、お母さんの手紙を黙読する。

   手紙には13歳になったらお母さんの故郷である清合町に住んで、そこから私立希愛中学校へ

  進学しなさい。これまで自分になかったものを手に入れて、その先へ進みなさいと書かれていた。

   自分になかったものとは何のことなのかは分からなかったが、それでもお母さんの遺言通りに

  僕は従うとあの人に伝えた。

   

   進学先を決めた後、僕はあの人に連れられて大きな武家屋敷へ連れて行かれた。

   あの人が屋敷の人を呼んでくると言って、僕が外で待っていると「こんにちは」と、後ろから

  誰かに声を掛けられる。

   突然のことで身体がびくっとなったけど、よく見ると僕と同い年ぐらいの男の子だった。

   彼はしばらくじっと見て、「もしかして、君が幸磨君?」と、僕に尋ねる。

   どうして僕の名前を知ってるのか分からなかったけど、とりあえず「はい」と返事をした。

   すると彼は「おぉ~やっぱり。そっかそっかぁ!」と、僕の肩を右手でパンパンと叩く。

   まるで宝くじにでも当たったかのように嬉しそうな顔をしていた。

   「あっ、俺は月冴。よろしくね」

   彼は自分の名前を名乗ると、僕に握手を求めた。

   僕は少し遠慮しながらも「よろしく」と、彼の手を握る。

   その後、タイミングよくあの人が屋敷の人を何人か連れてきて、僕達二人は屋敷の中へと入っ

  て行った。



   話を聞けば、月冴は僕の遠い親戚で、普段は屋敷の外に出ることはないらしい。

   電気とガス以外はほぼ自給自足の生活で、月冴は家事掃除洗濯その他もろもろの仕事をこなし

  ており、外出する余裕が全くないと僕にこっそりと教えてくれた。

   「幸磨君と同じ学校に進学するんだよね、俺」

   「えっ?そうなの?」

   「そっ。幸磨君一人じゃ心配だからね~。俺も一緒の中学に通って一緒の家に住むんだよ」

   「えっ、一緒に住むっ!?」

   そんな話は初耳だった。

   一緒の学校へ通うだけじゃなくて、同じ家に住むなんて…。

   だけど過保護なおじいさんが考えそうなことだと、僕は思い返した。

 

   「これからよろしくね。幸磨君」

   「あぁ…うん。よろしく」

   これが月冴君と僕の出会い。

   そして、その2か月後に僕と彼は同じ家に住み、私立希愛中学校へ入学し現在の生活を送ること

  になったんだ。

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