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異世界に来たら伝説の武器になってしまったようです  作者: 栗たろう
フェルラーン王国脱出編
10/12

10話 褐色の悪魔

忙しく間が空いてしまいました。ブクマして下さっている方、拙い文章ですが読んで下さっている方、ありがとうございます。




―――――――――――――――





ベルーカ L v30


【性別】女性


【種族】人間


職業(ジョブ)】メイド


【属性】風属性


【状態】良好


HP:50/50

MP:20/20


物理攻撃力:20

物理防御力:30

魔法攻撃力:50

魔法防御力:50

素早さ:40

運:30


【スキル】

ハウスキーパー Lv10

風魔法 Lv1



【装備】なし



―――――――――――――――











…ベルーカはレベル30。レベル60のシアンさんとは二倍も差があり、それに比例してステータス値も大きく劣っている。


しかもシアンさんが勇者の魔法剣を装備しているのに対して、ベルーカは素手だ。魔法で戦うにしても、丸腰は不利すぎる。


「ベルーカ殿。見たところ貴女は丸腰のようだ。丸腰の女性に刃を向けることは騎士の信条に反しますが、邪魔する者は容赦するなとのご命令です。王女殿下からの命は絶対ですので…。」


魅了の効果で騎士精神より王女命になってるシアンさんは相手が女性でも容赦ない様子。


「ええ、お気遣いなく。」


ベルーカは微笑みを崩さないままだ。

もしかしたら、何か考えがある…?


「ふぅ…仕方ありませんね。では、こちらからいかせてもらいます、よ!」


言うが早いか、先に仕掛けたのはシアンさんだった。

素早く剣を抜き強く地面を踏んだかと思ったら、次の瞬間にはベルーカの目前まで剣先が迫る。


「ベルーカ!危ない!」


思わず叫ぶと、ベルーカは大丈夫、というように私に目伏せをする。そして、一歩下がって剣先を軽やかにかわした。


シアンさんはそれを読んでいたかのように足払いを繰り出していた。それもベルーカは跳躍で難なくかわす。


何。何かすごくないですかベルーカさん。普通に騎士と渡り合えてる。ただのメイドの動きじゃない。忍者か。


しかし、シアンさんは更に追撃する。


「土の精霊よ、(つぶて)になりて敵を打て。石の礫(ストーンショット)


シアンさんが詠唱を終えると、虚空から手のひらほどの石が10ほど現れ、まっすぐにベルーカに襲いかかる。


ベルーカは上手く体を逸らしてかわすが、避けきれなかった1つが左腕に当たり、ゴッ、と鈍い音がした。


「ベルーカ!!」


左腕を庇うように右手を添えるベルーカは涼しい顔をしてるけど、あんなでかい石が当たって痛くないわけがない。


「そちらの腕は、もう使えないですね。可哀想に…。このままここで見たことを忘れるというのであれば、特別に見逃してあげますよ。王女殿下は寛大なお方ですから。」


シアンさんの言葉には答えず、ベルーカは右手の袖から針のようなものを投げた。隠し針!?


「…それが答えというわけですね。

土の精霊よ、(つぶて)になりて敵を打て。石の礫(ストーンショット)


シアンさんは針を剣で弾く。そしてすかさず詠唱。


ゴッ


「…つ、」


またもや1つ、今度は右足に被弾し少し辛そうに顔を歪めるベルーカ。


シアンさんの土魔法によって傷ついたベルーカのステータスを確認しようと、勇者のメガネに意識を向ける。








―――――――――――――――





ベルーカ L v30


【性別】女性


【種族】人間


職業(ジョブ)】メイド


【属性】風属性


【状態】良好


HP:50/50

MP:20/20


物理攻撃力:20

物理防御力:30

魔法攻撃力:50

魔法防御力:50

素早さ:40

運:30


【スキル】

ハウスキーパー Lv10

風魔法 Lv1



【装備】なし



―――――――――――――――








あれ?HP(ヒットポイント)が減ってない…?

状態も良好のまま。…どういうことだろう。


私の疑問を他所に、ベルーカは少しずつ、シアンさんによって私の鳥かごの方まで追い詰められていく。


そしてついにその背中が鳥かごに触れる距離まで来ていた。


「もう逃げられませんね。さて、どうします?」


シアンさんはにこやかに問う。


ベルーカは追い詰められているが、シアンさんはまだ、伝説の武器にも手をつけていない状態だ。


私は鳥かごの隙間からベルーカの背中に手を伸ばして触れた。その背中は、思いの外ひんやりとしている。


「ベルーカ…」


「大丈夫です。サキ様は私がお守り致しますから。」


背中に触れた手を、こちらに向き直ってぎゅっと握ってくれるベルーカ。

こんな状況だけど、ときめきが止まりません…。


「…いつまでもこの姿のままでは、部が悪いようですね。」


ベルーカは、誰に言うでもなく一人、呟く。


「何をしようと、無駄ですよ。貴女はここでおしまいです。」


そしてこちらに再び向き直って、微笑んで言った。







「サキ様、私がどんな姿になっても、私は貴女の味方です。どうかお忘れなきよう。」













言うが早いか…

ベルーカの体がどろりと、黒く塗りつぶされるように、とろけていく。












そして、とろけた黒いドロドロが、再び人の形に形成されていく。











そして、徐々に膜のように張っていた黒いドロドロが流れていき…












私が目にしたのは、美しい、褐色の悪魔だった。


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