第8話
本文に出てくる播州手柄山氏繁ですが、播州住手柄山氏繁と書いてあるネット情報もあり、どちらが正確なのか、私としては悩ましい所です。
私個人の書き易さ優先で、播州手柄山氏繁と表記しています。
それは間違っている、間違った表記は断じて許されない、と思われて感想欄で厳しいご指摘が多々ありそうですが、豆腐メンタルの作者なもので、お手柔らかにお願いします。
一方、その頃、天津では。
(とナレーションが流れた)
「本当に新選組の誠の旗がここに掲げられているとは。近藤勇さんや君の父上が見たら、どう思うだろう」
三船敏郎が演じる岸三郎少佐が、土方勇志大尉に話しかけていた。
2人の傍には、誠の旗がはためいている。
その傍にいる海兵隊の将兵の幾人かも、新選組関係者の子弟らしく、涙を浮かべて旗を眺めていた。
「きっと感無量の余り、何も言えず、涙を零していますよ」
土方大尉が、そう言った後で続けた。
「この和泉守兼定に誓って、北京にこの旗を掲げ、柴五郎中佐らを救わねば」
「そうだな。土方の言う通りだ。永倉新八さんから預かった播州手柄山氏繁に、私も誓わねば」
岸少佐も言った。
岸少佐は、永倉新八から愛刀、播州手柄山氏繁を預かっていた。
わしが行けない代わりに、刀を新選組の誠の旗の傍で戦わせてくれ、と永倉新八に頼まれたのだ。
岸少佐は、島田魁の甥である。
伯父からも永倉さんの想いを受け取って、その刀を振るって欲しい、と頼まれたことから、岸少佐は播州手柄山氏繁を帯刀していた。
(とナレーションが流れた)
凄い、新選組関係者の愛刀が続々と出てくる。
土方千恵子は、そう素直に思わざるを得なかった。
虎徹に加え、播州手柄山氏繁まで出てくるとは思わなかった。
「それにしても、早く北京に向かいたいものだが。今日も会議は進まないのか」
「そのようです。海兵師団の編制は完結しました。いつでも北京に向かい、柴五郎中佐達を救えるのに」
岸少佐と土方大尉が画面上で会話した後、更に画面は変わり、会議の場になった。
「一刻も早く、北京に向かいましょう。日本の海兵師団は編制を完結し、いつでも北京へ向かう態勢が整っています」
北白川宮能久親王殿下が画面上で力説していた。
その横では、林忠崇が力強く肯いている。
「しかし、北京の状況が分からない。北京にいる外交団は既に全滅している公算が高い。何しろ清国政府までも敵に回っているのだ。北京にいる護衛兵に大砲はほとんどない。砲撃戦になれば、数時間で全滅させられてしまう」
露軍の将軍が消極的な意見を述べた。
その横の独軍の将軍も肯きながら、露に半ば味方するような意見を吐いた。
「北京救援に我々が迅速に向かえば、仮に外交団等が生存していても、人質としての価値が無くなったとして、清国軍から砲撃等が浴びせられてしまい、却って外交団の生命を危うくするのではないか」
「何を言うのだ。一刻も早く、北京救援に向かうべきだ。日本海兵隊が駆けつけて師団編制を完結しているのだ。兵力は充分に集っている」
英軍の将軍が叫んだ。
「そうだ。日本の海兵隊は、仏陸軍の誇るべき愛弟子。彼らが来てくれている以上、北京救援作戦に不安はない。一刻も早く、北京救援作戦を発動すべきだ」
仏軍の将軍も、日英に味方する発言を吐いた。
だが、露と独の将軍は、日英仏の意見にあくまでも反対の意見を主張する。
この時、天津に集っていた北京救援軍は、9か国の軍隊から成っていた。
日本、露、英、仏、独、米、墺、伊、韓の9か国である。
だが、各国の思惑はバラバラであり、会議は開かれるものの、前へ進まなかったのだ。
(とナレーションが流れた)
と、会議の場に、日本海兵隊の士官が飛び込んできて発言する。
「北京から脱出してきた、という男が日本海兵隊を訪ねてきています」
「何。北京の最新の正確な情勢が分かるのではないか。会議を休憩してほしい。その男と直接に我々が面談した上で北京の状況を報告したい」
北白川宮能久親王殿下と林提督は、一旦、会議の休憩を求め、各国の将軍達もその主張を認めた。
そして、北白川宮能久親王殿下と林提督は、その男の下へ向かった。
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