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第4話

 そんなことを千恵子が考えている内に、画面は更に変わっていた。


 新選組の誠の旗、それがこの義和団事件の際に掲げられて、佐世保鎮守府海兵隊が北京に向かうという情報が新聞で流れたことから、かつての新選組関係者を中心に多くの人間が佐世保に集ったのだ。

 だが、ある意味、歳月が余りにも流れ過ぎていた。


「戊辰戦争から30年余り、西南戦争からでも20年以上」

 それ以上は言葉を発せずに、島田魁は新選組の誠の旗を見つめた瞬間に絶句してしまった。

「かつての京の都で、近藤さんや土方さんや沖田や原田等々の面々と歩いた時に、日本以外の場所、清国において新選組の誠の旗が掲げられると誰も考えなかった」

 永倉新八も涙を流して言葉に詰まる有様だった。


 他にも新選組関係者が集っている。

 だが、そのほとんどが新選組関係者の子弟で、実際に新選組に所属していたといえるのは、斎藤一、永倉新八、島田魁の3人程しかいない有様になっていた。

(とナレーションが流れた。)


「これを斎藤に託そうと思って持参したのだが」

 島田魁が困ったように、斎藤一に語り掛けた。

「何を持参されたのです」

 斎藤一の問いかけに、島田は一振りの刀を無言のまま渡した。

 斎藤一は、その刀を抜いて銘を見て、一言言っただけで絶句した。

「これは虎徹」


「そうだ。近藤勇さんの婿養子、近藤久太郎さんから託された刀だ。近藤久太郎さんの話によると、近藤勇さんの遺愛の愛刀とのことだ。ただな」

 島田魁は言葉を詰まらせた後で続けた。

「永倉さんとも話し合ったのだが、近藤勇さんが持っていた虎徹とは違う気がしてならない。勿論、長い歳月の間に記憶が違っている可能性もある。それに近藤久太郎さんも、近藤勇さんから直接に受け取った訳ではない。近藤勇さんが処刑された後に処刑場で近藤勇さんの遺体と共に渡されたそうだ」


 島田魁は、それ以上は言わなかったが、斎藤一は言外の意味が分かった。

 実際、自分も銘を見て、虎徹と即断してしまったが、虎徹は偽物が多いことで著名であるし、島田魁や永倉新八が言うように、近藤勇さんが実際に持っていた虎徹か、と尋ねられると違和感がある。

 正直に言うと、近藤勇さんが処刑の際にすり替えられたのではないか、と疑惑を覚えてならない。

 だが、近藤久太郎さんがそういう以上、自分達にも否定できない。


 そう斎藤一が考えているのを、画面上の斎藤一の表情から土方千恵子は察した。

 上手いなあ、それが土方千恵子の率直な感想だった。

 近藤勇が実際に愛用した虎徹は行方不明の筈だ。

 それを踏まえて、真偽不明の虎徹の話に映画ではすり替えているのだ。


「ほう、虎徹か。わしが預かって、戦場で振るってはダメか」

 斎藤一達の会話の場に、いきなり声が掛かり、林忠崇が画面上に現れた。

「虎徹は多くの大名が愛用した名刀だ。わしが預かって、北京へと持っていこう」

「そうしていただけるなら幸いです」

 島田魁は言い、他の面々も肯いた。

「それでは、わしが預かる」

 嬉々として、林忠崇は虎徹を預かった。


 林忠崇(侯爵)は、この時に佐世保鎮守府海兵隊と共に、天津へ更に北京へと向かったので、あり得ない光景かというとそんなことはないのだが。

 そして、林忠崇自身は幕末の新選組と縁が無いが、西南戦争においては土方歳三の右腕として、新選組の後身ともいえる抜刀隊隊長として奮戦した存在でもある。

 だから、近藤勇遺愛の虎徹を預かってもおかしくはない。


 そんなことを画面上の光景から土方千恵子は考え、更に想いを巡らせた。

 それにしても、現在も土方家の家宝となっている土方歳三遺愛の和泉守兼定を始めとし、様々な新選組の名刀が出てくるものだ。

 名刀以外の新選組の話も色々と出てきそうだ。

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