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プロローグ

 史実ベースの映画ということで、「サムライー日本海兵隊史」(第1部)等、他の作品と異なる描写が多発しますが、映画上の描写ということでお願いします。

(どう違うのか、間違い探しをしてもいいかも。

 所々で、語り手、千恵子がツッコミ役をしています。)

 それから、感想欄で指摘されたので書きますが、この小説の舞台は1940年代末です。

 従って、この世界では、第二次世界大戦が終結し、台湾が台湾民主国として独立した前後になります。

 土方千恵子は、その日、映画を見に出かけていた。

 色々と気になる映画ではあったが、自分とは繋がりがあり過ぎて、どうにも踏ん切りが付かず、悩んでしまう内に、上映期間が終わる寸前になっていたのだ。

 だが、夫の勇や(実は異母姉だが表向きは)親友の村山幸恵に勧められたことから、ようやく行く決断をした、という次第だった。


「「北京に誠の旗を掲げてみせるー北京の50日」か」

 千恵子は、映画館で題名を見て呟いた。

 斎藤一が主人公で、義和団事件が舞台の映画だった。

 日本の海兵隊が救援部隊の主力となって、北京に籠城して義和団の攻撃を受けている避難民達を救うというのが基本的なストーリーだ。

 だが、映画化のために史実を色々と改変しており、それを口実にして、千恵子は行くのを躊躇っていた。


「本当は別の理由からなのだけど、夫や幸恵さんにも言いにくいし」

 千恵子は溜息を吐きながら、独り言を言った。

 この映画には、当然、柴五郎提督が出てくる。

 柴提督は、この義和団事件で名を挙げ、第一次世界大戦でも活躍した。


 だが、千恵子には複雑な想いをさせる存在だった。

 柴提督のお節介の為に、千恵子の両親は結婚できなかったのだ。

 柴提督に悪気はなく、千恵子がそこまで引きずることはないといえばそうなのだが。

 自分の結婚の際、両親が結婚していない庶子であるために苦労を強いられた千恵子にしてみれば、どうしても引きずらざるを得なかったのだ。


「幸恵さんは、このことをよく知らないし、夫も、全て済んだことをそこまで引きずらなくてもの一点張りだから。実際にそうなのだけどね」

 千恵子は、内心で更に呟いた。


 そうは言っても、映画自体は、「台湾で亡くなられた宮様」の事実上の続編ということもあり、名監督や名俳優が勢揃いのオールスター映画と言っても良かった。

 斎藤一は嵐寛寿郎、林忠崇は阪東妻三郎が引き続き演じている。

 北白川宮能久親王殿下は、小松宮殿下のつながりからか、長谷川一夫が演じている。

 ちなみに、柴五郎は、片岡千恵蔵が務めていた。

 監督は言うまでもなく田坂具隆である。


 幾ら「台湾で亡くなられた宮様」の事実上の続編とはいえ、よく映画会社が投資したものだ、という新聞記事が載る程だったのだ。


 そうは言っても、血縁、地縁等々のしがらみがある千恵子にしてみれば、オールスター映画だからと言って、そうそう見に行くのは躊躇われるものだった。

 幸恵が実際に見て、

「本当にいい映画だったわ。千恵子さんも気にせずに見に行くべきよ」

 と千恵子に勧めても、すぐには踏ん切りがつかず、上映期間終了間際に千恵子は見に行くことになった。


 予め予約してあった指定席に座り、千恵子は映画が始まるのを待ちながら、想いを巡らせて呟いた。

「義和団事件か」

 中国の民衆が起こした排外主義に基づく武力衝突事件の一つだ。

 

 それと共に、色々と戊辰戦争、会津とのつながりがある事件でもある。


 北京に籠城する各国の外交団や中国人のキリスト教徒等を守り抜いた守備隊の事実上の指揮官だった柴五郎(当時の階級は中佐)は、会津藩の出身で戊辰戦争時に会津鶴ヶ城に籠城した身だった。

 そして、それを知った北白川宮能久親王殿下や林忠崇達、海兵隊の幹部は何としても柴を助けねば、という想いに駆られることになったのだ。


 日本海兵隊の源流は、言うまでもなく幕府歩兵隊である。

 そして、幕府歩兵隊の多くが、戊辰戦争時には伝習隊や衝鋒隊の一員として、奥羽越列藩同盟に参加して会津藩と共に戦い、そして敗れた。

 千恵子自身が、林忠崇侯爵から、あれは悔いの残る戦いだったと直接聞いている。

 その悔いを少なからず晴らしたのが、義和団事件だった。

 千恵子は、そのことを想い起こした。

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