ご飯のち採取、そして……
「ライフ、引き上げるよ」
「わかった」
二人が空腹探知機の一回目の引き上げるをするようだ。
僕達はと言うと……
「この野菜のオイル漬け、なかなか美味いのう」
「この玉子サンドイッチもいけますよ!」
「ぐ━━━━━」
お弁当している。
僕はただ見ている。
「余裕ですね」
スレイが言った。
ハイハイ、そうかな?
とにかく、こっちはこっちね。
「スレイ、一回目だ」
「一回目?」
「二回するの! まず一回目は位置の特定、二回目は採集してこの水筒一杯にする!」
スレイがレイとライフに命令されている。
ぎこちない笑顔だ。
つまり理解が足りないみたい。
だけどある程度まではわかったようで、手伝い始める。
「なあクッキー、向こうの連中の水筒はそんなに大きくないぞ。さっきの装置だったら、一回で入らないのか」
ソニアさんが、おにぎりをパクついている。
ライスを握り堅めた食べ物で、国では結構ポピュラーな主食の一つだ。
普段はお椀に盛る。
「クッキー、説明が違う」
ソニアさんが、おにぎりをパクパクしながら睨みつける。
ハイハイ……
まあ、見ていようよ。
僕の説明より、見ればわかるから。
「いくよ! えい!」
レイが引き上げ始める。
いつの間にか、しっかり手袋をしていた。
後の二人も、それをして一気にボートに上げている。
空腹探知機を引き上げる。
記憶金属に少しの火を当てると、閉じていた穴が開きそこから深水を取り出す。
「ふむふむ」
おじいちゃんが、ビスケットを食べながら言った。
軍隊の時の携帯食らしく、今でも食べているんだって。
「ずれとる!」
ハイハイ、説明を続ける。
「レイ開けた。濃度測定紙を」
「言われなくても、わかってます」
レイが小さな紙束を、リュックから取り出した。
あれは濃度測定紙、別名はここだよ と言う。
さっき抹茶とその精霊を、空腹探知機に入れたのは知っているね。
濃度測定紙は一番お腹が空いている水、つまり綺麗な深水調べる紙なんだよ。
抹茶の精霊が、少し違った。抹茶の精霊達が多い場所を特定するんだって。
多ければ多いほど、濃度測定紙が光を放つんだ。
「抹茶の精霊達?」
「抹茶の粉末の一粒一粒に、精霊が宿っているんだよ」
「えぇ!!!」
だから一口で精霊と言ってるけど、凄い数の精霊がいることになる。
さてと……
「まずは一番上から開けるよ」
「お願い! はいランプ」
レイがランプをライフに差し出す。
ランプにはアルコールが入っている。
アルコールランプと言う。
「で、どうするんだ」
野菜サンドイッチを頬張りながら、ソニアさんが聞いた。
僕の料理もなかなかでしょ。
「うん、美味いなあ、クッキー君」
「お前ら、ずれとる!」
おじいちゃんに怒られた。
では話を進めるかな。
記憶金属を開く場合は、熱を使うんだ。
ある一定の温度になると、そこが開き始める。
そしてウサギ湖の、深水で一番綺麗な場所の特定する。
「かあかあかあ」
エナちゃんが立ち上がって、手を振ってる。
ん? あっ、護衛の船に手を振っている。
そうだ、護衛のおじさん達がいたんだった。
少し離れた場所で、僕達を見ていてくれる。
あっ、エナちゃんにみんなが手を振る。
「ぎゃ━━━━」
エナちゃんが嬉しそうだ。
いいぞ、いいぞ、みんなとのコミュニケーションをしている。
芋パンのおかわり、ご褒美にあげる。
「……エナちゃんのは、仕方ないが、説明を進めてほしいのじゃが」
ハイハイ、では続けるね。
「ここを基準に! 次よ!」
「よし!」
「前よりも、濃い! これが今度の基準!」
二人が手際よくランプを使って、金属の入れ物を開けていく。
その中に入っている深水を見ている。
一回に開けて出てくる深水の量は……あれくらい。
「おい、クッキー、思った以上に少ないぞ」
うん、少ないよ。
だって空腹探知機をウサギ湖に沈める時、中が空洞だったでしょ。
つまり空気が入っている。
空気が入っていると、さっきも言ったけど浮力が生まれる。
その浮力に負けないためには装置を重くしないといけない。
「クッキー、さっき、抹茶の精霊により良い深水を探して貰うために、薄くしていると言わなかったか?」
おじいちゃんが、言った。
うん、薄いよ。あれでも、凄く薄い。
昔はもっと厚かったんだよ。
だから深水を探す時は、もう少したくさんの人間が必要だったらしいよ。
それをなんとか二人でできるようにしたんだよ。
「……なるほどのう」
おじいちゃんが、少し不思議そうだ。
何か少し思うと、違ったようだ。
「まあ、いいわい」
そう言いながら、オイル漬けの玉ねぎを食べている。
オイルにしっかり漬かっているから、辛みは抜けている。
だから甘いでしょ。
「美味い美味い」
おじいちゃんの目が細くなる。
エヘヘヘ……僕はお料理上手だあ。
「あっち、かなり余裕綽々だな」
スレイが見ている。
まあ今の彼は、何事も見ているだけだ。
「スレイ、あっちはあっちだ」
「ライフ、ここの濃度測定紙が一番光を放ってるわ」
「本当だ、五つ目のこれ、ウサギ湖の真ん中くらいの深さのだ」
どうやら、場所の特定をしたようだ。
「なあクッキー、あいつらの器具だけど、二回目も同じことをするのか?」
ソニアさんがエナちゃんの芋パンを食べながら聞いてきた。
どうやらエナちゃんに進められたようだ。
偉いぞエナちゃん、コミュニケーションは大切です。
「きゃ━━━━━━━」
ご機嫌だねえ。
……あれ? なんか忘れてるような。
「私の質問、もう一度言うよ。あの器具は二回目も同じことをするのか?」
ソニアさんが睨みつけるよ。
怒らないで!
さて、二回目は使い方が変わる。
まず特定した場所の支弁を外す作業から入るんだよ。
「支弁? なんだそりゃ」
扉だと思えばいいよ。
抹茶の精霊が入る金属とホースの間に、今言った支弁があるんだ。これはホース内に深水を漏らさないための大切な装置でここでも記憶金属が使われている。
ここでの覚えましたは、深水が入ると同時に金属が出入り口を塞いでしまうんだ。
「塞ぐ?」
そうだよ。
塞がないとホース内に深水が入り込んで、深水が混ざってしまうからね。
そのための支弁なんだけど、次は支弁が不要になる。
「何故だ?」
それはレイやライフを見ていようよ。
それよりも、まずは僕らだよ。
「い━━━━━━』
さてエナちゃんが、動き始める素振りがあるよ。
さっ、エナちゃん手袋だよ。
「いや━━━━━━』
だめ! エナちゃんは手袋をします!
エミリア先生に怒られますよ。
「い━━━━━━━━━━━━━」
よし、偉い偉い!
さすがはエナちゃんです。
ヤレヤレ……
さて、エナちゃんがロープを引っ張り上げるよ。
「んいんいんい」
ロープをウサギ湖から引き上げると、ロープが縮んでいく。
なんだか異様に縮む。
「なんだか凄いな」
そう言いながら、ソニアさんがおにぎりを食べると手を合わす。
ごちそうさまをしてお弁当を片づけると、エナちゃんの近くに寄り添った。
エナちゃんはロープ引き上げ続けて……あれ? またウサギ湖に沈めていく。
「何をしているんじゃ」
おじいちゃんがビスケットを食べ終わり、手をパッパと叩くとエナちゃんに近づいた。
おそらくたけど、エナちゃんが深水の位置を探しているのでは? そう思う。
「え? まさか、感覚でか?」
うん、エナちゃんならやりかねないよ。
おそらく……これは僕の予想だけど、ホースの先についた金属にいる抹茶の精霊が深水を探してエナちゃんに伝えているんだと思うんだ。
「え!」
うん、ソニアさん普通なら驚くよね。
だけどエナちゃんなら……
「と、言うことは?」
たぶん……。
エナちゃんの記憶金属は、以心伝心型かも知れない。
「なんだ? 以心伝……」
「え! 以心伝心型!!!」
レイとライフが言葉を拾った。
そして大声出して、驚いている。
ソニアさん説明するよ。
おそらくエナちゃんの記憶金属は、時間で閉じるタイプではないんだよ。詰め物もなく、はじめから閉まっている。
「はじめから、閉まっている? じゃあ、いつ開くんだ」
それはエナちゃんの指示で開く。
つまりエナちゃんが、指示を出すんだけど……心で記憶金属とお話をして開けて貰うんだよ。
「は? 心? こころ……ええぇ!」
ソニアさん、驚きすぎたよ。
エナちゃんに少し失礼かも。
気持ちはわかるけどさ。
「ま━━━━━━いっいっいっ……だだだだあ」
エナちゃんに動きがあった。
おそらく記憶金属を開いたみたい。
「すごい……彼は間違いなく……」
「ライフ、しっかりして! 私達は私達よ!」
レイがライフに、渇を入れる。
「確かに、やることはやる! 純度の高い場所の金属に詰め物をして後はおぼえましたが塞がるのを待つ。採集に入ろう」
ライフが言い聞かせるように言った。
おそらく、エナちゃんに何かを感じたようだ。
感じはじめてはいるけど今は作業をする。
空腹探知機を再びウサギ湖に入れた。
採集のためだ。
「説明してくれるかの」
うんおじいちゃん、エナちゃんにまだ新しい動きがないからね。
穴を塞いで、支弁を抜いた空腹探知機の中に深水を満たしていくんだよ。
まず空腹探知機をウサギ湖のさっきと同じ場所に沈めていく。そのとき濃度測定紙が、一番光った部分の金属に、詰め物をする。
ウサギ湖に沈めてしばらくすると、詰め物が溶けて穴が開き深水が入ってくる。
「ふむふむ、なるほどのう。他は支弁で穴が塞がれて深水がホースに満たされていく。空気穴はホースの空洞と深水の中で開いた二つがあり、スムーズに深水を採集できる訳じゃな」
うん、当たりだよ。
そうやれば、水筒にいっぱいの深水が採集できるんだ。
「い━━━━━━━━━━━」
次はエナちゃんが動くよ。
「そ━━━━━━━━」
おや? なんだろう? ソニアさんを見ている。
エナちゃんがチャックに手を伸ばす。
チャックを開いて、何かを探している。
「な、何かな、エナちゃん」
ソニアさんが少しオドオドしながら、エナちゃんに声をかける。
すると、エナちゃんがいくつかの道具を取り出した。
まずは凄く大きな水筒だ。
あっちのより大きいかな。
それから漏斗、蛇口、水槽二つ、絵カードだ。
まずは水槽を置き、次に蛇口が宙に浮く。
「なんだあれ?」
スレイが興味深々に見ている。
レイとライフもいっしょに見ている。
「水を出す蛇口だね」
「それはわかる」
ライフとスレイが言う。
レイは静かに睨んでいる。
エナちゃんがソニアさんを見て、絵カードを渡す。
その絵カードには、背伸びした人が書いてある。
そしてホースを見せる。
どうやらホースを持って、バンザイをしてほしいみたい。
「バンザイね。わかったよ」
足元を気をつけてね。
ソニアさんがホースを持ってバンザイする。すると僕の視界にグリンが飛んでいるのが見える。
まだいる。
何でだろう。
まあいいや、今はエナちゃんだ。
ソニアさんの持っているホースに、エナちゃんが近づくと漏斗を差し込む。
すると蛇口を漏斗の近くまで持ってきて、そこで固定させると取っ手をひねり水をホースにゆっくり入れていく。
「……水が出てる」
ライフが不思議な顔をしている。
「水だけじゃないわ。なんなのよ! どうして空中に浮いてる蛇口から水が出るのよ!!!」
レイが何故か怒っている。
半狂乱とも言う。
「おい、クッキー、何で水が出るんじゃ?」
おじいちゃんもびっくりしている。
何だか、僕以外はみんなびっくりしている。
みんなエナちゃんだよ。
エナちゃんに不可能はないの!
でも理屈を聞きたい?
みんな聞きたい?
「当たり前じゃ!」
「どうなってるんだ?」
それはね……。
まず、浮いてる理由はわからない。
理屈はエオリア先生に、聞いたけど訳わからなかった。
座標がどうか? とか言っとけど。
「……なるほど、じゃあ水が出るのはわかるんだ」
ソニアさんがバンザイしながら、言っている。
コレはわかる!
湿気をキレイにして、水にするんだ。
湿度の高い場所では、たくさんの水が出るんだ。
「湿気! なるほど」
ライフが頷いている。
レイは悔しい顔をしていた。
二人は意味がわかったようだ。
空気中には実は水が存在している。
だけど目には見えないんだ。
目には見えないけど、人間は感じることはできるらしい。
何回も言うけど、僕は綿モンたからわからないんたけど……。
ジメジメする。
そんな言葉を使ったことない?
つまり空気に溶け込んだ水を、人間は感じる。
実はこの蛇口は空気中に溶け込んだ水を、瞬間に冷やす錬金術を持っている。
瞬時に冷やすと、水が出てくるんだ。
ただし冷やしすぎは凍っちゃてしまうから、調整が難しいらしい。ちなみに蛇口の中には窒素いう精霊と、二酸化炭素と言う精霊が居るんだって。
「なるほど、わかったような。わからないよいな。とにかく水が出るのは仕掛けがあって錬金術でどうにかなるんだ」
バンザイしながら、ソニアさんはソニアさんなりの理解をした。
おじいちゃんは、少し頭を捻っている。
あちらを見れば、スレイも変な顔だ。
だけどレイとライフは、興味津々みたい。
「なるほど、すごい!」
「すごいけど、感心している場合ではないわ。そろそろ深水を引き上げましょう」
レイが促している。
どうやら、深水を満たしたようだ。
ところでエナちゃんは、バンザイしているソニアさんのホースに水を流し込むと、ホースを伸ばし出した。
エナちゃんのホースは、どうやら伸び縮みがすごい。
伸ばしたホースに水を入れ続けると、水がホースに一杯またった。
水が溢れる。
するとエナちゃんかわホースから漏斗を抜き、蛇口をホースに直接押しつけた。
なんだか蓋をしたみたい。
そして下にホースを向ける。
すると……勢いよく水が出だした。
あっ! なるほどね。
「何がなるほどなんじゃ?」
おじいちゃんが言った。
「なんだか向こう、水が出ているぞ!」
スレイの声が聞こえてきた。
かなり驚いている。
レイとライフは深水採取中だけど、ほんの少しだけ振り向いた。
「あれは!」
「あの原理だね。水は高い場所から低い場所に流れる」
「なるほどね。だけどヘンテコは、深水の純度を調査していないわ。あれがキレイかはわからない」
二人の会話を拾う。
やっぱりあの原理だ。
レイも言ってたけどさ。
水は高い場所から低い場所に流れる性質がある。
えっ? それはみんな同じだ。
まあまあ、聞いてね。
ホースの中を気密する。
空気をいっさい入れないで、高い所に水を置き低い場所に水を流す原理、それをエナちゃんは使っているんだ。
これはみんなも結構使っているから……。
「理屈はわからんが、どうやらエナちゃんも深水採取に入ったんじゃな」
そうだよ。
エナちゃんはエナちゃんなりに、やっている。
緑色の深水……いや、おそらく水道水が水槽に貯まる。
あと少しで、並々になる所手前、もう一つの水槽に替える。ここからが深水みたいだ。
「なるほど」
「スレイ、あっちはあっちだよ」
「お喋りはダメ! 早くしてよ!」
三人の会話が聞こえてくる。
向こうも頑張っている。
水槽にたくさんの深水が貯まる。
するとエナちゃんが、ソニアさんに頭を下げる。
ありがとう を、した。
えらいぞ! エナちゃん。
ソニアさんここまでみたいだよ。
エナちゃん、もういいって。
「そうか、わかった」
ソニアさんがバンザイを止める。
そしてボートに座り、体をほぐしている。
「レイ、すべて終わった。さて、上がろう」
ライフが言った。
あっちも終わったようだ。
さてと帰ろうかな。
ぴー! ぴー! ぴー!
うん? グリンの鳴き声がする。
甲高い声に、みんなが上を向く。
「なんなんだ?」
ソニアさんが不思議な顔をしている。
何があるをだろう。
僕がそう思った矢先、両足から吸盤をした光が現れた。
「クッキー、なんなんだ? これ?」
ソニアさんが笑いながら言った。
ああ、これね。
これはね、僕は体重が軽いから風で飛ばされないように、足から吸盤をした光を放って地面に固定されるんだよ。因みに宙に浮いてる時は地面に鎖の光が伸びるんだ。
「つまり、クッキー、風がくるんじゃな」
そう、風……まさか!
みんながアルムルクを見る。
すると灰色の雲が、山の頂上にかかっていた。
これは!
「すぐに、陸に戻ろう」
ソニアさんが言った。
護衛船もアルムルクの悪戯に気づいたようで、僕達のボートの後ろにまわる。
アルムルクの悪戯はいずれ吹くけど、まさか今なんて。
アルムルク山から、地響きにも似た凄まじい音がする。
春の目覚まし そう言われてるけど、今の僕達にはお腹を空かした怪獣の腹音に聞こえてしまう。
悪戯は激しく吹く。
ガラリの街でもすごいけど、ここはガラリの通過点であり勢いも街よりあるだろうから、ここで悪戯を受けたら……とにかく陸を目指そう。
サイフォン……それです。