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ハコニハ  作者: 緑猫 龍
第一章
8/8

第七話 ゲロゲロPT 緑猫回

リアルって、辛いよね。

 深夜、フロッガのとある宿の一室にて──


「ねぇ、あなた。……クエリは……楽しんでいるかしら。あの子は昔から引きこもりがちだから……少し、ほんの少しばかり心配なのだけれど……」

「そうだね。けれども君が心配する必要はない。あいつのことは私が背負っていればいい」

「ッ……でも!」

「でもじゃない。あいつが行くと決め、それに我々は『封印を解く』という助け舟を出し、その舟にあいつは乗ったのだ。自分でも自身の力のことは分かっているだろう。その上で、自分が創った夢の世界を壊さないように、創った意味を再確認するために、ちょっと出掛けただけだ。もう一度言う。君が心配をする必要はない。良いな? ……話は終わりだ」


 窓から夜空を眺める男性は話をさっさと終わらせると、シャワールームに入ってしまった。服を着たまま行ってしまったが、ルームの中には脱ぎ捨て場があるので問題ない。だがしばらくは出てこなさそうだ。


 取り残された女性は、用意されていたネグリジェを着てベッドに入る。

 そして密かに、我が娘の事を想う。


「クエリ……無事でいて……」


   ~~~~~~~~


 フロッガの祭り・大食い会場にて──


「……おかわりッ!」

「おおっ! 黒崎選手、これで三千キロカロリー突破だぁ~!!! 彼女の胃袋は留まることを知らないのかァ~!?」


 フロッガ大食い対決。

 それは、最強の大食いたちがプライドと意地を賭けて食いまくり合う、この街の名物!

 世界中から、食べることに関しての猛者たちが集まり、食べて食べて食べまくる!

 苦手な食べ物が多い奴でも安心しろ!

 好きなものを食べまくり、その合計カロリーで勝敗を決するから、どんな奴でも大丈夫だ!

 さぁ、君もこの闘いに挑戦しよう!

 ※賞金、金貨百枚。


 ──と言うのがこの大会の売り文句である。

 噴水のある広場で休憩するために向かったのが最後、そこで大々的に行われていたのは大食い対決。休憩なんて出来たもんじゃない。


 そしてそれに二人が反応してしまった。


 よく食うよく寝るよく育つ……筈だった、か弱い乙女? の黒崎シオン。

 ボンキュッボンの童顔女の子、天神姫のクエリ。


 どちらも好奇心旺盛なため、

「あ! 大食いやってるー! 行こ行こ!」

「大食い……面白そう……!」


 みたいな感じの軽いノリで参加しようとしたのだ。


「え、ちょっと待って。参加費が銀貨一枚──」

「さぁ! いざ決戦の地へ!」

「おー……」

「ちょ、もうそんなお金無い──」

「すみませんおじさん! 三人分、参加する!」

「お? そんな華奢な体で参加するのかい? ……いいだろう! 参加費はあるかい?」

「え? 参加費? 参加費があるの?」

「そうだぜお嬢ちゃん。そこの看板、よく見てみな。銀貨一枚って書いてあるだろ?」

「……ホントだ、シオン……。もう私達、お金、無いかも……」

「な? だからさっきから言おうとしてたけど、もう俺の金は尽きた。シオンの自腹になるけどいいのか?」


 これで諦めた、と思った。

 俺も『ヨッシャ勝ち確!』と思った、が……。


「──ハッ……! おじさん! あの銅像を見て!」

「ん? ありゃあクエリ様の銅像じゃねぇか。それがどうした……って! えっ!?」

「おいシオン……まさか……」

「この子を見て! そしてあの銅像と見比べて!」

「……ま、まさか、貴女様は……」


 受付が、シオンの突き出したクエリとクエリの銅像を、何度も交互に見る。


「く、く、クエリ様ぁ!?」

「フフッ、ようやく気づいたようね……。どう!? 神が参加しようって言うのよ? お金なんか取る気なの? まさかねぇ~? そんなことしたら、協会の方がどんな顔して走ってくるか……分かってるよね?」


 悪魔だ。悪魔がいる。


「……いや! 俺は騙されねぇぞ! 見た目が似てるだけで本当は別人だろ!? そうだ、そうに違いねぇ!」

「あら、そんなこと言って……。もしここにいる子が本物のクエリ様だとしたら、貴方どうなるかしらねぇ!? クエリ様を除け者にした罪……重罪よ?」


 ゲスい、ゲスすぎる。


「……仕方ねぇ。そこまで言うなら信じるしかねぇな。クエリ様と嬢ちゃんと……もう一人は?」

「いや、俺は参加しな──」

「アイツ」

「よし、お前だな。……さぁ行ってこい! お前らなら勝てる! オーラだけで分かるぜ!」

「勿論、優勝してくるに決まってるじゃん!」

「おー……」

「なんで俺まで……」


 ──今に至る。結局のところ、無料。


「オエッ……」

「クエリ! 耐えろ、今ここで出せば、ゲロインの称号が付いちゃうぞ!」

「た、耐える……!」


 クエリと俺は少し食べてギブアップ。

 シオンはと言うと……。


「おかわりぃ!!!」

「黒崎選手、三千五百キロカロリー突破! 凄い、凄すぎる! そして! ここで食材が尽きたァ~!!! 圧倒的差で黒崎、黒崎シオン選手のォ……」


 会場が静まり返り……


「優ゥ勝ぉ~!!!」


 沸いた。


「ウオオオオオスゲェェェェェェ!!!」

「シオンちゃぁぁぁぁぁぁんサイコオオオオオ!!!」

「可愛いぞぉ! シオオオオオオン!」

「シオン愛してるゥゥゥゥゥゥ!!!」


 大喝采を受けたシオンは、優雅に舞台を降りる。


「あれ? 賞金は受け取らないのか?」

「え? そんなのあったの?」

「見てなかったのか」

「見てないけど……あったっけ?」


 こ、コイツ……。


 と、その時受付のおじさんがジャラジャラと音のする袋を持ってきた。

「あるよ! ほれ、受けとれ。金貨百枚!」

「え!? ひゃ、ひゃく……?」

「おうよ! お前が優勝者だ! おめでとう!」


 シオンが本当に目を点にしてる!

 め、珍しい……。


「……ナク」


 プルプルとシオンが震え始める。


「? どうした?」

「これ、ナクにあげる」

「は!?」

「良いじゃん。私のお金だから、どう使っても文句ないよね?」

「だ、だけど……──」

「ハイッ」


 シオンは俺に向かって、金貨の入った袋を放り投げてくる。


「それでクエリに色々買ってやりなよ。私はいいからさ、ね?」

「…………」


 どこまでも分からないな、シオンは。

 何を考えて行動してるのか、全く予想がつかない。


「さ、帰ろ! ナク! クエリ!」

「あ、ああ……」

「き、気持ち悪い……略して、キモい……」


 祭りが終わる。

 女の闘いは無かったことになった。


 そしてふと思う。


 ……クエリはいつまでここに居られるのだろうか?


   ~~~~~~~~

   オマケ


「オエッ……」

「もう腹ん中何もない?」

「な、ない……」

「じゃあこれで口とその周り拭いて。あと蛇口の水で口ゆすぎな。気持ち悪いだろうし」

「げ、ゲロゲロパーティー……」

「言わなくていいから」


 ※クエリは無事にゲロインになりました。

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