第四話 天神姫クエリ 緑龍回
彼女の見た目は、腰まである水色の長髪を白のシュシュで束ねて肩から下ろしており、紺のノースリーブから、純白の新雪を感じさせる白く美しい肌をさらしていた。その容姿は、誰が見てもボーッと見つめ続けてしまうと言っても過言ではないであろう、妖艶な雰囲気を醸し出しているにも拘らず、可愛らしい童顔を兼ね備え、『完璧』の一言に尽きた。しかし、やはり神なのか……その、体がボンキュッボンなのだが……。別の女性が見たら絶対妬み殺すくらいのモノなのだが。いや、それ以上か……?
そんなクエリの来襲により、家が一瞬でカオスと化した。
本人にはその気はなくても、シオンがその妖艶なオーラと可愛らしい童顔を見せつけられ、だんだんと湧いてきた性的欲求が収まらず、我慢するのにだいぶ苦労した。だいぶ治まった後に“やはり”と言うべきか、いきなりシオンが「もう無理」と呟やき鼻血を出してぶっ倒れた。
母さんは母さんで、料理をした後に「ちょっと外の空気吸ってくるわね!」と言い残し、玄関を飛び出して「ウゥオオオオオオキタァァァァァァクエリ様キタァァァァァァ」と大声で叫びながら走っていった。アレのせいで、ウチの評判はかなり下がっただろう。実に悲しい。
とりあえずシオンを起こして、ベッドに寝かせる。彼女の私服は鼻からの血でベットリと染まっていた。後で母さんにでも着替えさせてもらおう。ていうかこれ、致死量なんじゃ……。
そして本題。クエリと名乗るこの女性、本当にクエリ様なのか? だとしたら何故ここに来た? 親のことは? スリーサイズは? と、色々聞きたいことがある。
「お前、さっきの言葉は本当なのか? 自分はクエリ様だ、とかいう……」
「それは本当……。私はクエリ……。世間一般では……『天神姫』……って呼ばれてる……」
後で聞くと、『天神姫』はこの世界ではなく、クエリ様の住んでいる神界で呼ばれている別称らしい。
「そうか……。じゃ、なんでここに?」
「この家から……私と同じ『引きこもりのオーラ』を感じた……」
「グフッ」
思わず心の中で吐血。精神的にダメージを与えてくるぞこの神……。
「でも本当は……貴方に会いに来た……私を救ってほしい……」
「……どういうことだ? クエリ様が引きこもりなのはともかく、救ってほしいって?」
「……クッ、私は引きこもりじゃない……」
「……ついさっき自分で言ったよね?」
「……オーラだからセーフっ」
「……すいませんでした」
質問をスルーされた上に、殺気を乗せた言葉を喰らい、つい敬語になってしまう。
「……もう一回聞くけど、救ってほしいってどういうこと?」
「それは……えっと……その……」
クエリ様が口をモゴモゴさせるように黙ってしまう。あっちから振ってきたのに……。
そしてどんどんと時間は過ぎていき夜になった……が、クエリは救ってほしい理由を話してくれなかった。明日になったら話す……、とのことで、今日はとりあえず休み、明日事情を聞き出して、最終日に三人で祭りを回ろう、という感じで収まった。
因みにクエリはシオンの家に泊まらせてもらっている。俺の家に泊めるのに、シオンが断固反対したからだ。まぁ、妥当だろう。朝のアレを思い返すと……いや、これ以上は止めておこう。なにが言いたいかというとマイサンが起ち上がっ……いや、これ以上も止めておこう。
俺がクエリを呼び捨てにしているのは彼女本人の希望である。
「……どうして、様呼びなの?」
「え、そりゃあ一応この世界とか俺たち人々とか創ってくれた訳だし……ねぇ?」
「勿論よ! クエリ様と崇めるのが当然でしょう!」
「……クエリがいい(涙目)」
「ッッッ!?!?!?」
「……え?」
「……ダメ?」
「呼ばせていただきます、Sir!!!!!!」
「し、シオン……お前、まさか……」
「クエリー! スリスリしていい!? さわさわしていい!? あ! クンカクンカしてもいい!?」
「こら、シオン……。いくら呼び捨てオーケーだからって、それは流石に──」
「いいよ……」
「……ゑ?」
この後、シオンが再度ぶっ倒れたのは言うまでもない。




